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〈番外編〉皇太子殿下の苦悩
17.延期
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「賭博場の摘発は延期しよう」
ジェラルドは執務用の椅子に座り、部屋にいるミカエルとヴィクトルに伝えた。アメリアの失踪を知ってから1ヶ月。隠密部隊には皇弟の協力者にも広げて捜索をして貰っているが何の手がかりも掴めていない。
予定では10日後に賭博場の摘発を行うつもりだった。開催1週間前に配られる招待券をルイスが手に入れ、警備騎士団から人員を選定する。中止するならぎりぎりのタイミングだ。
「本気で言っているの? 賭博場が開かれるのは月に数回しかないんだよ」
ミカエルは仕事の手を止めてジェラルドのところまでやってきた。
「俺は本気だ。まだアメリアの捜索を終えていない場所もある。それが終わるまでは相手を刺激するような事はしたくない」
「でも、ヴィクトルさんも辺境伯軍の人もアメリアは囚われているんじゃなくて、自ら隠れているって言ってるんだよ」
ミカエルは賭博場摘発を終えることにより、敵対している勢力を減らし、今後アメリアが皇弟の仲間に見つかる可能性を減らす方が有効だと考えているようだ。確かに捕まっていないなら、なるべく早く全てを解決し、安全だから出てくるようにとアメリアに呼びかける方が確実だ。しかし……
「アメリアが囚われていないなら、なぜ俺に連絡してこない? 辺境伯領や辺境伯家の王都の屋敷に連絡してこない? おかしいだろ?」
「……」
ミカエルもそれについては疑問に思っているのだろう。黙って考え始めてしまった。
「ジェラルド、待てるとしても武器倉庫の摘発予定日までだよ。倉庫の件はかなりの人数が関わるし、何よりサモエド侯爵の不在をそんなに隠し続ける事は不可能だもん」
武器倉庫の摘発は1ヶ月後を予定している。王都の倉庫は騎士団が、国境の倉庫は辺境伯軍が担当する事が決まっている。
賭博場摘発とは規模が違う。それを延期することは事件解決を考えるとほぼ不可能だった。
「分かっている。それまでにアメリアを見つかることを信じるしかないな」
ジェラルドは机の上の書類へと視線を戻した。時間に余裕ができるとアメリアの事が気になって仕方ない。ジェラルドは寝る間も惜しんで仕事に励んだ。いくらでも仕事がある事が今のジェラルドにとっては唯一の救いだった。
ジェラルドは執務用の椅子に座り、部屋にいるミカエルとヴィクトルに伝えた。アメリアの失踪を知ってから1ヶ月。隠密部隊には皇弟の協力者にも広げて捜索をして貰っているが何の手がかりも掴めていない。
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「でも、ヴィクトルさんも辺境伯軍の人もアメリアは囚われているんじゃなくて、自ら隠れているって言ってるんだよ」
ミカエルは賭博場摘発を終えることにより、敵対している勢力を減らし、今後アメリアが皇弟の仲間に見つかる可能性を減らす方が有効だと考えているようだ。確かに捕まっていないなら、なるべく早く全てを解決し、安全だから出てくるようにとアメリアに呼びかける方が確実だ。しかし……
「アメリアが囚われていないなら、なぜ俺に連絡してこない? 辺境伯領や辺境伯家の王都の屋敷に連絡してこない? おかしいだろ?」
「……」
ミカエルもそれについては疑問に思っているのだろう。黙って考え始めてしまった。
「ジェラルド、待てるとしても武器倉庫の摘発予定日までだよ。倉庫の件はかなりの人数が関わるし、何よりサモエド侯爵の不在をそんなに隠し続ける事は不可能だもん」
武器倉庫の摘発は1ヶ月後を予定している。王都の倉庫は騎士団が、国境の倉庫は辺境伯軍が担当する事が決まっている。
賭博場摘発とは規模が違う。それを延期することは事件解決を考えるとほぼ不可能だった。
「分かっている。それまでにアメリアを見つかることを信じるしかないな」
ジェラルドは机の上の書類へと視線を戻した。時間に余裕ができるとアメリアの事が気になって仕方ない。ジェラルドは寝る間も惜しんで仕事に励んだ。いくらでも仕事がある事が今のジェラルドにとっては唯一の救いだった。
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