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白の魔導師編 冒険者ハーレムに意味はあるのか?
勇者、察する
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王国新聞に魔王の記事が載せられたあの日から、一週間が経ちました。
「この城に来る冒険者の数は多くなったが、王国では特に大きな動きは見られないな」
城の広間、魔王は水晶玉で外の景色を見ながらそう呟きます。
同じ部屋では、エルとアズレアはトランプ、ホリーは編み物など、それぞれ好きなことをしていました。
「しかし、村がちょっと面白いことになっている」
「面白いこと?」
彼の言葉に、三人は同時に顔を上げました。
魔王はにやりと笑い、
「ああ。今から皆で村に行ってみないか? もちろんこのままの格好では歓迎されないから、旅人に扮してな」
「皆……ということは、魔王様も一緒に行かれるのですか?」
「そうだが」
ホリーの言葉に、魔王が答えると、三人は目を丸くしました。
「魔王様が普通の格好で村人の中に混ざって大丈夫なんですか?!」
「そんな、木の葉を森に隠すようなこと……!」
「わたしたち、もう二度と魔王様を見つけられないかもしれません……!」
「おい貴様ら!! 私を何だと思ってるんだ!?」
魔王の喝が、広間に響き渡りました。
「魔王様、まだちゃんといますか?」
「いる。『まだ』とか、後々いなくなるみたいな言い方はやめろ」
エルの呼びかけに、魔王は不機嫌そうに応えました。
冒険者のような服に身を包んだ四人は、転移魔法で城の外に出たあと、集落の方へ歩いていました。
王子と姫である二人は顔がよくわからないように、エルは魔法使い風の帽子を、ホリーはマントについたフードを深く被っています。魔王とアズレアはほぼいつも通りです。
ホリーは微笑みを浮かべ、
「そうですわ。魔王様がどこに行ってもわかるように、歩くと音が鳴るサンダルを履いてもらうというのはいかがです?」
「幼児か」
「姫様、それでは甘いでしょう。首輪をつけましょう」
「家畜か」
ホリーとアズレアの提案にツッコミを入れながら、魔王は三人を引き連れ村の中心につきました。
しかし、いつも穏やかであったその村は、今日は人で溢れかえっています。
「随分と賑やかですね」
「お祭りですか?」
「直にわかる。少し歩くぞ」
首を傾げる三人を引き連れ、人混みの中を歩きます。
「――いやあ、ここ数日、都心からのお客がすごいなあ」
近くにいた八百屋の男が、『売り切れ』の札をかごに立てながら、隣の刃物屋の男に話しかけました。
「都じゃ田舎が流行ってんのかい? オーガニックとか森ガールとか、なんとか」
「おんめぇ、知らねぇのか? 何でも、王国が魔王討伐のおふれを出したらしい。それで冒険者が増えたんだと」
「そうなのかい? いいぞいいぞ。どんどん出してほしいなあ」
八百屋の男は満足そうに、儲けた金を数え始めました。
「…………」
「…………」
アズレアは神妙な顔で魔王を見て、
「国中に魔王を配置して討伐王命を出したら、めちゃくちゃ景気良くなるんじゃないですか?」
「言うんじゃない」
「この城に来る冒険者の数は多くなったが、王国では特に大きな動きは見られないな」
城の広間、魔王は水晶玉で外の景色を見ながらそう呟きます。
同じ部屋では、エルとアズレアはトランプ、ホリーは編み物など、それぞれ好きなことをしていました。
「しかし、村がちょっと面白いことになっている」
「面白いこと?」
彼の言葉に、三人は同時に顔を上げました。
魔王はにやりと笑い、
「ああ。今から皆で村に行ってみないか? もちろんこのままの格好では歓迎されないから、旅人に扮してな」
「皆……ということは、魔王様も一緒に行かれるのですか?」
「そうだが」
ホリーの言葉に、魔王が答えると、三人は目を丸くしました。
「魔王様が普通の格好で村人の中に混ざって大丈夫なんですか?!」
「そんな、木の葉を森に隠すようなこと……!」
「わたしたち、もう二度と魔王様を見つけられないかもしれません……!」
「おい貴様ら!! 私を何だと思ってるんだ!?」
魔王の喝が、広間に響き渡りました。
「魔王様、まだちゃんといますか?」
「いる。『まだ』とか、後々いなくなるみたいな言い方はやめろ」
エルの呼びかけに、魔王は不機嫌そうに応えました。
冒険者のような服に身を包んだ四人は、転移魔法で城の外に出たあと、集落の方へ歩いていました。
王子と姫である二人は顔がよくわからないように、エルは魔法使い風の帽子を、ホリーはマントについたフードを深く被っています。魔王とアズレアはほぼいつも通りです。
ホリーは微笑みを浮かべ、
「そうですわ。魔王様がどこに行ってもわかるように、歩くと音が鳴るサンダルを履いてもらうというのはいかがです?」
「幼児か」
「姫様、それでは甘いでしょう。首輪をつけましょう」
「家畜か」
ホリーとアズレアの提案にツッコミを入れながら、魔王は三人を引き連れ村の中心につきました。
しかし、いつも穏やかであったその村は、今日は人で溢れかえっています。
「随分と賑やかですね」
「お祭りですか?」
「直にわかる。少し歩くぞ」
首を傾げる三人を引き連れ、人混みの中を歩きます。
「――いやあ、ここ数日、都心からのお客がすごいなあ」
近くにいた八百屋の男が、『売り切れ』の札をかごに立てながら、隣の刃物屋の男に話しかけました。
「都じゃ田舎が流行ってんのかい? オーガニックとか森ガールとか、なんとか」
「おんめぇ、知らねぇのか? 何でも、王国が魔王討伐のおふれを出したらしい。それで冒険者が増えたんだと」
「そうなのかい? いいぞいいぞ。どんどん出してほしいなあ」
八百屋の男は満足そうに、儲けた金を数え始めました。
「…………」
「…………」
アズレアは神妙な顔で魔王を見て、
「国中に魔王を配置して討伐王命を出したら、めちゃくちゃ景気良くなるんじゃないですか?」
「言うんじゃない」
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