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浮気して「違う」と言いますが何が違うか意味が知りたいです。1

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昔〝不倫は文化〟とか〝男は同時に2人の女を愛せる〟と言ってた俳優がいたなぁって頭に過ぎる。 

そう私の前に、今その状況が起きていた。

「いやっ(汗)茉莉花…あのっそのっ…これは違うんだ‼︎」

サプライズをしようかと彼氏のアパートに向かうと何やら甘い囁き声が聞こえた…

静かに扉を開けると床に脱ぎ散らかされた服とゴミ箱に投げ捨てられた使用済みのコンドームが生々しい。

そしてベッドの上に裸体の男女が今から目合わい次のラウンドに突入しようとしていた…

結婚を前提にと話していた彼氏と私をと言っていた会社の同僚。

「…その状況で〝違う〟って何が??」

したサプライズをしようとしたら、逆にサプライズをされるなんて…

最近、様子がおかしいと気になっていたから、2人をしていた所為か、思っていた程、傷付いてない自分に少し驚いた…

こんな状況、漫画やドラマだけと思っていたけど、まさか自分の身に降りかかるなんて笑いしかないわっ‼︎と考えてるとと言っていた女が興醒めしたのか、着替えながら口を開く。

「もう晴人いいんじゃない?ねぇ茉莉花。晴人、茉莉花あんたと付き合うのがつまんないんだって‼︎私といる方が楽しいって。それに私の叔父は、人事部長よ。シングルマザー育ちの茉莉花あんたよりが晴人の役に立つし」

何でか不思議だけど、こう言う時の状況の女性って悪怯れるどころか強気に出てマウント取る人っているよね?

正に彼女がそのタイプ。
悪い事しているのは自分達なのに…
きっと〝罪悪感〟という言葉を知らないんだろう…だから高圧的になれるんだと私は思った。

彼女の態度を見て先程まで狼狽えていた彼氏は息を吹き返したかのように自分の犯した〝〟を綺麗さっぱりと吹っ飛ばした。

茉莉花おまえと付き合うより彼女の方が全てが魅力的だ。俺達の関係、終わりな。早く出ていけよ!」

何故かを振り翳しの私は悪者にされ、滑稽な形で彼氏だった狭山晴人さやまはるととの付き合いは終わった。

ーーーーーーーー

私の名前は大庭茉莉花おおばまりか24歳。

元は養蚕業から始め、その後はシルク生地はもちろん、食品や医療と多岐に業績を上げてる大手企業、sanyo-doの企画営業課に勤めている。

あの事件から2週間経たないうちに社内に噂が流れる。

〝ねぇ聞いた?マーケティングの狭山さん事務の有田さんと、もうすぐ婚約だって〟

〝あれっ?狭山さん、企画の大庭さんと付き合ってなかった?〟

〝大庭さんはだったみたいだよ〟

〝マジ?それって酷く無い?(笑)〟

〝噂では有田さん人事部長の姪っ子って話でしょ?出世に目が眩み彼女を選んだんじゃ無い?〟

〝最低ー。だけど大庭さんも寝取られて泣き寝入りってダサっ〟

晴人との婚約の話を流したのは当事者の有田麻衣美ありたまいみ本人が噂を流したのは明白であり、更に面白可笑しく噂好きの女性達にとっては〝他人の不幸〟と言う最高のスパイスが振り掛けてあるから美味しい事間違いなし。

然しながら寝取って、それをする彼女の神経の図太さに感心してしまう。

「なぁ茉莉花、〇〇社の〇〇さんと仲良かったよな?情報と紹介して欲しいんだけど」

後ろから突然、浮気現場を見せつけ、私に開き直り別れを告げた狭山晴人が声を掛けてきた。

正直、彼が業績を上げ評価が高くなったのは私が彼にアドバイスをしていたからだった…

「狭山さん。今、社内で私達が噂されているのはご存知ですか?実際気安く話しかけられても困ります。それとおめでとうございます」

〝私はうまく感情を抑えられてるのか?〟そう思いながら一礼をする。

「チッ。嫌味か?んだよ根に持ってんじゃねぇよ。俺はんだよ。おまえじゃ無理だろ?」

悪態付いて彼は去って行った。

「フゥ…男を見る目がなかったのね私」

ーーーーーーーー

「ねぇ大庭さん、大丈夫っ?狭山君と有田さんの話で持ちきりなんだけど」

「私は大丈夫です…騙された私が悪いんだから…気にかけて頂き、ありがとうございます」

噂の真相を知りたい同僚達が探りにくる中、曖昧に受け流す。

晴人と麻衣美は私が通る所でイチャつく姿を見せる。

幾ら私でも、生々しい現場を見せ付けられ、受けたショックは最小限に済んでも、傷付いて無い訳じゃない。

ーーーーーーーー

晴人との出会いは社内の交流会だった…

「ねぇ、あの企画考えたの大庭さん?」

「はい…っ?」

「あぁ、いきなり声を掛けてゴメンね。俺マーケティングの狭山晴人。ヨロシク」

軽快なトークで人当たりよい晴人は目立つ存在だった。

「大庭さんには参るよ…オレあそこまで絞り込んでプレゼンしきれないし、下準備もそこまで出来ないや」

始まりは仕事の話からだった。
顔を合わせる回数が増え、プライベートで飲み仲間から始まり、付き合う事になった。

「茉莉花、一緒に暮らさないか?」

互いに忙しい身。ゆっくり2人で過ごす時間も儘ならない…彼の提案に私は歓喜するも、それから程なくして様子がおかしくなる。

「ゴメン茉莉花、急な接待が入って」

やっと開いた休日も私が引き下がらさる得ない理由を晴人は言ってデートを断られる。

それに比例して〝自称友達〟有田麻衣美が、やたらと晴人の話をして来た。

「狭山君、忙しいみたいねデートできてないんでしょ?大変ね茉莉花」

何気に優越感に浸る麻衣美の様子が鼻につく。

「ねぇ晴人、一緒に暮らす話、宙ぶらりんになってるけど、どうするの?」

「オレから言い出してなんだけど……まだ落ち着いてないし」

歯切れ悪い返事。そしてニヤニヤ口元を緩めながらスマホを握って離さない…

婚前交渉を望まなかった私にも問題があるのは分かっていたけど、あからさまに浮気されたらねぇ…

「…ば…大庭‼︎」

考えに耽ると後ろから〝ポコン〟と丸めた企画書の書類で頭を叩かれた。

「!っ係長」

「仕事以外の事なら帰ってから考えろ‼︎今は仕事中だぞ」

鬼係長こと井芹亮磨いせりりょうまは私の6つ年上の幼馴染で既婚者。

入社して久々の再会を果たすが、すでに彼は結婚しており、不思議な事に結婚後の家族情報は不明。
ただ左手の薬指にキラキラ光る指輪しか彼が既婚者である証拠しかないのだ。

そして私の初恋の人でもあった。

「茉莉花。今夜、空いてるか?愚痴ぐらい聞いてやるから早く仕事しろ」

書類で口元を隠し、小さな声で言われた。
相変わらず〝優しいお兄ちゃん〟だなぁ係長。

ーーーーーーーー

仕事が終わり、知り合いのイタリア料理店で待ち合わせる。

「明日は休みだから飲め飲め茉莉花。潰れたらタクシーにお前だけ詰めて自宅まで配送してやるから」

「優しくないな‼︎亮磨兄ちゃん」

スーッと手が伸びて私の頭をワシワシ撫でる。

「社内での噂は知ってる。お前は悪く無い‼︎だから気にするな」

「うぅっ…あ"り"がと"う」

張り詰めた糸がプツリと切れ止め処なく涙が零れる。

〝怪しい〟と思っていた事が〝現実〟に降り掛かり、謝るどころか貶され、今じゃ格好の噂の餌にされ、私の心は正直ボロボロだった。

「ほれ、おしぼり、それで目を冷やせ。あっそう言えば、お前のお袋さんだいぶ前に結婚したんだってな?俺のお袋から聞いた。大学に行く時に家を出たからな、全く知らなくて…同じ会社で働く事になったから家に電話した時に、そう聞いて…飲みに誘いたかったんだけどなぁ…狭山とつるんでる姿を見かけて誘えず終いだったんだよ」

「あ…ぅん…まぁ」

「んだょ…歯切れ悪い返事して…母親が幸せになって嬉しく無いのかよ?」

実の所、結婚て言うより元鞘が正しい。

私の母は所謂、お嬢様育ち。
父に一目惚れして結婚…しかし慣れない生活と誤解が招き、母は私を身籠った事に気付か無いまま離婚届を書いて家出した。
お嬢様で世間知らず母を助けたのが母の友人の井芹一家だったのだ。


ーーーーーーーー

中3の時、学校から帰ると我が家では見慣れない革靴が玄関に揃えていた。

「お母さん、お客さま?」

「茉莉花おかえりー」

少女の様に頬を染め可愛らしい笑顔で話す母の前にパリッと身形の良いスーツを着こなす男性が居た。

彼は母の一言で振り返り私を見つめる。

「君が茉莉花ちゃんかい?」

「はぁ…あの、どなたですか?」

男性は感極まって目を潤ませる。

華絵かえ、ありがとう」

そう言って母を抱きしめる。

「孝太郎さんたら♡」

「あの~置いてけぼりで話が見えないんですけど…」

「いや、済まない私は…」

「茉莉花のお父さんよー♪」

母、そこは名乗らせてあげて…ぽかーんとしてるよ…可哀想だよ父(仮) 

家を出て行った真相は、父はモテる人で結婚してもアタックする女性が後を絶たなず、終いには服を脱ぎ迫って来る女性まで現れ、偶々目にした母は、自分は〝体裁の妻〟と思い込み、お互い妊娠に気づかず、離婚届を書いて母は家を出ていったものだから、父(仮)は、 誤解を解きたくて、ずーっと母を探し続けていたが、母の友人である井芹夫妻が母の性格を熟知しておりを図り遠避けていた。

そして頃合いを図り偶然を装い母が働いている職場に父(仮)来て15年ぶりの再会。

漸く見つけたが、がいた事に驚きを隠せずにいた。

意を決して〝父親〟と名乗ろうとしたら母が、ぶち壊した。

そう言うところあるよね、お母さん…

高校入試と思春期真っ盛りの私に、母の妊娠を知る事になる。

私は志望校を、全寮制の短大まである女子校に変え家族との距離を置いた。

だからと言って家族を嫌いになった訳じゃなく、ただ長く〝母娘〟の生活していたから戸惑っただけだった。

今も時々、電話したり8歳になる年の離れた弟と遊ぶのは私の楽しみだったりする。

そう言えば、母と2人の生活していた話以外、話してないから〝シングルマザー〟と思い込まれてたのか…

ーーーーーーーー

「茉莉花、面白れぇ百面相。飲み食いしながら何考えてんだよ?」

「色々?」

「しかし、よく耐えたな?マーケの狭山。男の風上にも置けないよな」

「亮磨ぁ何の話かよー?おっ‼︎茉莉坊、久しぶり。高いワインあるから飲んでいけ。亮磨の奢りだろ?」

彼は、この店のオーナーの樋渡聡さん亮磨兄ちゃんの親友だったりする。

小さい頃は私は、この2人の後ろを金魚のフンみたいに着いて回っていたものだ。

「サト兄ちゃん」

2人と話していくうちに2週間前の出来事がバカらしくなって私は寝落ちてしまった。

「亮磨、そんな物、いつまで付けてんだよ」

「あぁな」

2人の会話が私の耳に聞こえる事はなかった。

ーーーーーーーー

「茉莉花、着いたぞ。たく、お前、ちゃんと飯食ってるのか?軽すぎだぞ」

「うるしゃい‼︎食べてますぅ‼︎亮磨兄ちゃんには関係ないでしょ」

「酔っ払いめ‼︎ほら、水飲んで早く寝ろ」

私は上着を脱いでモソモソとベッドに潜り込み、そのまま眠ってしまう。

亮磨兄ちゃんが優しく頭を撫でた。

「俺が、お前の彼氏なら絶対泣かせないのに…」

そう言葉を残し亮磨兄ちゃんは私の部屋を出ていく。

〝嘘つき。入社して直ぐに亮磨兄ちゃんが結婚していた事を知ってショックで1番泣いたわよ…初恋は実らないって本当よね〟

浅い眠りの中、胸の内で呟いた。
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