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4.安らげる場所
8.馬車
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― 1週間後 ―
アメリアは賭博事件の摘発のため、男爵令嬢のようなドレスを着て馬車に乗っていた。
(確かに、騎士団の仕事は最後までやりたいって言ったけど……、なんでこんなことになっちゃったのかな?)
アメリアは隣に座るジェラルドを盗み見た。
ジェラルドが来ている服は、普段のジェラルドの服装より質が落ちるので、男爵家の子息に見えないこともない。ジェラルドのサラサラの銀髪も鬘をかぶって隠しているため問題にならないだろう。しかし、キラキラした黄金色の瞳は、隠す術もなく王族であることを強く主張していた。
(仮面をつけたら、皇太子らしさは消えるのかしら?)
アメリアは優雅に座るジェラルドを無意識に見つめた。
「アメリア、どうした?」
ジェラルドが視線に気がついて、アメリアの頬を撫でる。
「わざわざジェラルドが来なくても良かったのに。あなたがいると近衛騎士が大変でしょ。」
「問題ない。今日の俺は貴族のジョージだからな。アメリアはリアでいいよな。リアのエスコートを他の男に任せるわけにはいかないだろ。ミカエルたちが入ってくるまでの時間は普通に楽しもうな。」
頬に触れていたジェラルドの手がアメリアの唇をなぞる。ジェラルドの整った美しい顔がアメリアに近づいてくる。アメリアはそっと瞳を閉じて……
コホン
「再会して嬉しいのは分かるけど、僕もいることを忘れないでよ。ジェラルド、黙って聞いていれば潜入先で楽しもうとか、本当にやめてよね。潜入するなら真面目にやってよ。アメリアも頼むよ。」
ミカエルが睨みつけるようにジェラルドとアメリアを見てくる。
「ミカエルがジェラルドに意見するなんて、はじめて見たかも。」
アメリアは顔を赤くしながら誤魔化すように笑った。
「最近では普通だぞ。ミカエルはうるさい。」
ジェラルドは憎たらしいくらい平然としている。
「いつまでも、ジェラルドとアメリアにからかわれてた頃の僕だと思わないでよね。ジェラルドが暴走したとき、止められるのは僕だけなんだから。」
ミカエルは大型犬のような人懐っこい顔をしてプリプリ怒っている。
アメリアは3年の月日の長さを感じた。ここにいる仲間で、いずれはこの国を背負っていくのだ。アメリアも真剣に考えていかなくてはいけない。
「だいたいヴィクトルさんが止めてくれれば、僕が小言を言わなくて済むのに……。アメリアが絡むと、ヴィクトルさんまで使えなくなる。」
ミカエルがちらりと横をみる。ミカエルの隣に座るヴィクトルは、何も聞こえていないかのように、閉められたカーテンの隙間から外を見ていた。
ジェラルドと再会した日、執務室に戻ってきたヴィクトルは、ものすごく長い説教をしてアメリアを震え上がらせたが、今は優しい兄に戻っている。たぶん。
(怒らせてないよね?)
アメリアは恐る恐るヴィクトルを見つめる。
「もうすぐ着きますよ。」
3人の会話に加わることもなくヴィクトルが淡々と言った。その様子にアメリアはそっと息を吐く。
「じゃあ、ジェラルドとアメリア。あんまり張り切らないで行ってきてね。」
ミカエルは頷きにくい事を言って2人を促す。
アメリアを含む3組のカップル(アメリア以外はすべて男)が先に潜入し、ミカエルたちが、あとから摘発しに入ってくることになっている。潜入するメンバーは逃げ出す者をおさえる役割を果たす。
アメリアはジェラルドに渡された仮面を付ける。それを見届けるとジェラルドも優雅に仮面を付けた。
ジェラルドは何をさせても動作が美しい。アメリアは仮面をつけたジェラルドに、ちょっとだけ見惚れてしまった。
アメリアは賭博事件の摘発のため、男爵令嬢のようなドレスを着て馬車に乗っていた。
(確かに、騎士団の仕事は最後までやりたいって言ったけど……、なんでこんなことになっちゃったのかな?)
アメリアは隣に座るジェラルドを盗み見た。
ジェラルドが来ている服は、普段のジェラルドの服装より質が落ちるので、男爵家の子息に見えないこともない。ジェラルドのサラサラの銀髪も鬘をかぶって隠しているため問題にならないだろう。しかし、キラキラした黄金色の瞳は、隠す術もなく王族であることを強く主張していた。
(仮面をつけたら、皇太子らしさは消えるのかしら?)
アメリアは優雅に座るジェラルドを無意識に見つめた。
「アメリア、どうした?」
ジェラルドが視線に気がついて、アメリアの頬を撫でる。
「わざわざジェラルドが来なくても良かったのに。あなたがいると近衛騎士が大変でしょ。」
「問題ない。今日の俺は貴族のジョージだからな。アメリアはリアでいいよな。リアのエスコートを他の男に任せるわけにはいかないだろ。ミカエルたちが入ってくるまでの時間は普通に楽しもうな。」
頬に触れていたジェラルドの手がアメリアの唇をなぞる。ジェラルドの整った美しい顔がアメリアに近づいてくる。アメリアはそっと瞳を閉じて……
コホン
「再会して嬉しいのは分かるけど、僕もいることを忘れないでよ。ジェラルド、黙って聞いていれば潜入先で楽しもうとか、本当にやめてよね。潜入するなら真面目にやってよ。アメリアも頼むよ。」
ミカエルが睨みつけるようにジェラルドとアメリアを見てくる。
「ミカエルがジェラルドに意見するなんて、はじめて見たかも。」
アメリアは顔を赤くしながら誤魔化すように笑った。
「最近では普通だぞ。ミカエルはうるさい。」
ジェラルドは憎たらしいくらい平然としている。
「いつまでも、ジェラルドとアメリアにからかわれてた頃の僕だと思わないでよね。ジェラルドが暴走したとき、止められるのは僕だけなんだから。」
ミカエルは大型犬のような人懐っこい顔をしてプリプリ怒っている。
アメリアは3年の月日の長さを感じた。ここにいる仲間で、いずれはこの国を背負っていくのだ。アメリアも真剣に考えていかなくてはいけない。
「だいたいヴィクトルさんが止めてくれれば、僕が小言を言わなくて済むのに……。アメリアが絡むと、ヴィクトルさんまで使えなくなる。」
ミカエルがちらりと横をみる。ミカエルの隣に座るヴィクトルは、何も聞こえていないかのように、閉められたカーテンの隙間から外を見ていた。
ジェラルドと再会した日、執務室に戻ってきたヴィクトルは、ものすごく長い説教をしてアメリアを震え上がらせたが、今は優しい兄に戻っている。たぶん。
(怒らせてないよね?)
アメリアは恐る恐るヴィクトルを見つめる。
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「じゃあ、ジェラルドとアメリア。あんまり張り切らないで行ってきてね。」
ミカエルは頷きにくい事を言って2人を促す。
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アメリアはジェラルドに渡された仮面を付ける。それを見届けるとジェラルドも優雅に仮面を付けた。
ジェラルドは何をさせても動作が美しい。アメリアは仮面をつけたジェラルドに、ちょっとだけ見惚れてしまった。
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