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筆者(メカ)の体験
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これは、且つて私が経験した話である。
当時の私は、電車を利用した通勤を行っていた。
そして、乗り換えを行う為
一部、駅と駅の間を歩く事もあった。
問題となるのは、その乗り換えを行う為の徒歩区間。
当時の私は、恐らく
誰から見ても「無駄に急いでいる若者」であった事だろう。
まるで競歩の様に、スタスタと人々を掻い潜り、追い抜き
速度を上げていく。
当時、私はまだ「X氏」の元で修業を終えたばかりのヒヨッ子も同然であり
「聴こえるもの」が「無害なモノか」「害為すモノか」という判断までは出来なかった。
「X氏」の元で得たのは
雑踏の中、それが「生者の放つ音か」「亡者のものか」その聴き分けと
「聴かない為」の努力だけである。
そして・・・。
通勤時
どうしても通らねばならないその区間で
「聴いてしまったのだ。」
最初は、なんて事の無い「革靴の音」だった。
それだけなら、右からも左からも何時だって聞こえていたものだ。
当時の私は、学生時代の癖でイヤホンをし、音楽を聴きながらの通勤だった。
即ち「革靴の音」が聴こえるのは、大抵「イヤホンを忘れた時」くらいなものだ。
その日も、たまたまイヤホンを忘れた。
「朝から萎えるわぁ~。」などと、心でぼやきつつ
普段は聞かない「革靴の音」を聞きながらの通勤。
だが・・・一つだけ・・・まるで不協和音の様に「気になる革靴の音」があった。
自分を含む周囲の足音は決まったテンポで歩く中
わざとその足並みから外れる様に歩く音。
聞いているだけでもイライラしてくる音だった。
だが、ふと我に返り周囲を見渡すと
私の周囲を歩いていたのは、サラリーマンの男一人・・・。
気付いてしまったのだ。
別の誰かが、憑いて来ている事を。
その日から、徒歩区間では「その足音」を耳にするようになり
後を追われているような感覚だった。
だからこそ、振り返らず・足早に通り過ぎてしまいたかった。
何故か必死だった。
なぜなら、どんなにスピードを上げても「革靴の音」が後ろから聞こえるからだ。
急ぐ自分の足音とは別に
軽快なステップでも踏んでいる様に、不協和音のリズムを奏でながら追いかけて来る。
まるで、存在に気付いた事で「より一層」自分をアピールするように。
それが、当時の私には「不愉快で」「恐ろしい物」だったのだ。
しかし、残念な事にその「徒歩区間」は
私の生活圏にあるものだ・・・。
友人と遊びに行ったり、少し遠出の買い物に出掛けたり
そんな些細な日常でも「通る場所」なのだ。
私は、今でもその「徒歩区間」が「イヤホンなし」では通れない・・・。
当時の私は、電車を利用した通勤を行っていた。
そして、乗り換えを行う為
一部、駅と駅の間を歩く事もあった。
問題となるのは、その乗り換えを行う為の徒歩区間。
当時の私は、恐らく
誰から見ても「無駄に急いでいる若者」であった事だろう。
まるで競歩の様に、スタスタと人々を掻い潜り、追い抜き
速度を上げていく。
当時、私はまだ「X氏」の元で修業を終えたばかりのヒヨッ子も同然であり
「聴こえるもの」が「無害なモノか」「害為すモノか」という判断までは出来なかった。
「X氏」の元で得たのは
雑踏の中、それが「生者の放つ音か」「亡者のものか」その聴き分けと
「聴かない為」の努力だけである。
そして・・・。
通勤時
どうしても通らねばならないその区間で
「聴いてしまったのだ。」
最初は、なんて事の無い「革靴の音」だった。
それだけなら、右からも左からも何時だって聞こえていたものだ。
当時の私は、学生時代の癖でイヤホンをし、音楽を聴きながらの通勤だった。
即ち「革靴の音」が聴こえるのは、大抵「イヤホンを忘れた時」くらいなものだ。
その日も、たまたまイヤホンを忘れた。
「朝から萎えるわぁ~。」などと、心でぼやきつつ
普段は聞かない「革靴の音」を聞きながらの通勤。
だが・・・一つだけ・・・まるで不協和音の様に「気になる革靴の音」があった。
自分を含む周囲の足音は決まったテンポで歩く中
わざとその足並みから外れる様に歩く音。
聞いているだけでもイライラしてくる音だった。
だが、ふと我に返り周囲を見渡すと
私の周囲を歩いていたのは、サラリーマンの男一人・・・。
気付いてしまったのだ。
別の誰かが、憑いて来ている事を。
その日から、徒歩区間では「その足音」を耳にするようになり
後を追われているような感覚だった。
だからこそ、振り返らず・足早に通り過ぎてしまいたかった。
何故か必死だった。
なぜなら、どんなにスピードを上げても「革靴の音」が後ろから聞こえるからだ。
急ぐ自分の足音とは別に
軽快なステップでも踏んでいる様に、不協和音のリズムを奏でながら追いかけて来る。
まるで、存在に気付いた事で「より一層」自分をアピールするように。
それが、当時の私には「不愉快で」「恐ろしい物」だったのだ。
しかし、残念な事にその「徒歩区間」は
私の生活圏にあるものだ・・・。
友人と遊びに行ったり、少し遠出の買い物に出掛けたり
そんな些細な日常でも「通る場所」なのだ。
私は、今でもその「徒歩区間」が「イヤホンなし」では通れない・・・。
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