続・骸行進（裏怪談）

フリーターの青年 「芦屋（仮名）君」の話。

物件調査

私が、彼の話を聞くきっかけになったのは
とある心霊オタクの友人から「知り合いが体験しちゃったらしいぜ。」
との一報を受けた事に端を発した。

神奈川県某所のカフェで、彼と落ち合う事になった。

形式的な挨拶を交わした私は早速、本題に切り込む事にした。

「不思議な体験をしたと聞きまして・・・。」

以下、彼の言い分だ。

僕は、フリーターで隙間時間にバイトを入れてその資金を元手に投資をしています。
数日前、あるバイトに入りました。
リフォーム業者のバイトで、ある区域の住宅街を回って
古そうな場所や、明らかなヒビ・塗装ハゲなどの目立つ住宅を
会社用のデジカメに納めて来る事だったんです。
会社から目当ての住宅に印の付いた地図を貰って、動き回るんですけどね。

時間にして4時間ほどの勤務。
そのうちの一軒が、今回の話に出て来る家なんですけど・・・。

どう見ても、人なんか住んでないだろ？って感じの家だったんですよ。
ポストにはビラが溜まってるし、真っ昼間だってのにシャッターは下りてるし。
でもね、表札は掛かってるんですよ。

隣の家と間違ってるんじゃないかなぁ。なんて思いながら写真も撮って。
次に行く為に地図を見てた時
家の中から、女の人の悲鳴が聞こえたんですよ。「ぎゃぁぁぁ！」って。
もう、ビックリしちゃって・・・。
インターホンを鳴らしてみたんですが、誰も来ないし
どうしようかなぁ。って。
中で人が倒れてた。とかも嫌じゃないですか。
だから玄関のドアを開けようと思ったんですけど、開かないし。
申し訳ないけど、お隣の家に頼んで通報してもらったんですよ。

・・・でもね、そこのお宅には誰もいなくて。
警察の方が家中くまなく捜索してる間に、男の人が一人帰って来て。

その方が家主さんで、どうも夜勤族の方みたいで
日中は家に居ないんだとか。
聞けばその方しか住んでないって言うんですよ。
変でしょ？

・・・此処までが、彼の語ってくれた出来事だ。

だが・・・。

私が彼から話を聞き終えた後、その家は関係がないだろうと話した。
なぜなら、彼に会ったその時から
私には、彼の横で怨嗟の言葉を囁く女の声がはっきりと聴き取れていたからだ。

『あぁ、拾って来ちゃったんだな。この人』というのが第一印象だった。

その後の事について詳しく話を聞くと
彼は、人間関係について
立て続けにトラブルを抱えていた事が分かった。

友人数名との些細なトラブルから、何人かは既に絶縁宣言までされたと言うし
最近まで付き合っていた恋人は、2年間も二股を続けていた事が発覚した。
果ては、兄弟が借金を作り失踪。
親に降りかかった返済の一部を肩代わりしたという。

だが、彼に憑いた女は
彼に縁のある人物ではないだろう。
横で囁く怨嗟の内容が、彼とは全く無縁の内容だったのだ。

私は彼にお祓いを勧め、この話は幕を閉じる。

皆さんも、急に風向きが変わったな。とか思う事があったら要注意かも知れません・・・。