上 下
49 / 72
番外編Ⅱ:婚約者が青龍であることを隠してる

2.王都へ

しおりを挟む

 数日後、クリスティーナは迎えに来たブルクハルトと共に馬車にゆられていた。

 ティラノ王国の貴族は、王宮で行われるパーティに出席することで大人と認められる。二人とも今年が成人する年齢なので、成人を祝うパーティに出席するため、王都に向かっているのだ。

「迎えに来てくれてありがとう。本当の事を言うと、一人で王都に行くのは不安だったの」

 普通なら家族と向かうべきところだが、ドリコリン伯爵もガスパールも竜騎士なので忙しい。

 王都までは長旅だ。無理は言えないので、クリスティーナは一人で馬車に乗って向かうつもりでいた。もちろん、使用人たちはいるので、本当に一人というわけではない。何かあったときに、相談できる相手がいないのが不安だったのだ。

「伯爵に仕事が入った時点で、俺に言うべきだったと思うぞ」

「うん、ごめんね」

 最近はブルクハルトも会う時間がないくらい忙しく働いている。だから、青龍になって向かうと思って遠慮してしまったのだ。馬車で行くより龍の方が断然早い。

「お父様に感謝しないといけないわね」

 ドリコリン伯爵はクリスティーナの気持ちを汲んで、ブルクハルトに頼んでくれた。一人旅の不安も解消され、パーティ会場でしか会えないと思っていたブルクハルトとともに過ごせるのは嬉しい。

「俺も伯爵に感謝しないといけないな。今度同じようなことがあれば、遠慮せずに言えよ。ティーナに一人旅なんてさせたくない」

「うん、ありがとう」

 クリスティーナが素直にお礼を言うと、ブルクハルトは安心したようにクリスティーナの髪を撫でる。ブルクハルトはいつでも優しい。今回も遠慮せずに相談するべきだったと分かっている。

 それでも、どこか甘えきれなかったのには理由がある。

 ブルクハルトは青龍の秘密について、未だにクリスティーナに話してくれていないのだ。

 クリスティーナもブルクハルトに無理やり喋らせたいわけではない。でも、早く話してほしいというのが本音だ。長い付き合いなのに隠され続けている事実が、ブルクハルトに信頼されていないことの証明のように感じて、クリスティーナを不安にさせる。

 それでも婚約者のいる他の貴族令嬢と同じように、成人してすぐに結婚することが決まっていたなら、こんな気持ちにはなっていないと思う。

 ブルクハルトは、なぜか結婚の日取りを二年後に指定しているのだ。クリスティーナとの結婚をできるだけ先送りにしたいのだろうか? そうとしか思えなくて、心がざわつく。

『竜騎士になれば会えるんじゃないか?』

 子供の頃、青龍に会いたいと言ったクリスティーナに、ブルクハルトはそんなことを言っていた。竜騎士になれば秘密を教えてもらえるかもしれない。あの頃もそんなふうに思っていたが、本当に竜騎士選定試験を受けることになるとは思わなかった。

「なんで話してくれないの?」
 
 クリスティーナは無意識にボソリと呟く。ブルクハルトには聞こえなかったようで、不思議そうな顔でこちらを見ていた。聞こえなくて良かったような、聞こえていてほしかったような複雑な気持ちになる。

「どうした?」

 ブルクハルトに問いかけられて、クリスティーナは小さく首を振る。クリスティーナは眠くなったふりをして、ブルクハルトの肩に寄りかかった。思いっきり甘えて安心したいのに、他に良い方法が思いつかない。

「ティーナ、眠いからって無防備すぎるぞ。今は俺しかいないから良いが、他の男に寄りかかるなよ」

「分かってるわよ」

 ブルクハルトはズレた説教をしながら、クリスティーナの肩を抱く。クリスティーナが甘えたいと思っていることなんて想像もしていないのだろう。

「体調が悪いわけではないよな?」

「眠いだけよ」

 クリスティーナは眠くもないのに瞳を閉じる。ブルクハルトはクリスティーナの感情に敏感で、困っているとすぐに気がついていつでも助けてくれる。それなのに何故かクリスティーナがブルクハルトに向ける特別な気持ちにだけは鈍感だ。

「寒くないか? 馬車に酔ったら、我慢せずにすぐ言えよ」

「うん。大丈夫」

 ブルクハルトはひざ掛けを用意したり、甲斐甲斐しく世話をしてくれている。クリスティーナは自分の気持ちに気づいてほしいとまでは言えなくて、ブルクハルトの優しさに黙って甘えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私の敬愛するお嬢様は、天使の様な悪女でございます。

芹澤©️
恋愛
私がお仕えしておりますアリアナ様は、王太子殿下の婚約者で優秀な御令嬢でございます。容姿端麗、勉学も学年で上位の成績。そして何より天真爛漫で、そこが時折困りますが、それもまた魅力的な方でございます。 けれど、二つ年上の王太子殿下はアリアナ様ではなく、一般家庭出の才女、ミレニス嬢と何やら噂になっていて…私の敬愛するお嬢様に何たる態度!けれども、アリアナ様はそんな王太子殿下の行動なんて御構い無しなのです。それは純真さがさせるのか、はたまた…? 私の中では王太子殿下の好感度はごっそり削られているのですが…私は何処までもお嬢様について参ります!!

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

いつかの空を見る日まで

たつみ
恋愛
皇命により皇太子の婚約者となったカサンドラ。皇太子は彼女に無関心だったが、彼女も皇太子には無関心。婚姻する気なんてさらさらなく、逃げることだけ考えている。忠実な従僕と逃げる準備を進めていたのだが、不用意にも、皇太子の彼女に対する好感度を上げてしまい、執着されるはめに。複雑な事情がある彼女に、逃亡中止は有り得ない。生きるも死ぬもどうでもいいが、皇宮にだけはいたくないと、従僕と2人、ついに逃亡を決行するのだが。 ------------ 復讐、逆転ものではありませんので、それをご期待のかたはご注意ください。 悲しい内容が苦手というかたは、特にご注意ください。 中世・近世の欧風な雰囲気ですが、それっぽいだけです。 どんな展開でも、どんと来いなかた向けかもしれません。 (うわあ…ぇう~…がはっ…ぇえぇ~…となるところもあります) 他サイトでも掲載しています。

「お前を愛するつもりはない」な仮面の騎士様と結婚しました~でも白い結婚のはずなのに溺愛してきます!~

卯月ミント
恋愛
「お前を愛するつもりはない」 絵を描くのが趣味の侯爵令嬢ソールーナは、仮面の英雄騎士リュクレスと結婚した。 だが初夜で「お前を愛するつもりはない」なんて言われてしまい……。 ソールーナだって好きでもないのにした結婚である。二人はお互いカタチだけの夫婦となろう、とその夜は取り決めたのだが。 なのに「キスしないと出られない部屋」に閉じ込められて!? 「目を閉じてくれるか?」「えっ?」「仮面とるから……」 書き溜めがある内は、1日1~話更新します それ以降の更新は、ある程度書き溜めてからの投稿となります *仮面の俺様ナルシスト騎士×絵描き熱中令嬢の溺愛ラブコメです。 *ゆるふわ異世界ファンタジー設定です。 *コメディ強めです。 *hotランキング14位行きました!お読みいただき&お気に入り登録していただきまして、本当にありがとうございます!

異世界で王城生活~陛下の隣で~

恋愛
女子大生の友梨香はキャンピングカーで一人旅の途中にトラックと衝突して、谷底へ転落し死亡した。けれど、気が付けば異世界に車ごと飛ばされ王城に落ちていた。神様の計らいでキャンピングカーの内部は電気も食料も永久に賄えるられる事になった。  グランティア王国の人達は異世界人の友梨香を客人として迎え入れてくれて。なぜか保護者となった国陛下シリウスはやたらと構ってくる。一度死んだ命だもん、これからは楽しく生きさせて頂きます! ※キャンピングカー、魔石効果などなどご都合主義です。 ※のんびり更新。他サイトにも投稿しております。

悪役令嬢ですが、ヒロインの恋を応援していたら婚約者に執着されています

窓辺ミナミ
ファンタジー
悪役令嬢の リディア・メイトランド に転生した私。 シナリオ通りなら、死ぬ運命。 だけど、ヒロインと騎士のストーリーが神エピソード! そのスチルを生で見たい! 騎士エンドを見学するべく、ヒロインの恋を応援します! というわけで、私、悪役やりません! 来たるその日の為に、シナリオを改変し努力を重ねる日々。 あれれ、婚約者が何故か甘く見つめてきます……! 気付けば婚約者の王太子から溺愛されて……。 悪役令嬢だったはずのリディアと、彼女を愛してやまない執着系王子クリストファーの甘い恋物語。はじまりはじまり!

この度、青帝陛下の番になりまして

四馬㋟
恋愛
蓬莱国(ほうらいこく)を治める青帝(せいてい)は人ならざるもの、人の形をした神獣――青龍である。ゆえに不老不死で、お世継ぎを作る必要もない。それなのに私は青帝の妻にされ、后となった。望まれない后だった私は、民の反乱に乗して後宮から逃げ出そうとしたものの、夫に捕まり、殺されてしまう。と思ったら時が遡り、夫に出会う前の、四年前の自分に戻っていた。今度は間違えない、と決意した矢先、再び番(つがい)として宮城に連れ戻されてしまう。けれど状況は以前と変わっていて……。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...