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枯れてますが、何か?1

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朱莉あかりがいるって分かっているのに、他に好きな人が出来た」

高2から3年、全ての初めてを捧げた彼から、最後の別れを告げられた…

長く一緒に居たから分かる、別れのサインは薄々感じていた。

私自身、彼に対して、からに変わっていき、長く一緒にいたからこそ〝ずっと一緒〟と勝手に思い込み、夢見て胡座をかいていた自分自身に態と気付かない振りをしていた…

しかし、呪文を唱えるかのように別れを告げられ私の心の足場は脆く崩れた…

せめて最後ぐらいは綺麗に別れたくて、行き場の無い、泣き喚きたくなる感情を押し殺して彼の気持ちを汲んだ。

「…そう…分かった…瑛二…今迄、ありがとう」

しかし、私の気持ちをコイツは見事に崩した。

「別れても俺達、変わらずに付き合える友達だよな?」

自分がした事を悪びれるどころか反省せず、軽い口調…

でも思っているの?

無け無しのプライドで人が折角、平然て装っているのに、こうも無神経な彼氏だった男に腹が立つし、3年と言う歳月を過ごしたのに瑛二コイツの性格を理解してなかった自分自身にも腹が立った…

「さよなら、二度と私の前に現れないで」

複雑な感情を只管ひたすら抑えていた私は瑛二に別れを告げた…

          ◇
          ◇
          ◇

P P P P P………カチッ

「ん…あふ。何で今更、こんな夢を見るのかな?最悪っ!」

寝覚めの悪い朝を迎え気分が落ちる。テーブルに置いているタバコに手を伸ばし、口に咥え、火につけ歩きながら身支度をする。

あれから6年の歳月が過ぎアラサー目前、やさぐれた私はお一人様を満喫している。

瑛二という男を通し〝永遠〟と言う言葉は無く、そして人は〝裏切る〟生き物と私は学んだ。

「あれから6年…いや7年?まぁいいや。酒とタバコが友人て、枯れてんなあー」

自嘲気味に笑い、朝食を摂りながらBGM代わりに朝の情報番組を聴き、スマホを弄り複数入れてる新聞のアプリに目を通す。

タバコは平日4.5本。休日は無制限と決めている。

別にタバコを吸う事を隠してるわけではないが〝社会人のマナー〟として勝手に自分自身で決めてる。

だって逆の立場だったらヤじゃない?
タバコの匂いをプンプンさせた人と仕事したくない。

〝今日1番ハッピーは〇〇座のあなた♪特に恋愛運上々。素敵な出会いがあるかも☆〟

よくある星占いで自分の星座が1位と流れる。

「恋愛運って(苦笑)今更、誰と恋愛するんだろ?アホくさっ」

時間になり私は家を出た。

好きな音楽をイヤホンで聴きながら通勤電車の車窓をボーっと眺める。

倉本朱莉くらもとあかり27歳、もちろん独身。

学生時代は可愛いものが好きで…今も好きだけどさっ学生時代ほど熱意はない。

趣味はドライブ、映画鑑賞、読書。
もちろん1人で。

付き合った男性は1人。
先程、私の夢に現れた呪いの元凶。

あれから6.7年の月日が過ぎようとするのに忘れた頃に夢に出るとは…

何かのフラグじゃないことを願う。

ーーーーーーーー

「今日からしばらく、こちらでお世話になります、多岐川瑛二たきがわえいじです」

「マジかよ?」

見事にフラグ回収。
ってか下手な出来事すぎて笑える。

「ねぇ♡朱莉さん、かっこいいでしょ?」

朝イチ課長ポンコツが昨日やらかしたクレーム対応に追われ、後輩の話を半分しか聞いていなかった。

ー30分前ー

「あっかりさあん♪今日から、本社に海外部のエースって言われてる人が暫く販促ウチに来るんですよぉ!し☆か☆も超〰︎イケメンですって」

「ふぅん…そう…ごめん電話。 もしもし、おはようございます。〇〇の倉本です。この度は…」

そんなこと言ってだけど名前まで聞いてなかったな。

「え〰︎多岐川君に案内する人を倉…」

「お断りします。他を当たってください」

「まだ話の…」

「まだ言いますか?朝の…」

「済まない。済まない(大汗)分かった分かったから」

「分かっていただけたら助かります。今から□□社とミーティングが有りますので出ます」

私は課長を追い込み案内役の話を蹴っ飛ばし社を出る。

「課長、彼女は」

「ウチの稼ぎ頭の倉本君だ。あー冷たい感じだけど、顧客率No. 1、クレーム無しと本当に優秀で頭が上がらないんだよ。しかも女性から絶大な人気があるし」

「へぇ。そうなんですか」

ーーーーーーーー

「マジ有り得んだろ?正夢ってやつか?」

久々に会った多岐川さん元カレに動揺が隠せない。

待ち合わせ時間になるまで近くのカフェで時間を潰しているとメールが入る。

「春香から…なんだろ?」

瑛二と別れてから全てを整理した中で数少ない友人、春香。

 ❇︎✴︎❇︎✴︎❇︎✴︎❇︎✴︎ ❇︎✴︎❇︎✴︎❇︎✴︎❇︎✴︎ ❇︎✴︎❇︎✴︎❇︎✴︎
朱莉、おっひさ。元気してる?
今度、高校の同窓会があるんだけど、朱莉ずっと参加してないじゃない?
みんな朱莉に会いたいって言ってるけど、参加できない?
返事ちょーだいね〟
 ❇︎✴︎❇︎✴︎❇︎✴︎❇︎✴︎ ❇︎✴︎❇︎✴︎❇︎✴︎❇︎✴︎ ❇︎✴︎❇︎✴︎❇︎✴︎

「同窓会ね…」

瑛二との再会もあり、行く気がしない。

ーーーー数日後ーーーー

「倉もっち、久しぶりぃ」

「………(汗)」

何で、こんな事になった…

断るはずの同窓会に何故か参加する羽目になった。

同窓会会場は同級生が経営しているバーを貸し切る。

「あっかりぃ飲んで…ごめんて‼︎」

私は春香を睨みつける。

「騙しやがったな」

「もう倉もっち、許してあげてよ‼︎春香だって仕方なかったんだから」

別の友人が私を後ろから抱きしめ宥める。

「(怒)カウンターに行くわ」

私はカウンターへ移動する。

「お店、提供してありがとね。ここはタバコ吸える?同窓会なのに仕事って不思議だね」

「うちの売り上げにもなるし、それなりに楽しんでるから構わないよ」

カウンターにいるマスター兼同級生はスッと灰皿を出し注文を訪ねた。

「ウィスキーをロックで」

「倉本、学生時代と違って変わりようが凄いな…なんて言うか男前みたいな?」

「余計なお世話」

タバコに火を点け煙を口緩ませ吐き出す。

「なよなよフリフリじゃ出来ない仕事なんでね。感情をブーストして好きな物に全力で行く歳は当に過ぎたし」

「冷めてんねー」

「別に構わないよ。同じものをおかわり」

カランと氷がグラスの中で音を立てる。

「おまけに酒強いって何目指してんの」

「フッ何も目指してないよ。ごめん、これ飲んだら退散するわ。ご馳走様。お金、置いとくね」

「倉本」

私は店を出てタクシーを拾い乗ろうとすると、1番会いたくない男多岐川瑛二が乗り込んで来た。

「倉本さん、しれっと帰るってひどくないですか?」

「はぁ(怒)多岐川さんには関係ないんじゃ無いんです?」

「お客さん、行き先は」

「えっと」

「△△へ…」

空かさず被せ勝手に行き先を決められる。

「ここは…」

「懐かしいだろ?」

そこは多岐川瑛二と付き合っていた頃によく待ち合わせや、ゆっくり話したい時、そして告白も別れを言われた、思いっきり思い出がある場所。

「ねぇ、あんた他人を怒らせるの上手いねって言われた事ない?」

「俺?無いよ。もしあるなら、倉本朱莉限定」

「ハッ‼︎」

私は呆れながら、街が一望できるベンチに座りポケットからタバコと簡易灰皿を取り出しタバコを咥え火を点けようとしたら瑛二が取り上げる。

「朱莉、女の子なんだからタバコは体に良く無い」

「はぁ?別に結婚、出産の予定は無いんだから構わないでしょ。返して」

瑛二は私のタバコをグシャリと潰しゴミ箱に捨てた。

「ちょっと何するの‼︎」

「朱莉、俺と結婚しよ?」

いきなりプロポーズした瑛二に私は、お酒を飲み過ぎて頭がおかしくなったのでは?と心配した。
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