47 / 55
緑の冒険編 勇者パーティを追放された勇者の話
勇者、神に愛される
しおりを挟む
「――しかしなあ」
ここは、山岳地帯。
ゴツゴツした岩と谷の一帯の上を、もこもこした小さな白い雲が移動していました。
雲は魔法の乗り物になっており、そこにはタピオンと、雲の操縦をしている魔法使いの謎の青年が乗っています。
謎の青年は、独り言をぶつぶつ呟いていました。
「書き始めたときは、まさかタピオカミルクティーの再ブームが来るとは思わなかったんだよなあ。あのブツブツのどこがSNS映えするんだ? 確かに美味しいけど……」
「魔法使いさん、どうかしたんですか?」
「いえ、何でも。……ほら勇者さん、着きましたよ」
雲は止まり、ある大きな山の洞窟の前に着きました。
「ここがそのガイドブックに乗っている、火の精霊の住居につながると言われる洞窟です」
「ありがとうございます!」
タピオンは雲から降ります。
謎の青年はとんがり帽子をかぶりなおし、
「にしても勇者さん、運が良かったですね。俺がたまたまここを通らなかったら、三日間歩き続けなくてはいけなかったところですよ」
「本当、助かりました。その覚悟で結構準備してきたんですけどね」
タピオンは大きなリュックを背負い、山男のような姿で、青年に頭を下げます。
「けど、帰りは自分で頑張ってくださいねー」
謎の青年はそう言って手を振り、雲に乗って去っていきました。
「一体彼は誰だったんだろう」
タピオンは、雲に乗った謎の青年の後ろ姿を、小さくなるまで見送りました。
洞窟は一本道。壁には松明があり、足元を照らしています。
タピオンはその薄暗い道を、『四大精霊に会いに行こう!―公式監修!完全ガイドブック―』を広げながら歩いていました。
「火の精霊、どんな人なんだろう。地の精霊はめっちゃ悪口言ってたけど……っと!」
急にバサバサと何か音がし、タピオンは足を止めました。
顔を上げると、そこには三匹のコウモリの姿。
しかし、ただのコウモリではありません。
子供の身長ほどの大きさで、目は赤く光っていました。
「これは……コウモリの魔物!」
叫んだと同時、コウモリたちは一斉に襲いかかってきました。
「うわあああ!!」
タピオンはとっさに、コウモリを払おうと拳を突き出しました。
それは見事、一匹にクリーンヒット。
コウモリは吹っ飛び、その一匹が飛ばされたところにいたもう一匹も吹っ飛び、その一匹が飛ばされたところにいたもう一匹も吹っ飛びました。
辺りは静まり返りました。
「……今日、すごく運がいいなあ」
タピオンは拍子抜けしながらも、奥へと進みます。
少し歩くと、長い石の階段が現れました。
上ると、外に繋がる出口が見えてきました。
眩しさに一瞬目を閉じ、そして開ければ、そこは古い神殿でした。
石の地面に、石造りの柱が何本も立っています。
そして、その中央には、一人の男があぐらをかいていました。
「おっ、そこのお前! 何だ、見ない顔だな?!」
オレンジ色の髪をし、アラビア風の服を着た元気な男は、そうタピオンを見て言います。
「オレは火の精霊、サンだ! もしかして、オレに魔法をもらいに来た挑戦者か?!」
「はい! 僕は勇者・タピオンといいます」
タピオンの答えに、火の精霊・サンはニッと笑い、
「よし、タピオン! この山道を乗り越え、あの三匹の強力な魔物たちを倒し、ここまでよく来たな!!」
タピオンはそう言われて、ものすごくショートカットしたことにちょっとの罪悪感を覚えました。
「けど、ここからはそうはいかねぇぜ!!」
サンはそう言って、地面を勢いよく蹴って立ち上がります。
「ルールは単純だ! オレを倒せば、オレの魔法をお前にくれてやる!!」
サンがそう言って、パチンと両手を胸の前で合わせると、手のひらから真っ赤な炎が溢れ出しました。
ここは、山岳地帯。
ゴツゴツした岩と谷の一帯の上を、もこもこした小さな白い雲が移動していました。
雲は魔法の乗り物になっており、そこにはタピオンと、雲の操縦をしている魔法使いの謎の青年が乗っています。
謎の青年は、独り言をぶつぶつ呟いていました。
「書き始めたときは、まさかタピオカミルクティーの再ブームが来るとは思わなかったんだよなあ。あのブツブツのどこがSNS映えするんだ? 確かに美味しいけど……」
「魔法使いさん、どうかしたんですか?」
「いえ、何でも。……ほら勇者さん、着きましたよ」
雲は止まり、ある大きな山の洞窟の前に着きました。
「ここがそのガイドブックに乗っている、火の精霊の住居につながると言われる洞窟です」
「ありがとうございます!」
タピオンは雲から降ります。
謎の青年はとんがり帽子をかぶりなおし、
「にしても勇者さん、運が良かったですね。俺がたまたまここを通らなかったら、三日間歩き続けなくてはいけなかったところですよ」
「本当、助かりました。その覚悟で結構準備してきたんですけどね」
タピオンは大きなリュックを背負い、山男のような姿で、青年に頭を下げます。
「けど、帰りは自分で頑張ってくださいねー」
謎の青年はそう言って手を振り、雲に乗って去っていきました。
「一体彼は誰だったんだろう」
タピオンは、雲に乗った謎の青年の後ろ姿を、小さくなるまで見送りました。
洞窟は一本道。壁には松明があり、足元を照らしています。
タピオンはその薄暗い道を、『四大精霊に会いに行こう!―公式監修!完全ガイドブック―』を広げながら歩いていました。
「火の精霊、どんな人なんだろう。地の精霊はめっちゃ悪口言ってたけど……っと!」
急にバサバサと何か音がし、タピオンは足を止めました。
顔を上げると、そこには三匹のコウモリの姿。
しかし、ただのコウモリではありません。
子供の身長ほどの大きさで、目は赤く光っていました。
「これは……コウモリの魔物!」
叫んだと同時、コウモリたちは一斉に襲いかかってきました。
「うわあああ!!」
タピオンはとっさに、コウモリを払おうと拳を突き出しました。
それは見事、一匹にクリーンヒット。
コウモリは吹っ飛び、その一匹が飛ばされたところにいたもう一匹も吹っ飛び、その一匹が飛ばされたところにいたもう一匹も吹っ飛びました。
辺りは静まり返りました。
「……今日、すごく運がいいなあ」
タピオンは拍子抜けしながらも、奥へと進みます。
少し歩くと、長い石の階段が現れました。
上ると、外に繋がる出口が見えてきました。
眩しさに一瞬目を閉じ、そして開ければ、そこは古い神殿でした。
石の地面に、石造りの柱が何本も立っています。
そして、その中央には、一人の男があぐらをかいていました。
「おっ、そこのお前! 何だ、見ない顔だな?!」
オレンジ色の髪をし、アラビア風の服を着た元気な男は、そうタピオンを見て言います。
「オレは火の精霊、サンだ! もしかして、オレに魔法をもらいに来た挑戦者か?!」
「はい! 僕は勇者・タピオンといいます」
タピオンの答えに、火の精霊・サンはニッと笑い、
「よし、タピオン! この山道を乗り越え、あの三匹の強力な魔物たちを倒し、ここまでよく来たな!!」
タピオンはそう言われて、ものすごくショートカットしたことにちょっとの罪悪感を覚えました。
「けど、ここからはそうはいかねぇぜ!!」
サンはそう言って、地面を勢いよく蹴って立ち上がります。
「ルールは単純だ! オレを倒せば、オレの魔法をお前にくれてやる!!」
サンがそう言って、パチンと両手を胸の前で合わせると、手のひらから真っ赤な炎が溢れ出しました。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
夢のステータスをこの身に!
刹那冥夜
ファンタジー
あらすじ
突然夢の中の能力を現実で主人公が身につける。
すると突然目の前に女の子が現れ、その女の子は狙われているという…助けるため、いろいろ準備をしていく中、その女の子にキスをした責任……いや、好きになってしまい恋人に…
設定、
主人公は可愛い感じの男の子。かなり積極的で、恋愛は数日話している相手で、主人公に好意を持っている女の子がいたなら、普通に気づく。
妹は、主人公の事をお兄様と呼んでいる。もちろん実の兄の主人公を愛していて、すこしオタクっぽい?
最初に書いた、突然女の子に出会い……その女の子は「……………ん………わかった……」とかそんな感じの対応をする。自分では可愛く書いてるつもりで書いている。
ちなみに主人公最強物です。負けることは……ないかな
はっきり言ってご都合主義でいく。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる