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私がしてきた事は…
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父が家から追い出され2ヶ月経ったある日、いい歳をした男性が恥ずかし気もなく玄関の前で土下座して赦しを乞う。
「親父、お袋、〇〇…もう二度と同じ過ちを犯しません許してください」
「お父さん…?」
「愛莉、放っておけ‼︎粗方、女にも捨てられ、帰る寄る辺も無くなったんだろ」
実際そうなのだ。
元秘書の女は間よくば母と私達を追い出し妻の座に就く予定が当てが外れ、自分達が追い出され「納得いかない‼︎」と腹を立て手切れ金を受け取り逃げたのだ。
もちろん女の妊娠はウソだった。
それに気付いた時には後の祭り…何もかも失った父が滑稽に見えた。
父は諦めずに毎日、毎日、決まった時間に土下座して謝る。
そんな父の姿を見て前世を思い出す。
シャルダンの時は国や民の事を顧みず、贅沢の限りを尽くした私達は,その国民達により2人仲良く処刑された…
他にも色々あったが、男爵未亡人の末路は今、振り返ると1番凄惨な物で思い出すだけで身震いする。
何としても今世は避けたいと願った。
「あっ…雨」
梅雨の終わりを告げる雨の様な強く激しい雨は窓を打ちつけ、バタバタと音を鳴らす。
父は相変わらず玄関の前で土下座をして動かず…
私はそんな姿の父を黙って見下ろした。
ーーーーーーーー
「チートな愛莉に面白いコミック見つけたから読んでよ」
ゲームを進めた友人から、悪役令嬢側からの視点が描かれたコミックを手渡された。
「最近,流行っているんだよ♪」
数冊本を渡され。内容の殆どは悪役令嬢が転生者で破滅フラグを自ら回避したり、回避をされなくとも自身で新たな道を拓き活躍する話に私はハマった。
「転生ヒロインから堕とされた令嬢?タイトルが暗いなぁ…やっぱり破滅回避かな?」
嬉々として本を開き冒頭のページに衝撃を受けた。
❇︎✴︎✴︎ ❇︎✴︎✴︎ ❇︎✴︎✴︎ ❇︎✴︎✴︎ ❇︎✴︎✴︎ ❇︎✴︎✴︎ ❇︎✴︎✴︎ ❇︎
「〇〇令嬢、君が☆☆に対しての数々の嫌がらせは聞いている。性根が腐った君に、この国の未来の国母としては相応しくない,私はこの場を借りて、ここに〇〇令嬢との婚約を破棄し☆☆令嬢と新たな婚約を結ぶ事にした」
声高らかに私の婚約者は、あれほど諌めた☆☆令嬢の肩を抱きしめ私に婚約破棄を宣言した。
確かに☆☆令嬢に、キツく当たったのは認める。
だけど、それは彼等の為であり、決して自分の私利私欲ではなかった…
「お待ちください◇◇様‼︎私は☆☆令嬢に危害など加えてません‼︎」
「キャっ◇◇様ぁ。〇〇さんが私を睨んで怖いっ…」
カタカタと態とらしく震えて見せ☆☆令嬢は◇◇の腕に絡みつく…
「〇〇‼︎見苦しいぞ‼︎その嫉妬に狂った貴様なぞ見たくない‼︎この国から出て行け‼︎」
激昂して冷たく見下ろす彼の腕に中で☆☆は、ニンマリと口角を上げ〝ざまぁ〟と小さく声なく唇を動かした…私はこの時、初めて彼女の策略で王太子の婚約者の座から引き摺り下ろされたことを知る。
婚約破棄をされた私は〝役立たず〟と言われ、親からも放逐された。
行くあてもないまま、この先、どう生きようか考え倦ねる。
貴族の結婚は政治的な事で執り行われ私は、幼い頃から王太子妃教育を受け、将来、◇◇様を支えるべくして育てられたのだ。
王国の〝昏い過去〟〝秘密〟を知る私は邪魔な存在になる…
あぁ私を殺しに国の暗部が私を追ってきた…
❇︎✴︎✴︎ ❇︎✴︎✴︎ ❇︎✴︎✴︎ ❇︎✴︎✴︎ ❇︎✴︎✴︎ ❇︎✴︎✴︎ ❇︎✴︎✴︎ ❇︎
「何コレ?」
想像しなくとも分かる情景、貴族としてのあり方を事細かく説明されていた、その本を読み進める。
ストーリーは、野心家の公爵の娘として生まれた〇〇は父の念願で次期王太子になる◇◇と婚約関係を結ぶ。
聡い彼女は公爵家の為、この国の為と只管、厳しい王妃教育の他にも諸外国の情勢を自ら学び、孤児院に慰問、寄付とボランティア活動を行う、まさに〝淑女の鑑〟の〇〇。
王太子◇◇と共に国を支える〝同志〟として、そして〝婚約者〟としての小さな恋心を彼女は抱いていた。
学園生活に慣れた頃に☆☆が編入生で入ってから彼女の学園生活と、そして婚約者◇◇の関係が一変する。
◇◇に抱いていた恋心は☆☆への嫉妬に変わり、彼女は「☆☆令嬢、◇◇様と私は婚約関係です。距離を弁えなさい」とキツく言った。
彼女が☆☆にした仕打ちはマナーがなってない事など貴族令嬢として当たり前の事を「貴族として生まれながら、そんな事も出来ない、知らないなんて恥ずかしいと思わないの?」と吐き捨てたぐらい。
しかし、この☆☆は転生者で〇〇達は☆☆が前世にプレイしていたゲームの駒でしかなかった事を誰も知らない…
この後、彼女は暗部に捕まり純血を奪われ散々甚振られた後、惨殺され叢に捨てられる…
命の灯火が消え入ろうとする彼女は〝何もしないまま死ぬなんてイヤ!生きたい!〟と強く願ったら、暗部から逃げているところから生き直す。
命辛々逃げ延びた〇〇は隣国にある娼館の大元締めに拾われた。
大元締めから「〇〇お嬢様よ、体を売る覚悟はあるか?」貴族令嬢として、元王太子の婚約者として育った彼女に身分の低い男達と肌を重ねるのは死ぬ程辛いものかもしれないのに、彼女は「元婚約者◇◇、そして自身を陥れた☆☆に一矢でも報い達成する為に、この身が必要なら捧げます」彼女の並々ならぬ覚悟に私は胸を打たれた。
彼女は娼婦達から様々な手技を学び肌を重ねても乙女を保ったまま2年経たずにして高級娼婦のトップになる。
彼女は娼館で学んだ手練手管と幼き頃より培ってきた情報収集力を駆使して人脈を広げ、元々小競り合いが起きていた隣国に戦争を持ち掛け、◇◇と☆☆の結婚式の日に奇襲攻撃の手綱を取り元自国を潰した。
☆☆は「エンディングに、こんなのは無かった」と泣き叫びながら奴隷へと堕ち、国を潰した〇〇は〝勝利の女神〟と称賛されたが、元自国では〝国を陥れた売女〟と言われた。
彼女自身は「私の自己満足の復讐は終わりました。生きる目的はありません」そう言って谷底に身を投げ、物語は終わる。
流石に〝ざまぁ〟とは言わなかったが婚約者がいる相手から奪った私は、この☆☆そのもの…そして〇〇令嬢は…リジイア様。
あのパーティで彼女は無理矢理、取り押さえられた際、上半身裸になってしまい、恥じて自ら命を絶たれた…
本を通して私は、自分のしたいままに振る舞った結果、数々の人を傷つけただけで無く、死なせてしまったことに気付く。
「あぁぁ…私はなんて事をしてしまったの…」
一瞬で足元が震える。
気が遠くなるくらいに、過ぎた年月。
取り返すことすら出来ない、赦しを乞うことさえ叶わない…
玄関で赦しを乞い、土下座する父は、まだマシなんだと思った。
ーーーーーーーー
「…ん?ここは…」
「また会えたねー。久しぶりが正しい?時の概念が無いから分かんないけど♪」
「狭間の神さま?」
「へぇ覚えてたんだー」
相変わらず水色の髪色に美しい顔立ちの狭間の神が顔を覗き込む…
神様だから歳を取らないのか姿形は変わらない。
「なんか色々考えているみたいだけど、前世に比べたら少しマシになったねー少しだよ!す.こ.し」
軽く握り拳を作り、人差し指と親指だけ指を伸ばして見せる。
「あのっ。狭間の神様‼︎リジイア様は転生しているの?」
もし、同じ世界に生きているなら、会いたい…謝りたい…その思いが私を支配するが…
「君をこの輪廻に縛りつけるために魂はおろか存在すらしないよ」
狭間の神が放った言葉に私は絶望した。
「そんな…」
「君を恨んでいたが、君を救いたかったのかもしれないね。君が過ちに気付いた時点で君の魂は自由。まぁ遅過ぎたけどね」
「遅過ぎ…?」
「まんまの意味だよー。もう君の魂も今世で終わりって事。まぁ呪いも解けたんだし、流されずに生きてみなよ。じゃーね」
◇
◇
◇
「え?夢?」
ピチチチ…
窓から朝日が射し昨日の雨が嘘みたいに晴れていた。
庭の木々には昨日の雨の名残が残っていた。
玄関には父の姿はなかった。
「おはよう…お母さんは?」
「さぁ?」
「ったく〇〇さんは…」
「おじいちゃん、おはよう」
「あぁ…愛莉おはよう」
珍しく朝から母の姿を見ずに学校へ行った。
「愛莉、またねー」
「またねー」
学校を終え帰宅すると母が慌て大きなカバンを持って出るところだった。
「お母さん、出掛けるの?」
「詳しい事は、後から話すから」
そう言って車に乗り込み走り去っていった。
夜になって食卓を囲むと母が突然立ち上がり頭を下げた。
「お母さん?」
「お義父さん、お義母さん。愛莉…もう一度お父さんを家に迎えてちょうだい。お願いします」
「〇〇さん!何を言ってるんだ‼︎あいつは貴女を傷つけたやつじゃ無いか‼︎我が息子でも許さん」
「お義父さん、そこを何とか…あの人にチャンスをください」
父は、先日の雨で体を壊し入院し、住んでいたアパートは生活できる状態では無かった事を話す。
懸命な母の説得に祖父も折れた。
「〇〇さんの好きなようにしなさい」
1週間後、父は退院して自宅に帰って来たが、私と兄達は受け入れずにいた。
父の行動と前世の犯してきた自身の過ちを見つめ直しながら私は、大切に生きようと決めた。
「親父、お袋、〇〇…もう二度と同じ過ちを犯しません許してください」
「お父さん…?」
「愛莉、放っておけ‼︎粗方、女にも捨てられ、帰る寄る辺も無くなったんだろ」
実際そうなのだ。
元秘書の女は間よくば母と私達を追い出し妻の座に就く予定が当てが外れ、自分達が追い出され「納得いかない‼︎」と腹を立て手切れ金を受け取り逃げたのだ。
もちろん女の妊娠はウソだった。
それに気付いた時には後の祭り…何もかも失った父が滑稽に見えた。
父は諦めずに毎日、毎日、決まった時間に土下座して謝る。
そんな父の姿を見て前世を思い出す。
シャルダンの時は国や民の事を顧みず、贅沢の限りを尽くした私達は,その国民達により2人仲良く処刑された…
他にも色々あったが、男爵未亡人の末路は今、振り返ると1番凄惨な物で思い出すだけで身震いする。
何としても今世は避けたいと願った。
「あっ…雨」
梅雨の終わりを告げる雨の様な強く激しい雨は窓を打ちつけ、バタバタと音を鳴らす。
父は相変わらず玄関の前で土下座をして動かず…
私はそんな姿の父を黙って見下ろした。
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「チートな愛莉に面白いコミック見つけたから読んでよ」
ゲームを進めた友人から、悪役令嬢側からの視点が描かれたコミックを手渡された。
「最近,流行っているんだよ♪」
数冊本を渡され。内容の殆どは悪役令嬢が転生者で破滅フラグを自ら回避したり、回避をされなくとも自身で新たな道を拓き活躍する話に私はハマった。
「転生ヒロインから堕とされた令嬢?タイトルが暗いなぁ…やっぱり破滅回避かな?」
嬉々として本を開き冒頭のページに衝撃を受けた。
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「〇〇令嬢、君が☆☆に対しての数々の嫌がらせは聞いている。性根が腐った君に、この国の未来の国母としては相応しくない,私はこの場を借りて、ここに〇〇令嬢との婚約を破棄し☆☆令嬢と新たな婚約を結ぶ事にした」
声高らかに私の婚約者は、あれほど諌めた☆☆令嬢の肩を抱きしめ私に婚約破棄を宣言した。
確かに☆☆令嬢に、キツく当たったのは認める。
だけど、それは彼等の為であり、決して自分の私利私欲ではなかった…
「お待ちください◇◇様‼︎私は☆☆令嬢に危害など加えてません‼︎」
「キャっ◇◇様ぁ。〇〇さんが私を睨んで怖いっ…」
カタカタと態とらしく震えて見せ☆☆令嬢は◇◇の腕に絡みつく…
「〇〇‼︎見苦しいぞ‼︎その嫉妬に狂った貴様なぞ見たくない‼︎この国から出て行け‼︎」
激昂して冷たく見下ろす彼の腕に中で☆☆は、ニンマリと口角を上げ〝ざまぁ〟と小さく声なく唇を動かした…私はこの時、初めて彼女の策略で王太子の婚約者の座から引き摺り下ろされたことを知る。
婚約破棄をされた私は〝役立たず〟と言われ、親からも放逐された。
行くあてもないまま、この先、どう生きようか考え倦ねる。
貴族の結婚は政治的な事で執り行われ私は、幼い頃から王太子妃教育を受け、将来、◇◇様を支えるべくして育てられたのだ。
王国の〝昏い過去〟〝秘密〟を知る私は邪魔な存在になる…
あぁ私を殺しに国の暗部が私を追ってきた…
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「何コレ?」
想像しなくとも分かる情景、貴族としてのあり方を事細かく説明されていた、その本を読み進める。
ストーリーは、野心家の公爵の娘として生まれた〇〇は父の念願で次期王太子になる◇◇と婚約関係を結ぶ。
聡い彼女は公爵家の為、この国の為と只管、厳しい王妃教育の他にも諸外国の情勢を自ら学び、孤児院に慰問、寄付とボランティア活動を行う、まさに〝淑女の鑑〟の〇〇。
王太子◇◇と共に国を支える〝同志〟として、そして〝婚約者〟としての小さな恋心を彼女は抱いていた。
学園生活に慣れた頃に☆☆が編入生で入ってから彼女の学園生活と、そして婚約者◇◇の関係が一変する。
◇◇に抱いていた恋心は☆☆への嫉妬に変わり、彼女は「☆☆令嬢、◇◇様と私は婚約関係です。距離を弁えなさい」とキツく言った。
彼女が☆☆にした仕打ちはマナーがなってない事など貴族令嬢として当たり前の事を「貴族として生まれながら、そんな事も出来ない、知らないなんて恥ずかしいと思わないの?」と吐き捨てたぐらい。
しかし、この☆☆は転生者で〇〇達は☆☆が前世にプレイしていたゲームの駒でしかなかった事を誰も知らない…
この後、彼女は暗部に捕まり純血を奪われ散々甚振られた後、惨殺され叢に捨てられる…
命の灯火が消え入ろうとする彼女は〝何もしないまま死ぬなんてイヤ!生きたい!〟と強く願ったら、暗部から逃げているところから生き直す。
命辛々逃げ延びた〇〇は隣国にある娼館の大元締めに拾われた。
大元締めから「〇〇お嬢様よ、体を売る覚悟はあるか?」貴族令嬢として、元王太子の婚約者として育った彼女に身分の低い男達と肌を重ねるのは死ぬ程辛いものかもしれないのに、彼女は「元婚約者◇◇、そして自身を陥れた☆☆に一矢でも報い達成する為に、この身が必要なら捧げます」彼女の並々ならぬ覚悟に私は胸を打たれた。
彼女は娼婦達から様々な手技を学び肌を重ねても乙女を保ったまま2年経たずにして高級娼婦のトップになる。
彼女は娼館で学んだ手練手管と幼き頃より培ってきた情報収集力を駆使して人脈を広げ、元々小競り合いが起きていた隣国に戦争を持ち掛け、◇◇と☆☆の結婚式の日に奇襲攻撃の手綱を取り元自国を潰した。
☆☆は「エンディングに、こんなのは無かった」と泣き叫びながら奴隷へと堕ち、国を潰した〇〇は〝勝利の女神〟と称賛されたが、元自国では〝国を陥れた売女〟と言われた。
彼女自身は「私の自己満足の復讐は終わりました。生きる目的はありません」そう言って谷底に身を投げ、物語は終わる。
流石に〝ざまぁ〟とは言わなかったが婚約者がいる相手から奪った私は、この☆☆そのもの…そして〇〇令嬢は…リジイア様。
あのパーティで彼女は無理矢理、取り押さえられた際、上半身裸になってしまい、恥じて自ら命を絶たれた…
本を通して私は、自分のしたいままに振る舞った結果、数々の人を傷つけただけで無く、死なせてしまったことに気付く。
「あぁぁ…私はなんて事をしてしまったの…」
一瞬で足元が震える。
気が遠くなるくらいに、過ぎた年月。
取り返すことすら出来ない、赦しを乞うことさえ叶わない…
玄関で赦しを乞い、土下座する父は、まだマシなんだと思った。
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「…ん?ここは…」
「また会えたねー。久しぶりが正しい?時の概念が無いから分かんないけど♪」
「狭間の神さま?」
「へぇ覚えてたんだー」
相変わらず水色の髪色に美しい顔立ちの狭間の神が顔を覗き込む…
神様だから歳を取らないのか姿形は変わらない。
「なんか色々考えているみたいだけど、前世に比べたら少しマシになったねー少しだよ!す.こ.し」
軽く握り拳を作り、人差し指と親指だけ指を伸ばして見せる。
「あのっ。狭間の神様‼︎リジイア様は転生しているの?」
もし、同じ世界に生きているなら、会いたい…謝りたい…その思いが私を支配するが…
「君をこの輪廻に縛りつけるために魂はおろか存在すらしないよ」
狭間の神が放った言葉に私は絶望した。
「そんな…」
「君を恨んでいたが、君を救いたかったのかもしれないね。君が過ちに気付いた時点で君の魂は自由。まぁ遅過ぎたけどね」
「遅過ぎ…?」
「まんまの意味だよー。もう君の魂も今世で終わりって事。まぁ呪いも解けたんだし、流されずに生きてみなよ。じゃーね」
◇
◇
◇
「え?夢?」
ピチチチ…
窓から朝日が射し昨日の雨が嘘みたいに晴れていた。
庭の木々には昨日の雨の名残が残っていた。
玄関には父の姿はなかった。
「おはよう…お母さんは?」
「さぁ?」
「ったく〇〇さんは…」
「おじいちゃん、おはよう」
「あぁ…愛莉おはよう」
珍しく朝から母の姿を見ずに学校へ行った。
「愛莉、またねー」
「またねー」
学校を終え帰宅すると母が慌て大きなカバンを持って出るところだった。
「お母さん、出掛けるの?」
「詳しい事は、後から話すから」
そう言って車に乗り込み走り去っていった。
夜になって食卓を囲むと母が突然立ち上がり頭を下げた。
「お母さん?」
「お義父さん、お義母さん。愛莉…もう一度お父さんを家に迎えてちょうだい。お願いします」
「〇〇さん!何を言ってるんだ‼︎あいつは貴女を傷つけたやつじゃ無いか‼︎我が息子でも許さん」
「お義父さん、そこを何とか…あの人にチャンスをください」
父は、先日の雨で体を壊し入院し、住んでいたアパートは生活できる状態では無かった事を話す。
懸命な母の説得に祖父も折れた。
「〇〇さんの好きなようにしなさい」
1週間後、父は退院して自宅に帰って来たが、私と兄達は受け入れずにいた。
父の行動と前世の犯してきた自身の過ちを見つめ直しながら私は、大切に生きようと決めた。
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