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2.王都
3.指輪
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あれは3年半ほど前、アメリアが14歳の冬の出来事だった。
珍しくアメリアの乗った馬車が渋滞にでも巻き込まれたのか中々進まず、ジェラルドとの約束に遅れて王宮についた。ジェラルドは誰かと謁見しているようで、アメリアは王宮の中庭でジェラルドの手が空くのを待っていた。
寒い季節だというのに、王宮の中庭には美しい花が咲いている。庭師が毎日時間をかけて手入れしているのだろう。王宮の中庭はあまり人の姿もなく、のんびりとした時間が流れていた。アメリアは特に目的もなく目についた花を愛でながら時間を過ごす。
アメリアがしばらく中庭を散歩しているとアメリアと同じくらいの年頃の男の子たちが数人現れ、アメリアに近づいてきた。
「……と申します。お名前をお伺いしてもよろしいですか、ご令嬢?」
可愛いですねとかミルクティー色の髪が素敵だとか口々に言われてアメリアは頬を染める。
同い年で幼馴染のジェラルドや公爵令息ミカエル以外の同世代の貴族令息と話をする事なんて、アメリアには今までなかった。あと数ヶ月したら入学する学園で会うかもしれない。アメリアは緊張しながら挨拶した。
「ペンブローク辺境伯の娘、アメリア・ペンブロークと申します。よろしくお願いします。」
きちんとマナー通りの挨拶をしたはずなのに、それまで笑顔で会話をしていた令息たちの顔が青くなってしまっている。アメリアはその異様な様子に戸惑った。
「ア、アメリア嬢、私達は用事があるのでそろそろ失礼します。」
アメリアが返事をする前に、彼らはさっと足早に歩きさってしまう。何か悪い事をしただろうか? 貴族令息たちの後ろ姿を見ながらアメリアが悩んでいると後ろから声がかけられた。
「アメリア、何を話してたんだ?」
振り返ると不機嫌そうなジェラルドが立っていた。ジェラルドは普段のラフな姿ではなく、きちんと皇太子らしい正装をしている。謁見のあとそのまま来たのかもしれない。
「挨拶しただけよ。それより私、失礼な事しちゃったかな? 急にみんな帰っちゃったの。」
アメリアは悲しくなってシュンとする。初対面だったのに嫌われてしまうなんて今までそんな事はなかった。アメリアはきちんと挨拶したつもりだったのに、何が問題だったのだろう。
「あんな奴らの事なんて気にすることないだろ。」
「もう、真面目に聞いたのに。」
アメリアはジェラルドの黄金色の瞳を睨みつける。
「気になるなら追いかければいいだろ。俺には関係ない。」
ジェラルドがプイっとアメリアに背中を向けて歩き出した。
「せっかくジェラルドに会いに来たのにどこに行くのよ。約束に遅れた事怒ってるの?」
理由はよく分からないが、ジェラルドの機嫌が悪い。アメリアは戸惑いながら、王宮に向けて歩いていくジェラルドの後を追いかけた。
数週間後、再び会ったジェラルドはアメリアに指輪を贈ってくれた。
ジェラルドの色である金と銀が、アメリアの瞳の色とよく似たアメジストを守るようにデザインされた指輪。アメリアはジェラルドのものだと主張するようなデザインだ。その指輪を見てアメリアはあの日ジェラルドが怒っていた理由を理解した。
「別に深い意味はない。」
不機嫌そうに言ったジェラルドだったが、アメリアに触れる手はとても優しかった。
アメリアには、あの瞬間に嘘があったとはとても思えない。
会えなかった3年の間にジェラルドにいったい何があったのだろう。アメリアは2人の絆の証である指輪に触れながら、ジェラルドを想って声を殺して静かに泣いた。
珍しくアメリアの乗った馬車が渋滞にでも巻き込まれたのか中々進まず、ジェラルドとの約束に遅れて王宮についた。ジェラルドは誰かと謁見しているようで、アメリアは王宮の中庭でジェラルドの手が空くのを待っていた。
寒い季節だというのに、王宮の中庭には美しい花が咲いている。庭師が毎日時間をかけて手入れしているのだろう。王宮の中庭はあまり人の姿もなく、のんびりとした時間が流れていた。アメリアは特に目的もなく目についた花を愛でながら時間を過ごす。
アメリアがしばらく中庭を散歩しているとアメリアと同じくらいの年頃の男の子たちが数人現れ、アメリアに近づいてきた。
「……と申します。お名前をお伺いしてもよろしいですか、ご令嬢?」
可愛いですねとかミルクティー色の髪が素敵だとか口々に言われてアメリアは頬を染める。
同い年で幼馴染のジェラルドや公爵令息ミカエル以外の同世代の貴族令息と話をする事なんて、アメリアには今までなかった。あと数ヶ月したら入学する学園で会うかもしれない。アメリアは緊張しながら挨拶した。
「ペンブローク辺境伯の娘、アメリア・ペンブロークと申します。よろしくお願いします。」
きちんとマナー通りの挨拶をしたはずなのに、それまで笑顔で会話をしていた令息たちの顔が青くなってしまっている。アメリアはその異様な様子に戸惑った。
「ア、アメリア嬢、私達は用事があるのでそろそろ失礼します。」
アメリアが返事をする前に、彼らはさっと足早に歩きさってしまう。何か悪い事をしただろうか? 貴族令息たちの後ろ姿を見ながらアメリアが悩んでいると後ろから声がかけられた。
「アメリア、何を話してたんだ?」
振り返ると不機嫌そうなジェラルドが立っていた。ジェラルドは普段のラフな姿ではなく、きちんと皇太子らしい正装をしている。謁見のあとそのまま来たのかもしれない。
「挨拶しただけよ。それより私、失礼な事しちゃったかな? 急にみんな帰っちゃったの。」
アメリアは悲しくなってシュンとする。初対面だったのに嫌われてしまうなんて今までそんな事はなかった。アメリアはきちんと挨拶したつもりだったのに、何が問題だったのだろう。
「あんな奴らの事なんて気にすることないだろ。」
「もう、真面目に聞いたのに。」
アメリアはジェラルドの黄金色の瞳を睨みつける。
「気になるなら追いかければいいだろ。俺には関係ない。」
ジェラルドがプイっとアメリアに背中を向けて歩き出した。
「せっかくジェラルドに会いに来たのにどこに行くのよ。約束に遅れた事怒ってるの?」
理由はよく分からないが、ジェラルドの機嫌が悪い。アメリアは戸惑いながら、王宮に向けて歩いていくジェラルドの後を追いかけた。
数週間後、再び会ったジェラルドはアメリアに指輪を贈ってくれた。
ジェラルドの色である金と銀が、アメリアの瞳の色とよく似たアメジストを守るようにデザインされた指輪。アメリアはジェラルドのものだと主張するようなデザインだ。その指輪を見てアメリアはあの日ジェラルドが怒っていた理由を理解した。
「別に深い意味はない。」
不機嫌そうに言ったジェラルドだったが、アメリアに触れる手はとても優しかった。
アメリアには、あの瞬間に嘘があったとはとても思えない。
会えなかった3年の間にジェラルドにいったい何があったのだろう。アメリアは2人の絆の証である指輪に触れながら、ジェラルドを想って声を殺して静かに泣いた。
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