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枯れてますが、何か?2

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⌘  多岐川瑛二視点 ⌘

朱莉あかりがいるって分かっているのに、他に好きな人が出来た」

高2から3年間、付き合っていた彼女に別れを切り出した。

もちろん本心じゃない。

出来れば結婚も朱莉としたい…だけど若い俺達は親の金で生活をしている立場が邪魔をする。

ーー回想ーー

「倉本さん、好きな人いる?」

「えっ?いないよ。居るなら多岐川君と話したりしないよ」

「じゃあさ、俺と付き合わない?入学式の時から実は気になっていたんだ」

今思い返しても恥ずかしい事、この上無い青臭い告白。

頬を赤らめコクンと照れながら頷く朱莉の表情は今でも忘れない。

キスする迄に1年かかり、最後までは更に2年と、ゆっくり大事にしてきた。

そんなある日、朱莉の父親と俺の父親から呼び出された。

「話って何?」

「瑛二、お前、朱莉ちゃんと、この先の事どう考えているんだ?」

「先の事….」

言葉に詰まる。

「瑛二君が朱莉の事を大事にしてくれている事は分かるよ。だけど、それじゃ朱莉がダメになってしまうんだ」

「朱莉がダメになる?」

「別に成績が落ちたとか、そんな事じゃ無いんだよ。朱莉が君に依存している気がして…先の将来、もし一緒になったら、お互いに良く無い気がしてね…それに瑛二君、こっちの大学を中退して海外へ行き、留学しながらお父さんの仕事を手伝う話を聞いてる」

「はい」

「朱莉は、どうする?」

「‼︎」

「連れて行くわけにはいかないし、連れて行ったにしても頼る寄る辺が君しかいない。学業と仕事の両立は大変なのに朱莉のお守りを君は出来るかい?〝好き〟だけで乗り越える事なんて出来ないんだよ」

何も言えなかった…

「それに、私は君と離れて朱莉自身が見つめ直せればと思っているんだ」

「瑛二、いつ日本に戻れるかも分からないんだぞ。向こうに行けば、お前の気が変わるかもしれない」

「それは無い‼︎」

だろう。先は誰もわからない」

「瑛二君や朱莉に酷いことを言ってることは分かってる…どうか私の頼みを聞いてくれないか?」

朱莉の父親は頭を下げた。

俺も朱莉と為と思い、態と傷つける言葉で別れを切り出した。

〝必ず迎えに行くから〟

まさか、やさぐれてしまうとは想定外。

共通の友人を介して朱莉の話は聞いていたが俺と別れてから、かなり落ち込んだ時期はあったが、就職し社会に揉まれ、見た目も良いから告白する男は後を絶たずだが塩対応との事。

誰とも付き合って無いと聞いた事に安心したのは言うまでもなく…

「瑛二、お前、一途を通り越して執着だな。朱莉ちゃん、うちの系列の会社にいるって、聞いてるから行ってみるか?」

「あぁ。行ってくる」

「頑張れよ。振られたら俺が慰めてやるから(笑)」

「うっせ」

ーーーーーーーーー

6.7年振りに会った朱莉は大人びて色香があるが、それを帳消しするかの様に男前に成長していた。

俺が別れを切り出したせいと分かっていたから、申し訳なさがあった。

ガチガチの鎧を身に包み鉄壁の布陣を作り上げ、をひた隠し、戦士と化していた。

久々に会ったにも拘らず、徹底して俺と関わりを持たない様にあからさまに避け話し掛ける隙さえ与えてくれない。

「何で?」

困り果てた俺は朱莉と今でも連絡とり続けていた春香を頼った。

「(笑)あんな振り方したんだもん、避けられて当たり前じゃん」

自業自得と言わんばかりに笑われる。

「まぁ、事情を知ってるし、多岐川の気持ちが変わり無いことも分かったし、それに朱莉の居る部署に一緒にいる時間も、あんまり無いんでしょ?上手く行くかは多岐川次第だから、お膳立ては手伝うよ。結果がどうであれ、朱莉にも前に進んでもらいたいし」

そう言って春香は悪役を引き受けサプライズ同窓会を開いてくれた。

案の定、朱莉は不機嫌な顔を隠そうともせず、春香達を睨みつける。

その後はカウンターへ移動して強いアルコールを呷る様に流し込み2杯目を飲み終え店を出ていく。

俺は慌て追いかけてタクシーに一緒に乗り込むと2人の思い出の場所に無理矢理連れて行く。


「ねぇ、あんた他人を怒らせるの上手いねって言われた事ない?」

「俺?無いよ。もしあるなら、倉本朱莉限定」

「ハッ‼︎」

そんな軽口を叩くと朱莉はベンチに座り、ポケットからタバコと簡易灰皿を取り出し、タバコを口に咥え火を点けようとする。

「朱莉、女の子なんだからタバコは体に良く無い」

「はぁ?別に結婚、出産の予定は無いんだから構わないでしょ。返して」

俺は咄嗟に朱莉からタバコを奪いゴミ箱へ捨てた。

「ちょっと何するの‼︎」

「朱莉、俺と結婚しよ?」

下話もせずに先にプロポーズしてしまい、何故か朱莉の表情は心配そうに俺を見つめていた。

ーーーーーーーー

いきなりのプロポーズに私は驚く

「何、血迷ったこと言ってるの?酔っ払ってる?」

「ゴメンゴメン。朱莉、仕切り直させて」

赤面した顔を片手で抑え、もう片方は私の前に掌を広げる。

私は過去から抜け出せない自分の気持ちと、振られた時の気持ちが甦り、その場から離れたくて強がった。

「は?悪いけど、帰るわ」

「朱莉ー。」

私は瑛二を置いて、自宅ではなく実家へ戻った。

「朱莉ー帰るなら、先に連絡入れなさいよー」

母は呆れながら迎え入れた。

リビングで1人テレビを観ながら晩酌している父に声を掛けられた。

「朱莉、瑛二君に会ったかい?」

「何でお父さんが知ってるの?」

「まぁ、良いから、一緒に飲まないか?母さん、朱莉にコップを渡してくれ」

「ハイハイ」

そう言って私は母から受け取り父からビールを貰う。

「お前の様子だと、瑛二君の事だ、いきなりプロポーズしてきたんじゃ無いか?」

どこかに盗聴用のカメラでも仕込んでいるのかと思うくらい、先程の出来事を父が言うので驚く。

「何で、お父さんが知ってるの」

「ハハハハハ…やっぱりそうか!」

「一体何なの?」

「んー…実はな、朱莉…」

そう言うと父は私達が別れないといけなかった状況を話した。

「長年、お前は瑛二君を憎んでいたかもしれないが、本当は、父さん達が悪いんだ…朱莉の事を信用してないわけじゃ無い…だけど、あの頃のお前は、瑛二君が全てみたいな振る舞いが目立ち、母さんと話し合って…それに丁度、瑛二君も、お父さんの事業の手伝いと留学が決まっていたから、これを機に離してみては?と瑛二君のご両親と話をして決めたんだ。瑛二君には辛いことを言わせ申し訳無いことをしたと反省している」

私が知らない所で、そんな話し合いがあったなんて…

「瑛二君は絶対に迎えに行くって私達に言ったんだよ」

「そんな…勝手だよ皆んな…」

私はポロポロと涙が出る。

「多分、彼の事だ明日、我が家に来るだろう。朱莉、きちんと決めて瑛二君と話し合いなさい。また彼は海外へ戻るから後悔がない様に…な…母さん、もう寝るよ」

「はいはーい」

私は1人リビングで、残ったビールを飲み、当時の事を思い出していた…

〝瑛二、ずっと一緒にいてね。瑛二、私を離さないでね〟

パンドラの箱黒歴史を紐解き恥ずかしくて軽く死ねる。

「どんだけHeavyな女だったの私」

リビングでゴロゴロと回りながら記憶は自分の都合よく改竄できるものなんだと身をもって思い知る…

「心配されても仕方ない事を私はしたんだ…あ〰︎どんな顔して瑛二アイツに会えばいいのぉ」

酔いもすっかり覚め瑛二と向き合わないとと覚悟を決めた。

結局、眠れない夜を過ごしシャワー浴びて気持ちを切り替え、私は台所に立ち朝ご飯を作る。

「いい匂い。朱莉ありがとう♪たまには起きたら、ご飯ができてるって言うのも悪くないわね」

「お父さんは?」

「まだ夢の中よ」

私は母にお茶を入れ向き合い座りる。

「決めたの?」

「うーん、まだ悩んでる。確かにお父さん達が心配させてしまった事は間違いないし」

「今でも瑛二君の事好き?」

「分かんない。別れてから今まで、恨んでいたから」

「フフフ…可愛さ余って憎さ百倍みたいな?」

「ふぁぁぁ…おはよう」

「「お父さん、おはよ」」

「今日は朱莉が朝ご飯作ってくれたのよ」

「そうか…」

家族が揃い朝ご飯を食べようとしたらベルが鳴る。

「こんな朝早い時間に誰?」

「私が読んだんだ」

父が言うと早朝の来客者を家の中に母が招き入れる。

「おはようございます。朝早い時間なのに、お招き頂きありがとうございます」

「何、呼んだのは私達の方だから…瑛二君、朝ご飯は?」

「まだです」

「良かったら一緒にどうだ?今日は朱莉が作ってくれたんだ」

「朱莉が?是非、戴きます」

元カレと家族揃っての不思議な朝食が始まった。

「瑛二君、悪いけど朱莉と一緒にハナの散歩お願い出来ないかしら?」

「はい」

我が家のアイドル柴犬ハナとドッグランのある公園まで一緒に行く。

ハナをドッグランのサークルに放ち、瑛二と並んで座る。

「朱莉、あの時、君を傷つけてしまい、ごめん…」

「理由は昨日、お父さんから聞いた。全て私の為にした事だって…確かに振り返って考えると自分自身、恥ずかしい」

私はあまりの恥ずかしさに瑛二の顔が見れず俯いた。

「再来週には向こうへ帰るから、昨日の返事が欲しい」

私は暫く考えたが答えが見つからない

「あーっもう‼︎考えたって分かんないよ‼︎後悔するなら、してから後悔した方がマシよ‼︎結婚しよ瑛二‼︎」

私は周りの目を気にせず、自分から瑛二に口付けをした。

そこから、待ってましたかの様に、瑛二が戻るまでに慌しく結納やら互いの両親に挨拶と着々と結婚の準備が始まる。

「今度は朱莉を守れるから頼れよ」

そう言って瑛二は海外へ先に戻り、私は夏季休暇中に異動し瑛二を追いかけ、一緒に暮らす事にした。











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