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貴公子は黒の魔術師に落胆する(エミールside)

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アドルフとご飯に行った翌日、俺は魔術師団の本部で会議に参加していた。

長ったらしい会議を終えて、首をポキポキ鳴らしながら遅めのランチを取ろうと食堂に向かう。

と、通信用の魔具であるエメラルドを嵌め込んだブレスレットが、メッセージの着信を告げる。

誰だろう?と相手を確認すると、ハンナちゃんだった。

昨日アドルフに、生活魔術用の魔石を作ってくれと急に頼まれた。

何でアドルフがそんなものを欲しがるのかわからなかったが、何となく勘が働いて、ハンナちゃんに連絡してみれば、

アドルフとの話を引き伸ばすために、生活魔術が不安定で使えない、と嘘を吐いてしまったとのことだった。

何となく微笑ましくなって、そこから俺は急ピッチで魔石を作った。

魔石づくりは、丁度良い石を探すのが一番大変で、魔力を込めるのは、魔術師団所属の魔術師であればそう造作はない。

多分ハンナちゃんは魔石を使うことはないだろうけど、
アドルフが初めて渡すプレゼントなのだからと、魔石を専門に作成する部署で良さげな石を見繕ってもらい、自ら魔力を込める。

夜アドルフに会った際に魔石を渡し、ハンナちゃんに宜しく、と伝えれば、やはり否定はしなかった。

なのでこの連絡は、魔石を受け取ったハンナちゃんからのお礼か何かだろうと推察し、
メッセージを開いた。

案の定、メッセージは魔石のお礼と共に始まった。
だが、次の一文に首をかしげる。

"エルンストさんに誤解されてしまいました"

ーどんな誤解?

時計を見れば、まだ昼休みの時間帯だったので、ハンナちゃんに通信を繋ぐ。

「誤解って?何があったの?」

聞けば、自分のためにアドルフが魔石を手配してくれたのが嬉しくて喜んでいたのに、
俺の手作りだから喜んでいる、と勘違いされたらしい。

しかも彼女に、エミールのことが好きなのか?とも聞いたとのことだ、、

ーえ?何言っちゃってんの?あいつ。

正直、23歳にもなる男の思考とは思えない。

が、あいつは魔術の腕は一流だが、
人の心の機微には超絶疎い。
なので、ストレートにものを言わないと伝わらない男でもある。

ハンナちゃんの微妙な態度に勘違いを起こしたのだろうが、それにしたって、、。

アドルフは多分ハンナちゃんのことが好きだ。

人の心にも疎いが、自分の心にも何かと疎い奴なので気付いてないみたいだが。

あいつが魔術師団に入ってから、何人かの女性魔術師があいつに言い寄るために、訓練を見てくれと近づいていた。
あいつはそれに応じて訓練を付けてやっていたが、スパルタ過ぎて誰も着いてこられなかった。

魔術師団に入れるくらいなのだから、皆優秀な魔術師だったのだが、アドルフとは格が違っていたのだ。

すぐに離れていく女性魔術師たちに別段落胆している素振りは無かったが、やはり少しばかり思うところはあったのだろう。

あいつのスパルタ指導にもめげず、毎日訓練に現れるハンナちゃんに、期待と信頼を寄せていると、俺の目からは判断出来た。

それに、あいつが人のために俺を頼ってくるなんて、昨日が初めてのことだ。

明らかに好意は抱いているだろう。


「はぁ~~。また一肌脱がなきゃなんないのかねぇ~。」


アドルフは天才と謳われているが、あれで大した苦労人だ。
幸せになって欲しいと思っている。

俺はため息を吐きつつ、かわいい弟(?)の為に次の作戦を考え始めた。





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