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白の魔導師編 冒険者ハーレムに意味はあるのか?
勇者、応戦する
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「正義心だけでは、この私は倒せないぞ」
魔王はそう言って前に出ようとしましたが、そこにエルが立ちふさがりました。
「魔王様! まずここは、ボクに任せてください!」
エルはそう言って、ブンブンと自分の杖を振り回します。
「必ずアイツを倒します!」
エルのその仮面の下の瞳には、少女たちに囲まれている少年に対しての嫉妬の炎がメラメラと燃えていることでしょう。
魔王は大半呆れながらも、彼の意思を汲み取り、
「わかった。奴との戦いはお前に任せよう」
「それなら僕が、後ろのお嬢様方の相手をしましょう」
アズレアはそう言って剣を抜き、エルの隣に並びました。
エルとアズレアは互いに一度視線を交わし、そして冒険者に向き直りました。
「貴方たちが魔王様に挑むのは、」
「ボクたちを倒してからだ!」
「ふぅん、まずはザコ敵とイケメン秘書ってワケ」
修道の服を着た少女は、ポケットに手を突っ込みながらそう言います。
しかし彼女は、次にはニヤリと笑い、
「にしても五対一? ボクらのこと、なめ過ぎじゃないッ!?」
服に隠していた鉄パイプを取り出し、弾みをつけて高く跳び、素早くアズに向かって振りかざしました。
「物騒なものをお持ちですね」
「?! よけたッ?!」
アズレアははらりとそれをかわし、慌てる彼女の鉄パイプを、剣で上からぶっ叩きました。
ガキィンと、金属同士がぶつかる凄まじい音がして、鉄パイプから彼女は手を離します。
「うへぇ、手がしびれた……」
ガラガラと音を立てて落ちた鉄パイプを、アズレアは容赦なく靴で踏みつけます。
呆然とする残りの四人に、アズは微笑みました。
「さあ、手加減はいりませんよ。――僕もしませんので」
「死に散れぇッ! "射撃"!!」
エルはそう叫び、リュカに向かって魔法の銀の矢を降らせました。
「……『死に散れ』って、王子の台詞じゃないな」
「エルさんはあの方にご親族でも殺されたのでしょうか」
離れた場所では、魔王とホリーがひそひそと話します。
「"防御吸収"!」
降り注ぐ矢に向かって、リュカは六角形の半透明の盾を出しました。
盾に当たった矢は全て、吸い込まれるように消えていきます。
「なるほど、魔力はボクと同じくらい、か……」
全く傷ついていない彼を見て、エルは仮面の下で目を細めます。
エルは一瞬考えた後、また杖を振りかざしました。
「"火炎"!」
そう唱えると、一瞬で空気が燃え上がり、炎がリュカを包みました。
すかさずリュカは、髪で隠れていない方の瞳でその炎を捉え、
「"水流"!」
杖から水を出し、その炎を包み消します。
それを確認したエルは、仮面の下でニヤリと笑いました。
「かかったね! "氷結"!」
「な……ッ!!」
リュカが気づいた頃には、凄まじい冷気が彼を包んでいました。
パキパキパキ、という音とともに、空中の水は凍りつき、
「"爆破"!」
――バリン!
エルの詠唱に氷は散り、大量の鋭い氷が彼に降りかかりました。
「ふはははは! 思い知ったかぁ! ははは!!!」
打ちどころが悪かったのか、気を失っているリュカを見て、エルは高笑いしました。
「完全に悪役化している……」
「ちょっと怖いですね……」
そんなエルに、魔王とホリーは引き気味です。
「エルさん、そちらも終わったようですね」
アズレアが持ち場を離れ、エルに笑いかけます。
アズレアの持ち場を見ると、床には四人分の武器が破壊されていました。
「くっ……我がミッシールド家に伝わる宝剣を躊躇なく足蹴にするなど…」
「申し訳ありません、お嬢様……あれは慈悲もない、まるで人の皮を被った鬼のよう……」
「もしかしたら本当に鬼なのかもしれないわ……流石は魔王の手下ね……洗濯板じゃ太刀打ちできなかった……」
立て続けに武器を取られた、高貴な女、騎士の女、そして二つ結びの少女は気を落とします。
そして、唯一肉弾戦を武器にしていたお団子結びの少女は、服を大きく切られていました。
「まさかこんな、非道な攻撃をされるなんて……ウチの十五年の武道人生でも初めて……」
「ホントだよ。しかもあいつ、表情一つ変えなかったよ。なんてヤツだ」
「本当に……なんて大胆……素敵……」
「え、それはちょっとオカシイ……てか服着てよ」
しかし彼女がキラキラと目を輝かせてアズレアを見上げたので、隣の修道女は身を引きました。
「うむ、元勇者とは思えない評価のされ方だ。流石私の見込んだ鬼畜眼鏡だな」
「ですが、あの服を切られた方は可哀想です。わたしの服を差し上げて良いでしょうか?」
一周回って感心し始めた魔王に、ホリーが尋ねたそのとき。
「……んて……」
「え?」
どこからか、女性のくぐもった声が聞こえ、エルは振り返ります。
そして突然、
「なっ!!」
「きゃあ!?」
氷の山が弾け散り、辺りは水蒸気で白く曇ります。
……霧が収まり、そこにいたのはリュカ。
しかし彼は宙に浮き、魔王を見下ろしていました。
「まさか、第二王子を手下としていたなんて……よくも私の魔法を書き換えたわね、第二十一代目魔王」
先程と全く違う、女性の声でそう言った彼は、右目を隠していた前髪をかきあげました。
「「! その目は!」」
魔王とエルは、彼の右目を見て声を上げました。
黄の蛍光色に輝く彼の瞳には、エルと同じ、白い星の印がありました。
魔王はそう言って前に出ようとしましたが、そこにエルが立ちふさがりました。
「魔王様! まずここは、ボクに任せてください!」
エルはそう言って、ブンブンと自分の杖を振り回します。
「必ずアイツを倒します!」
エルのその仮面の下の瞳には、少女たちに囲まれている少年に対しての嫉妬の炎がメラメラと燃えていることでしょう。
魔王は大半呆れながらも、彼の意思を汲み取り、
「わかった。奴との戦いはお前に任せよう」
「それなら僕が、後ろのお嬢様方の相手をしましょう」
アズレアはそう言って剣を抜き、エルの隣に並びました。
エルとアズレアは互いに一度視線を交わし、そして冒険者に向き直りました。
「貴方たちが魔王様に挑むのは、」
「ボクたちを倒してからだ!」
「ふぅん、まずはザコ敵とイケメン秘書ってワケ」
修道の服を着た少女は、ポケットに手を突っ込みながらそう言います。
しかし彼女は、次にはニヤリと笑い、
「にしても五対一? ボクらのこと、なめ過ぎじゃないッ!?」
服に隠していた鉄パイプを取り出し、弾みをつけて高く跳び、素早くアズに向かって振りかざしました。
「物騒なものをお持ちですね」
「?! よけたッ?!」
アズレアははらりとそれをかわし、慌てる彼女の鉄パイプを、剣で上からぶっ叩きました。
ガキィンと、金属同士がぶつかる凄まじい音がして、鉄パイプから彼女は手を離します。
「うへぇ、手がしびれた……」
ガラガラと音を立てて落ちた鉄パイプを、アズレアは容赦なく靴で踏みつけます。
呆然とする残りの四人に、アズは微笑みました。
「さあ、手加減はいりませんよ。――僕もしませんので」
「死に散れぇッ! "射撃"!!」
エルはそう叫び、リュカに向かって魔法の銀の矢を降らせました。
「……『死に散れ』って、王子の台詞じゃないな」
「エルさんはあの方にご親族でも殺されたのでしょうか」
離れた場所では、魔王とホリーがひそひそと話します。
「"防御吸収"!」
降り注ぐ矢に向かって、リュカは六角形の半透明の盾を出しました。
盾に当たった矢は全て、吸い込まれるように消えていきます。
「なるほど、魔力はボクと同じくらい、か……」
全く傷ついていない彼を見て、エルは仮面の下で目を細めます。
エルは一瞬考えた後、また杖を振りかざしました。
「"火炎"!」
そう唱えると、一瞬で空気が燃え上がり、炎がリュカを包みました。
すかさずリュカは、髪で隠れていない方の瞳でその炎を捉え、
「"水流"!」
杖から水を出し、その炎を包み消します。
それを確認したエルは、仮面の下でニヤリと笑いました。
「かかったね! "氷結"!」
「な……ッ!!」
リュカが気づいた頃には、凄まじい冷気が彼を包んでいました。
パキパキパキ、という音とともに、空中の水は凍りつき、
「"爆破"!」
――バリン!
エルの詠唱に氷は散り、大量の鋭い氷が彼に降りかかりました。
「ふはははは! 思い知ったかぁ! ははは!!!」
打ちどころが悪かったのか、気を失っているリュカを見て、エルは高笑いしました。
「完全に悪役化している……」
「ちょっと怖いですね……」
そんなエルに、魔王とホリーは引き気味です。
「エルさん、そちらも終わったようですね」
アズレアが持ち場を離れ、エルに笑いかけます。
アズレアの持ち場を見ると、床には四人分の武器が破壊されていました。
「くっ……我がミッシールド家に伝わる宝剣を躊躇なく足蹴にするなど…」
「申し訳ありません、お嬢様……あれは慈悲もない、まるで人の皮を被った鬼のよう……」
「もしかしたら本当に鬼なのかもしれないわ……流石は魔王の手下ね……洗濯板じゃ太刀打ちできなかった……」
立て続けに武器を取られた、高貴な女、騎士の女、そして二つ結びの少女は気を落とします。
そして、唯一肉弾戦を武器にしていたお団子結びの少女は、服を大きく切られていました。
「まさかこんな、非道な攻撃をされるなんて……ウチの十五年の武道人生でも初めて……」
「ホントだよ。しかもあいつ、表情一つ変えなかったよ。なんてヤツだ」
「本当に……なんて大胆……素敵……」
「え、それはちょっとオカシイ……てか服着てよ」
しかし彼女がキラキラと目を輝かせてアズレアを見上げたので、隣の修道女は身を引きました。
「うむ、元勇者とは思えない評価のされ方だ。流石私の見込んだ鬼畜眼鏡だな」
「ですが、あの服を切られた方は可哀想です。わたしの服を差し上げて良いでしょうか?」
一周回って感心し始めた魔王に、ホリーが尋ねたそのとき。
「……んて……」
「え?」
どこからか、女性のくぐもった声が聞こえ、エルは振り返ります。
そして突然、
「なっ!!」
「きゃあ!?」
氷の山が弾け散り、辺りは水蒸気で白く曇ります。
……霧が収まり、そこにいたのはリュカ。
しかし彼は宙に浮き、魔王を見下ろしていました。
「まさか、第二王子を手下としていたなんて……よくも私の魔法を書き換えたわね、第二十一代目魔王」
先程と全く違う、女性の声でそう言った彼は、右目を隠していた前髪をかきあげました。
「「! その目は!」」
魔王とエルは、彼の右目を見て声を上げました。
黄の蛍光色に輝く彼の瞳には、エルと同じ、白い星の印がありました。
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