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黒の魔術師は己の使命を遂行する(09.29改稿)
しおりを挟むキャッ!と短い悲鳴を上げて、ハンナが足を滑らせた。
咄嗟に風の魔術の呪文を唱え、ハンナの体を宙に浮かす。
そのまま風の流れに乗せて、俺の側まで移動させた。
「言ったそばから何やってんだよ!昨日気をつけろって言ったばかりだろ?」
「ご、ごめんなさい。エルンストさん急いでそうだったから、つい。」
ハンナは申し訳なさそうに頭を下げる。
「まったく、ただでさえ授業に遅れそうなのに、手間かけさせやがって。」
「え!そうだったんですね!ほんとにごめんなさい!」
「とにかく今は時間が無いから、用あんだったら、昼休みに魔術準備室に来てくれ!じゃあな!」
俺はハンナの返事も待たずに、グラウンドへの道を走り出した。
*
結局授業には5分ほど遅れたが、
生徒たちは俺をなんとなく怖がっている節があるので、特に何も言われなかった。
なんとなく悪い気がして、いつもより甘めに指導をしておいた。
ただ、指導に夢中になるあまり、さっきハンナに言った言葉はすっかり忘れてしまっていた。
昼休み。
俺はいつも通り魔術準備室で昼食を食べる。
学校には一応学食もあるが、昼は大体混んでいるし、ブラウや他の女生徒たちがやたら話しかけてくるので、正直めんどくさくて、いつもここで過ごしている。
購買で買ったパンを食べていると、
コンコンッ!と、扉をノックする音が聞こえた。
本日2度目のこの音に、若干の恐怖を覚える。
この部屋を使う教師は何人かいるが、
ノックなんて律儀なことをする奴はいない。
よって、今扉の向こうにいるヤツは十中八九、魔術教師ではないだろう。
正直、返事はしたくない。
が、そんなわけにもいかないか、、
「どうぞ!」
スライド式の扉が、遠慮がちにそーっと開く。
ーまたあいつか!
今朝と同じ光景に、黒髪に青い瞳の悪魔のような少女の姿が思い浮かび、思わず扉を睨みつける。
と、扉を開けてこちらを覗きこんだのは、
ブラウではなく、ハンナだった。
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