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何事も「ごめん」で済む訳ではない。5
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私の話を聞いた後、静かにティーカップをソーサーに置きミシャル様は俯きながら言葉を紡ぐ…
「ルリエラ嬢は生きることを諦め、貴女に身体を託し消えたの…」
ミシャル様は初めてルリエラちゃんに声を掛けた日を思い出し、フロイド様の言葉に傷つき、引き擦っていたのではないかと心配される。
〝お母様、甘すぎなんだよ!こいつが決めて婚約したんだ!教育を受けるのは当たり前だろ〟
婚約者候補を決める〝お茶会〟の3日前にフロイド様は馬に騎乗し鎧に足を入れ胴を刺激した途端、突然馬が暴れ出し振るい落とされる。
普段から、あらゆる武術を学んでいた彼は受け身を取り、大事には至らなかったが、用心の為、安静を余儀なくされた…
調べてみると鎧に小さな針が仕込んであり、胴を刺激した時に針が刺さり暴れたものと推測される。
本来なら馬は殺処分されるところだったがフロイドが止めた為、命は救われた。
今は、その馬の子供がフロイドの愛馬となっているのは有名な話。
「まさか、カリエスが、仕組んでいたとはね…」
ミシャル様は〝正室〟でありながら〝異国人〟である為、レクシェル国の貴族との繋がりは少ない。その所為で、あらゆる手段で彼女を陥れようとする者は多かった。
従ってフロイド様が王太子になる為には貴族との繋がりが必要って事を、8歳ながらもフロイド様は理解していた。
「私が異国人で正妃の座にいるから、今でも陰で〝寵妃で居れば良かったのに欲を出して〟なんて言われてるのよ」
「んまぁ。何て酷い事を言うのかしら?人としての底が知れてるわね‼︎」
まぁまぁと、私を宥めながらカラカラとミシャル様は笑う。
「あの事件が、きっかけでフロイドは自身の置かれている立場を再確認して〝実績を出す大切さ〟を学んで現在に至るから母親としては誇らしくもあるのよ」
我が子の成長を喜ぶミシャル様の姿は母親だ。
譬え、誰が作った物語だろうと〝この世界〟で皆、心を持ち生きているんだと、私は感じた。
「先触れも無しに困ります」
慌てた様子の衛兵の声に話が中断された。
扉の外の方が、何だか騒がしいわね?
ミシャル様と顔を合わせ外の様子に耳を欹てると〝バン〟と勢いよく扉を開けカリエス様が入ってきた。
年甲斐もなく真っ赤なドレスに堆く盛りに盛っているヘアスタイル…まるで鳥の巣みたい。
「ルリエラ嬢が見えてると聞いたから挨拶でもと思って」
「カリエス様、何故ルリエラ嬢が来るって知ってたのかしら?非公式の筈ですよ。何方から聞いたの?」
「‼︎‼︎っ…こ、公爵家の馬車が見えたから、そんな気がしたのよ」
今日はミシャル様の馬車に来たんだけど?自分から墓穴を掘るなんて、カリエス様も、あまり賢い人じゃないのね。
「カリエス様。折角お見えになられたから、ご一緒にお茶でも如何?」
「けっ結構ですわ」
そう、言って言葉を切り、カリエス様は出ていった。
「フフフ…よっぽど、様子が気になったのね。彼女」
カリエス様の登場も、どこ吹く風の様に流す、ミシャル様にも驚きだけど、伯爵令嬢で婚約者候補だったから、それなりに礼節は学ぶでしょうに…メイナ嬢同様、身に付かなかったのね…きっと…いや、もしかしたらトイレと一緒に礼儀作法や常識も一緒に流してしまったのかしら?
「あら、やだ」
私は一拍、手を叩きさらに続けた。
「私、忘れる所だったわ。カリエス様の一言で思い出したけど、この国の情報の扱いの緩さってなあに?」
「ボンちゃん、どういう事?」
私は今朝の出来事をミシャル様に話をした。
「手続きが済んだばかりの婚約解消の情報をパンジー子爵令嬢は既に知ってて、ボンちゃんに何とかしろと直談判しにきたの?スゴいねー…確かに、内容より情報を手に入れてる事は問題よね…ボンちゃん、この話、少し私に預からせて」
そう言って2人きりのお茶会は終えた。
「はぁ、もう少し早く知り合えたら良かったわ。フロイド殿下、ありがと♡」
「ん''ぁあ…有意義に過ごせたなら良かったな」
「何か歯切れの悪い返事ね」
ミシャル様に会える機会を与えてくれたフロイド殿下に俺を言って私は家路に帰ったのだった…
ーーーーーーーー
⌘ ミシャル視点 ⌘
ボンちゃんを送り出した後、入れ替わるようにフロイドが入ってきた。
「母上、その…ルリエラ…規矩はどうでしたか?」
「フロイド、あなたボンちゃんの事、本名で呼んでるの?」
「ボンちゃん…いっいえ、ルリエラ嬢から入れ替わってから、まだ名前すら呼んだ事ありません」
おやおや?本来のルリエラ嬢の時と態度が違うわね?
「相手から許可を頂いてからじゃないと名前呼びは失礼じゃないかしら?途中、邪魔が入ったけど、とても良い時間を過ごせたわ。フロイド、ボンちゃんに会わせてくれてありがとう。改めて礼を言うわ」
母親の勘としては、フロイドはルリエラ嬢の時より今の彼女の方が好きみたいね。
フロイド中ではルリエラ嬢に対して半分は贖罪の感じがあったから様子を見に行っていただけだし、そこに恋愛感情が入ってないのは知ってたけど…
しかしルリエラ嬢の容姿にあのキャラって最強ね。話し上手に聞き上手で細やかな所まで気が付くし同性が好むタイプ。
ーーーーーーーー
「ミーシャ。今日の、お茶会は、とても楽しんでたと聞いたよ」
「フフフ…凄く懐かしく、また有意義な時間を過ごせて楽しかったわ。またルリエラ…いえ、ボンちゃんと、お話したいわ」
「君が、他人と会って〝また会いたい〟気持ちになるって彼女に嫉妬してしまうよ」
「クスっ。ボンちゃんは女の子よ〝嫉妬〟だなんて…ルド、面白い事を言うのね」
他愛の無い夫婦の会話後にボンちゃんが言っていた〝情報漏洩〟の話をする。
「なんて情けない事だ…貴族の〝ただのおしゃべり〟では済まされないな」
ルドルフは眉間に皺を寄せ額に手を当てた。
「〝人の口に戸は立てられない〟っていうでしょ?だけど箝口令って意味を知らないのかしらね?」
「全くだ。誰が漏らしたんだか…早急に手を打ちたいが、王宮には多くの人間が勤めているから割り出すのに時間がかかる…」
「ルド、その事なんだけど私に良い考えがあるわ」
フロイドが来週から約1ヶ月、連盟国と合同演習を控えておりそれを機に噂を流す事にした。
①アゼイルの婚約解消を機にザイゼル公爵家はアゼイル、婚約解消のきっかけになったメイナ パンジー嬢に損害賠償を請求する。
②婚約解消が決まり、アゼイルを王太子を剥奪し、フロイドを王太子に擁立する。
③アゼイルと婚約解消後、ルリエラ嬢は修道院へ自ら望み神に使える事にした。
「ミーシャ…内容がバラバラでよく分からないが、この噂で分かるのか?」
「クスっ。心配?大丈夫よ。もし、この3つの噂が混ざったら、そこから炙り出せば良いのよ。それにカリエスかメイナ嬢が騒ぐだけだから…ルドに面倒を押し付ける形にはなるけどね」
「私は構わないよ。単なるおしゃべりでは済まされない、この国の情報漏洩は早く手を打たないと」
私はこの噂を、給仕や執事、護衛騎士、王宮内に務める貴族にそれぞれ行き渡るように噂を流す。
ザイゼル公爵家にも、この噂話の対応をする様、手紙を出した。
さて、どんな話に化けるか楽しみ。
ーーーーーーーー
ミシャル様から手紙が届き、フロイド様が合同演習へ行かれてから半月経たないうちに、またメイナ嬢が先触れ無しに、すごい剣幕でやってきた。
「ねぇー‼︎ルリエラさん、どういう事ぉ?私は〝なんとかして〟ってお願いしたのに、なんでイル君は王太子剥奪の上に私にまで損害賠償請求されなくちゃいけないのよ‼︎」
ん?内容が混ざって無い?
本当、この国の人達って〝守秘義務〟の文字が辞書が頭に無いのかしら?
「パンジー嬢…このぁぃ「だーかーら何で私が損害賠償を支払わないといけないのよ‼︎」
私が話しているのに、言葉を被せてきて…あーやっぱり、モンスターだわ、この子。
それに、今の言動に対して考えすらないみたいだし。
自分自身が罪を犯している事に…
「思慮がないっていうか浅薄な…」
「何か言った?ルリエラさん」
「何でもなくてよ…」
怒り冷めやまない彼女の言葉を右から左へと私は聞き流した。
だって、同じ言葉を繰り返して煩いし、いちいち構ってられないわよ‼︎
いーい?女のヒステリックって悪害以外、何の理もないものなのっ。
「ねえ!聞いてるの?ルリエラさん‼︎」
腹黒ちゃんは勝手にヒートアップしてテーブルを強く叩いたところで、冷たく刺すような声がした。
「先触れもなしに押しかけて来て、我が娘に暴言を吐き、しかも強迫紛いな行為…随分と教育が行き届いてるなパンジー子爵」
「イケオジ…」
「も…申し訳ございませんっ。ザイゼル公爵閣下」
部屋の扉の前にイケオジと、その隣に人の良さそうな男性が冷や汗を垂らし青い顔をして俯いていた。
「伯父様?」
腹黒ちゃんに、そう呼ばれた男性は彼女の伯父にあたるパンジー子爵当主。
遠路遥々、領地にから王都まで数日かけて姪御のしでかした事に対して謝罪をしに我が家へ来たみたい。
「メイナ、これは、どういう事なんだ?王都の貴族が通う学園に入りたいと言ったから、後の将来の為に良いだろうと通わせたが、婚約者のいる令息達と距離の近い付き合い方をしたり、王太子を誑かしてザイゼル公爵令嬢を陥れる事までして」
広いレクシェル王国、パンジー子爵家の遠い領地まで流れてる噂は、ひと月以上前のアゼイルが婚約破棄宣言した話のものだった…
「伯父様、これは違うの。誤解よ」
「誤解ではないじゃないか?今のお前の話や、目上貴族令嬢に対する態度を見て、これが誤解なら何が正しいんだ?」
腹黒ちゃんは何も言い返せず、唇を噛み顔を顰める。
パンジー子爵はイケオジの方へ身体を向け跪く。
「ザイゼル公爵閣下、この度は我が養女の非礼な態度、そもそも、我がパンジー家がメイナに十分な淑女教育が出来なかったことが原因でございます。罰は甘んじてお受け致します。どうか、どうか…お許しください」
ガタガタと震えながらパンジー子爵は首を垂れた。
「パンジー子爵、2人の話は聞こえただろう?貴殿の養女が〝我が娘、ルリエラとの婚約解消でアゼイル殿下が王太子剥奪そして損害賠償〟の話…実際、まだ婚約解消の話は世間に公表せず国王陛下が預かってる話…私が言っている意味は分かるかな?パンジー子爵」
「‼︎。まさか…なんて事を…」
話の内容を理解したパンジー子爵は更に青褪める。
「貴殿の功績を皆が知ってるからこそ、正しい判断をするべきだ…パンジー子爵。そして済まないが令嬢は我がザイゼル公爵家で暫く拘束させて頂く」
「ちょっ!何よ!触らないでよっ‼︎私が何したって言うのよ‼︎いやっ離せよ‼︎伯父様助けて‼︎」
腹黒ちゃんはザイゼル公爵家の護衛に取り押さえらるも抵抗し、暴れる。
パンジー子爵は捕らえられる姪御を辛そうな表情で黙って見るしかなかった。
「ルリエラ嬢は生きることを諦め、貴女に身体を託し消えたの…」
ミシャル様は初めてルリエラちゃんに声を掛けた日を思い出し、フロイド様の言葉に傷つき、引き擦っていたのではないかと心配される。
〝お母様、甘すぎなんだよ!こいつが決めて婚約したんだ!教育を受けるのは当たり前だろ〟
婚約者候補を決める〝お茶会〟の3日前にフロイド様は馬に騎乗し鎧に足を入れ胴を刺激した途端、突然馬が暴れ出し振るい落とされる。
普段から、あらゆる武術を学んでいた彼は受け身を取り、大事には至らなかったが、用心の為、安静を余儀なくされた…
調べてみると鎧に小さな針が仕込んであり、胴を刺激した時に針が刺さり暴れたものと推測される。
本来なら馬は殺処分されるところだったがフロイドが止めた為、命は救われた。
今は、その馬の子供がフロイドの愛馬となっているのは有名な話。
「まさか、カリエスが、仕組んでいたとはね…」
ミシャル様は〝正室〟でありながら〝異国人〟である為、レクシェル国の貴族との繋がりは少ない。その所為で、あらゆる手段で彼女を陥れようとする者は多かった。
従ってフロイド様が王太子になる為には貴族との繋がりが必要って事を、8歳ながらもフロイド様は理解していた。
「私が異国人で正妃の座にいるから、今でも陰で〝寵妃で居れば良かったのに欲を出して〟なんて言われてるのよ」
「んまぁ。何て酷い事を言うのかしら?人としての底が知れてるわね‼︎」
まぁまぁと、私を宥めながらカラカラとミシャル様は笑う。
「あの事件が、きっかけでフロイドは自身の置かれている立場を再確認して〝実績を出す大切さ〟を学んで現在に至るから母親としては誇らしくもあるのよ」
我が子の成長を喜ぶミシャル様の姿は母親だ。
譬え、誰が作った物語だろうと〝この世界〟で皆、心を持ち生きているんだと、私は感じた。
「先触れも無しに困ります」
慌てた様子の衛兵の声に話が中断された。
扉の外の方が、何だか騒がしいわね?
ミシャル様と顔を合わせ外の様子に耳を欹てると〝バン〟と勢いよく扉を開けカリエス様が入ってきた。
年甲斐もなく真っ赤なドレスに堆く盛りに盛っているヘアスタイル…まるで鳥の巣みたい。
「ルリエラ嬢が見えてると聞いたから挨拶でもと思って」
「カリエス様、何故ルリエラ嬢が来るって知ってたのかしら?非公式の筈ですよ。何方から聞いたの?」
「‼︎‼︎っ…こ、公爵家の馬車が見えたから、そんな気がしたのよ」
今日はミシャル様の馬車に来たんだけど?自分から墓穴を掘るなんて、カリエス様も、あまり賢い人じゃないのね。
「カリエス様。折角お見えになられたから、ご一緒にお茶でも如何?」
「けっ結構ですわ」
そう、言って言葉を切り、カリエス様は出ていった。
「フフフ…よっぽど、様子が気になったのね。彼女」
カリエス様の登場も、どこ吹く風の様に流す、ミシャル様にも驚きだけど、伯爵令嬢で婚約者候補だったから、それなりに礼節は学ぶでしょうに…メイナ嬢同様、身に付かなかったのね…きっと…いや、もしかしたらトイレと一緒に礼儀作法や常識も一緒に流してしまったのかしら?
「あら、やだ」
私は一拍、手を叩きさらに続けた。
「私、忘れる所だったわ。カリエス様の一言で思い出したけど、この国の情報の扱いの緩さってなあに?」
「ボンちゃん、どういう事?」
私は今朝の出来事をミシャル様に話をした。
「手続きが済んだばかりの婚約解消の情報をパンジー子爵令嬢は既に知ってて、ボンちゃんに何とかしろと直談判しにきたの?スゴいねー…確かに、内容より情報を手に入れてる事は問題よね…ボンちゃん、この話、少し私に預からせて」
そう言って2人きりのお茶会は終えた。
「はぁ、もう少し早く知り合えたら良かったわ。フロイド殿下、ありがと♡」
「ん''ぁあ…有意義に過ごせたなら良かったな」
「何か歯切れの悪い返事ね」
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ボンちゃんを送り出した後、入れ替わるようにフロイドが入ってきた。
「母上、その…ルリエラ…規矩はどうでしたか?」
「フロイド、あなたボンちゃんの事、本名で呼んでるの?」
「ボンちゃん…いっいえ、ルリエラ嬢から入れ替わってから、まだ名前すら呼んだ事ありません」
おやおや?本来のルリエラ嬢の時と態度が違うわね?
「相手から許可を頂いてからじゃないと名前呼びは失礼じゃないかしら?途中、邪魔が入ったけど、とても良い時間を過ごせたわ。フロイド、ボンちゃんに会わせてくれてありがとう。改めて礼を言うわ」
母親の勘としては、フロイドはルリエラ嬢の時より今の彼女の方が好きみたいね。
フロイド中ではルリエラ嬢に対して半分は贖罪の感じがあったから様子を見に行っていただけだし、そこに恋愛感情が入ってないのは知ってたけど…
しかしルリエラ嬢の容姿にあのキャラって最強ね。話し上手に聞き上手で細やかな所まで気が付くし同性が好むタイプ。
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「ミーシャ。今日の、お茶会は、とても楽しんでたと聞いたよ」
「フフフ…凄く懐かしく、また有意義な時間を過ごせて楽しかったわ。またルリエラ…いえ、ボンちゃんと、お話したいわ」
「君が、他人と会って〝また会いたい〟気持ちになるって彼女に嫉妬してしまうよ」
「クスっ。ボンちゃんは女の子よ〝嫉妬〟だなんて…ルド、面白い事を言うのね」
他愛の無い夫婦の会話後にボンちゃんが言っていた〝情報漏洩〟の話をする。
「なんて情けない事だ…貴族の〝ただのおしゃべり〟では済まされないな」
ルドルフは眉間に皺を寄せ額に手を当てた。
「〝人の口に戸は立てられない〟っていうでしょ?だけど箝口令って意味を知らないのかしらね?」
「全くだ。誰が漏らしたんだか…早急に手を打ちたいが、王宮には多くの人間が勤めているから割り出すのに時間がかかる…」
「ルド、その事なんだけど私に良い考えがあるわ」
フロイドが来週から約1ヶ月、連盟国と合同演習を控えておりそれを機に噂を流す事にした。
①アゼイルの婚約解消を機にザイゼル公爵家はアゼイル、婚約解消のきっかけになったメイナ パンジー嬢に損害賠償を請求する。
②婚約解消が決まり、アゼイルを王太子を剥奪し、フロイドを王太子に擁立する。
③アゼイルと婚約解消後、ルリエラ嬢は修道院へ自ら望み神に使える事にした。
「ミーシャ…内容がバラバラでよく分からないが、この噂で分かるのか?」
「クスっ。心配?大丈夫よ。もし、この3つの噂が混ざったら、そこから炙り出せば良いのよ。それにカリエスかメイナ嬢が騒ぐだけだから…ルドに面倒を押し付ける形にはなるけどね」
「私は構わないよ。単なるおしゃべりでは済まされない、この国の情報漏洩は早く手を打たないと」
私はこの噂を、給仕や執事、護衛騎士、王宮内に務める貴族にそれぞれ行き渡るように噂を流す。
ザイゼル公爵家にも、この噂話の対応をする様、手紙を出した。
さて、どんな話に化けるか楽しみ。
ーーーーーーーー
ミシャル様から手紙が届き、フロイド様が合同演習へ行かれてから半月経たないうちに、またメイナ嬢が先触れ無しに、すごい剣幕でやってきた。
「ねぇー‼︎ルリエラさん、どういう事ぉ?私は〝なんとかして〟ってお願いしたのに、なんでイル君は王太子剥奪の上に私にまで損害賠償請求されなくちゃいけないのよ‼︎」
ん?内容が混ざって無い?
本当、この国の人達って〝守秘義務〟の文字が辞書が頭に無いのかしら?
「パンジー嬢…このぁぃ「だーかーら何で私が損害賠償を支払わないといけないのよ‼︎」
私が話しているのに、言葉を被せてきて…あーやっぱり、モンスターだわ、この子。
それに、今の言動に対して考えすらないみたいだし。
自分自身が罪を犯している事に…
「思慮がないっていうか浅薄な…」
「何か言った?ルリエラさん」
「何でもなくてよ…」
怒り冷めやまない彼女の言葉を右から左へと私は聞き流した。
だって、同じ言葉を繰り返して煩いし、いちいち構ってられないわよ‼︎
いーい?女のヒステリックって悪害以外、何の理もないものなのっ。
「ねえ!聞いてるの?ルリエラさん‼︎」
腹黒ちゃんは勝手にヒートアップしてテーブルを強く叩いたところで、冷たく刺すような声がした。
「先触れもなしに押しかけて来て、我が娘に暴言を吐き、しかも強迫紛いな行為…随分と教育が行き届いてるなパンジー子爵」
「イケオジ…」
「も…申し訳ございませんっ。ザイゼル公爵閣下」
部屋の扉の前にイケオジと、その隣に人の良さそうな男性が冷や汗を垂らし青い顔をして俯いていた。
「伯父様?」
腹黒ちゃんに、そう呼ばれた男性は彼女の伯父にあたるパンジー子爵当主。
遠路遥々、領地にから王都まで数日かけて姪御のしでかした事に対して謝罪をしに我が家へ来たみたい。
「メイナ、これは、どういう事なんだ?王都の貴族が通う学園に入りたいと言ったから、後の将来の為に良いだろうと通わせたが、婚約者のいる令息達と距離の近い付き合い方をしたり、王太子を誑かしてザイゼル公爵令嬢を陥れる事までして」
広いレクシェル王国、パンジー子爵家の遠い領地まで流れてる噂は、ひと月以上前のアゼイルが婚約破棄宣言した話のものだった…
「伯父様、これは違うの。誤解よ」
「誤解ではないじゃないか?今のお前の話や、目上貴族令嬢に対する態度を見て、これが誤解なら何が正しいんだ?」
腹黒ちゃんは何も言い返せず、唇を噛み顔を顰める。
パンジー子爵はイケオジの方へ身体を向け跪く。
「ザイゼル公爵閣下、この度は我が養女の非礼な態度、そもそも、我がパンジー家がメイナに十分な淑女教育が出来なかったことが原因でございます。罰は甘んじてお受け致します。どうか、どうか…お許しください」
ガタガタと震えながらパンジー子爵は首を垂れた。
「パンジー子爵、2人の話は聞こえただろう?貴殿の養女が〝我が娘、ルリエラとの婚約解消でアゼイル殿下が王太子剥奪そして損害賠償〟の話…実際、まだ婚約解消の話は世間に公表せず国王陛下が預かってる話…私が言っている意味は分かるかな?パンジー子爵」
「‼︎。まさか…なんて事を…」
話の内容を理解したパンジー子爵は更に青褪める。
「貴殿の功績を皆が知ってるからこそ、正しい判断をするべきだ…パンジー子爵。そして済まないが令嬢は我がザイゼル公爵家で暫く拘束させて頂く」
「ちょっ!何よ!触らないでよっ‼︎私が何したって言うのよ‼︎いやっ離せよ‼︎伯父様助けて‼︎」
腹黒ちゃんはザイゼル公爵家の護衛に取り押さえらるも抵抗し、暴れる。
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