続・骸行進（裏怪談）

不動産に勤める後輩「伊藤（仮名）」の話

土地、買取 ３

男の話を最後まで聞いた結果、分かった事がある。

この家では、男の伯母夫婦が亡くなっている。
夫が伯母を殺害後、首を吊った。

男はその事実を知った上で、土地の売却に踏み切った。

・・・しかし、男が売却を決意したのは「事件が起きた」からではない。

冷静さを取り戻した男から、改めて話を聞いた我々は
あの家で起こる怪奇現象について聞く事となる。

「先ほどの私の言動からも、薄々察して頂いたと思いますが・・・
あの家は、入った人間を狂わせる。ソレが恐ろしくて、家の中に入れないんです。」

事が起きたのは、伯母夫婦が亡くなって直ぐだった。
生前、伯母が懇意にしていたという知り合いが実家を訪れたという。

その知り合いは、線香を揚げると男に伯母との些細なやり取りなどを聞かせたという。

所が、その話は2時間経っても終わらず
果てはどのようにして知り合ったのか。という始まりまで遡っていたという。

「だからあんな男なんて辞めておけと私は忠告したんですよ！？
それらのに、彼女・・・聞く耳も持ってくれなくて。
可笑しいでしょ？私たちの方が客観的に二人を見ていられるのに！」

その知り合いは、先の男の様に次第に狂い始め
とうとうゲラゲラと笑いながら「あぁ！清々した！さっさと死ねば良かったのよ！あんな女なんて！」
と伯母を酷くこき下ろしたという。

ソレが恐ろしくなった男は、逃げる様に玄関の外へ出た。

暫くして、我に返った男は客人の様子を見にリビングへ戻ったそうだが
其処に客人の姿はなかった。

「は？」

その後、男は家中を必死で探したが客は見つからず
やっとの思いで見つけた時、その客人は2階の伯母が使っていたという寝室の窓から
飛び降りる寸前だったという。

・・・客人を必死に引き戻し、落ち着かせようとするも
その客人は暴れ「さっさと死ねば良かったんだ！アイツなんてぇぇ！あはははは！」と
最早、話の通じる様な状態ではなかったという。

その後、通報によって駆けつけた警官と救急隊によって
女性は何処かへ運ばれたとの事だが
それ以降、女性の姿は見ていないという。

「実は、それ以外にも似たような事は何回か起きていたんです。
・・・でもね、そうならない人も居たのは事実なんですよ。
だから、放っておいても問題は無いだろうと思ってお話しなかったんです。」

「事情は把握しました。ですが、そういった事柄があるのでしたらきっちりと
ご相談いただかねば、買取すら難しくなってしまうケースも十分にあります。
他には何もないんですね？」

「・・・はい。」

「・・・このお話は一度、持ち帰らせていただいて宜しいでしょうか？」

「分かりました。」

伊藤は、男の話を聞き終えると男を責める訳でもなく、淡々と業務をこなした。