【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った

〈番外編〉皇太子殿下の苦悩

5.膠着

　1週間後からジェラルドはシャルト学園に通い始めた。学生とはいえ貴族のみが通うこの学園で気を抜くことはジェラルドには許されない。きちんと皇太子らしく振る舞い人脈を広げていった。

　ジェラルドにとってアメリアがいない学園で唯一気を許して話せるのはミカエルだけだった。

　ミカエルはアメリアが襲われた事実を知った頃から少しずつ変わっていった。甘えがなくなりジェラルドと対等に渡り合おうと努力している。幼馴染に命の危険が生じた事実はジェラルドだけでなくミカエルにも影響を与えたということだろう。

　影武者はさすが辺境伯軍の特殊部隊といったところで本物のアメリアの友人もいる中で問題なく振る舞っている。ジェラルドには誰が影武者である事を知っているのかも知らされる事はなかった。アメリアが戻ってきたときのため、なるべく深い関係にならないように、かと言って不快にさせないように絶妙なバランスを保っている。

　ただ、ジェラルドとは本物と同様に接するとなると負担が大きい。それだけアメリアとジェラルドは親密な関係だったとジェラルドも自負している。婚約者として適度な距離を保っているうちに政略的婚約なのだと周りが認識しだした事は少しだけ不満だった。




　事件については学園に入って2年がたっても大きな進展はなかった。

　今だ武器密輸への関与が明確ではないサモエド侯爵については、直接ではなく王宮に提出されている侯爵領の資料などから罪を犯していないか調べてみた。しかし、みつかるのは謹慎で済ませられる程度の小さなことばかりで強制捜査できるような不正はみつけられなかった。

　別件だとしても領地や屋敷へ捜査に入る事ができれば何か出てくる可能性が高い。しかし、その線からもサモエド侯爵に近づいていく事は叶わなかった。