続・骸行進（裏怪談）

筆者（メカ）に届く体験談のあれこれ。

合宿

今回の話は、ある中学生からの報告だ。
時期は、去年の夏だったそうだ。

彼は「健（たける）」という名前だそうだ。

当時、中学一年生。入学して間もなく「合宿」に参加した。

合宿とはいっても、中学校の真裏にある公民館に泊まり込む。という
簡素なものだったらしい。

夏休みを利用した一週間の合宿。
学校サイドからの許可を得て、食事などは家庭科室を使い
先輩たちを含む自分たちだけで用意をしていた。

朝7時、顧問が公民館へやって来て
その後、お昼まで練習。
昼食後、2時までは自由時間とし再度練習。
夕方6時に練習を切り上げ、夕食作り。
7時には顧問が帰宅。生徒たちも公民館へ移動し9時には消灯する事が約束されていた。

そんな流れであったそうだ。

だが・・・。

遊びたい盛りの中学生だ。
9時に消灯など、するはずもない・・・。

10時を切った頃
3年生の先輩に、部員が呼び集められた。

「お前ら、肝試しするぞ！」

ルールは以下の通り。

・基本的には「2年生vs1年生の校内鬼ごっこ」
・鬼は2年生のみ。（懐中電灯使用可能）
・1年生はゴールを目指し逃げる。（懐中電灯使用不可）
・安全面の都合上、走る事は禁止。
・見つけた場合、懐中電灯で照らし名前を呼び一致して居たら捕まった事とする。
・外れた場合、懐中電灯を消しその場で30秒、声を出して数える事。
・捕まった者は罰ゲームとして、校庭で100本ノック。（3年生が担当）
・ゴールにはキャプテンが居り、合言葉を要求。（1年生は校内の合言葉を探すべし）
・制限時間は12時まで。（時間切れの者は、翌日100本ノック）

これが、ざっとしたルールだった。
他にも細々したルールがいくつかあったようだが割愛する。

この「肝試し鬼ごっこ」で「健」は途中、ある生徒と合流する。
その生徒の名前は「山下（仮名）」だ。

彼とは殆ど話した事が無かった。
入部して間もないという事も有り、人気の部活だ。生徒も多い。
同学年など一握りの才有る生徒しか目立たない。

だが、彼の入部志望はよく覚えていた。

「小学校時代、身体も弱く体格にも恵まれていない。
でもスポーツが好きで、何か熱中できるスポーツを行いたい。
そして、近年注目度の高い野球で体を鍛えたい。」

彼はそう語っていた様だ。

幸い、そのイベントは無事にクリアし、翌朝からの練習も普段通りだったそうだ。

・・・最終日、顧問からある知らせを受けるまでは・・・。

「皆集まってるか？・・・えー、先日話した山下の件だが。」

この時「健」は周囲を見渡したが、直ぐには彼を見つけられなかった。

「体調を崩し、合宿には来られないという事だったが
・・・体調が悪化。そのまま亡くなったそうだ・・・。
お前ら、逸る気持ちも良く分かるが、夏休みが明けるまでこの事は
他の誰にも話すんじゃないぞ？学校側からも正式に説明がある。
それまでは、波風立てないようにな。
一番悲しいのはご家族だ。そこら辺、しっかり尊重できるようにな。」


最後に「健」は、こう綴った。

「きっと、最後に俺達と練習がしたかったんだと思います。
その上で、夏休みの思い出を作りたかったんだろうと・・・。
あの時、もっと話しておけばよかった・・・。」