2 / 19
黒の魔術師は悲鳴に戸惑う
しおりを挟む「大体、俺がニコニコ笑ってんのなんか、
見たことあるか?
期待しねぇだろ、普通。」
王国魔術師団で成果を挙げ、
黒髪、黒目の涼しげな顔立ちと、
笑わないクールな立ち振る舞いから
"黒の魔術師"と言われた人間に、
大した無茶振りである。
国の機関に良い結果を報告しなければ、
という気持ちがわからなくも無いが、
俺にとっては迷惑な事この上ない。
だが、校長直々に指導が入っているのだ、
来週から、多少なりとも頑張っているポーズは見せなければならないだろう。
「まったく、面倒くせぇ。」
怒りにまかせ二階の廊下をズンズン進み、
一階へと続く階段を駆け降りる。
一階の廊下の突き当たりにある昇降口を目指し、足早に歩く。
今日はいつになく疲れたし、
自炊はやめて、何か適当に買って帰ろう。
そう考えながら、廊下の中腹辺りを歩いていたその時だった。
「キャァーーーー!!!」
突然、若い女の悲鳴が直ぐそばの扉の中から聞こえて来る。
直後、ドサドサドサッッという、
何かが落ちる音も続く。
ー何事だ??
慌てて声の聞こえた扉を確認し、
思わず顔をしかめる。
"保健室"
何があったか分からないが、とりあえず、
嫌な予感しか感じない。
今日はもうそれでなくとも疲れている。
このまま無視をして、帰ってしまおう。
そう思い、立ち去ろうとした、が、
ーあまりにも、静かすぎやしないか?
部屋の中からその後、物置一つ聞こえてこない。
思わず不安になり、
慌てて木製の扉を横に引く。
ガラッッーー!!
しかしそこに広がる光景に、俺は言葉を失った。
目の前には、大きな段ボール箱と、
その中身であろう、医療用具が床一面に散乱し、
その傍らに若い女が一人、へたり込んでいた。
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
王命を忘れた恋
水夏(すいか)
恋愛
『君はあの子よりも強いから』
そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。
強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?
そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。
【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
夫は私を愛してくれない
はくまいキャベツ
恋愛
「今までお世話になりました」
「…ああ。ご苦労様」
彼はまるで長年勤めて退職する部下を労うかのように、妻である私にそう言った。いや、妻で“あった”私に。
二十数年間すれ違い続けた夫婦が別れを決めて、もう一度向き合う話。
【本編完結】若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
はづも
恋愛
本編完結済み。番外編がたまに投稿されたりされなかったりします。
伯爵家に生まれたカレン・アーネストは、20歳のとき、幼馴染でもある若き公爵、ジョンズワート・デュライトの妻となった。
しかし、ジョンズワートはカレンを愛しているわけではない。
当時12歳だったカレンの額に傷を負わせた彼は、その責任を取るためにカレンと結婚したのである。
……本当に好きな人を、諦めてまで。
幼い頃からずっと好きだった彼のために、早く身を引かなければ。
そう思っていたのに、初夜の一度でカレンは懐妊。
このままでは、ジョンズワートが一生自分に縛られてしまう。
夫を想うが故に、カレンは妊娠したことを隠して姿を消した。
愛する人を縛りたくないヒロインと、死亡説が流れても好きな人を諦めることができないヒーローの、両片想い・幼馴染・すれ違い・ハッピーエンドなお話です。
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
その眼差しは凍てつく刃*冷たい婚約者にウンザリしてます*
音爽(ネソウ)
恋愛
義妹に優しく、婚約者の令嬢には極寒対応。
塩対応より下があるなんて……。
この婚約は間違っている?
*2021年7月完結
私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです
こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。
まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。
幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。
「子供が欲しいの」
「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」
それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。
ある辺境伯の後悔
だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。
父親似だが目元が妻によく似た長女と
目元は自分譲りだが母親似の長男。
愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。
愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる