続・骸行進(裏怪談)

メカ

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不動産に勤める後輩「伊藤(仮名)」の話

土地、買取 1

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ある年の暮れ、伊藤の務める会社に一人の男がやって来た。
年齢は50~60位の人物。
首元のよれたシャツに、しわの多いコートを纏いやって来たという。
一見するとその男は「浮浪者」に近い出立だった。

「あの。土地の買取をお願いしたいんですが。」

「え?」

見た目から似付かわしくない一言に、伊藤は一瞬固まったという。

「はい、どちらの土地でしょう?」

「~県○○市の・・・」

男の詳細な情報から、そこには確かに一軒家がある事が分かった。
しかも、周囲数軒分の土地がその人物の土地でいわゆる地主だというのだ。

「こちらのお宅は持ち家ですか?」

「えぇ。父母の代からで。家自体も老朽化が進んでまして。私一人では管理が・・・。」

「・・・失礼ですが、現在はこちらに住まわれていらっしゃるので?」

「あ、いえ・・・私は近くの小屋で・・・。」

住まいについて質問をした伊藤は、男の妙な態度が気になった。
まるで、家自体には触れて欲しくない。と言わんばかりの表情の変化だったという。

「ご自宅は引き払って・・・更地に戻されてからのご検討ですか?」

何を思ったか、伊藤はその家が気になり掘り下げたという。

「家はそのままで!・・・お願いします。」

家の取り壊しを示唆した瞬間、男の顔は焦りの顔に変わった。

『何かある。間違いないな。』
直ぐにそう思ったそうだ。

「ご自宅もご一緒にという事でしたら
後日、改めてご自宅の様子を拝見させていただきたいのですが
それでも宜しいですか?」

「えぇ、構いません。」

男の家に伺う予定を話し合い、その日は終わったそうだ。
その日の仕事終わり、私の元に一報が届く。

「先輩、一緒に見てもらいたい物件があります。~日、予定開いてますか?」

「~日ね。大丈夫だよ。場所は?」

こうして、当日を迎えました。

指定された時間・場所で後輩の伊藤と顔を合わせた私は
伊藤から開口一番に

「先輩、ここ怪しいっす。」の一言を聞く事となる。

不動産業において、土地の売買でのトラブルは珍しい事ではない。
しかし、彼が言うには
「何かを隠す客は、大概急いでます。」という。

しかし、それこそが伊藤の感じた最大の違和感であり
件の客からは、その「急いでいる」という感覚を得なかったという。

「何か隠してるのは間違いないんですけどね、さっさと掃けてしまいたい。とかっていう
そういうのを感じなかったんですよ。」

実際に物件を見た時、外から何かが聴こえた訳ではない。
その上、何か感じた訳でもない。

むしろ、地主というだけあって立派な豪邸だなぁ。というのが第一印象であった。

その後、依頼者の男性と合流し家の中を案内してもらう事になったのだが
そこで一気に印象が変わったのを覚えている。

玄関を通り、長い廊下を歩き
リビングへ通されたその時、私は男女の罵り合う声を聴いた。

この声を聴いた直後、一瞬ではあるものの
耳が詰まったような感覚になった。

それ以降も、男の話を聞きつつ
家の何処からとも分からない罵り合いの声は続く。

「とりあえず、私は此処までで。何かあれば近くの小屋に居ますので・・・。」

男はそれだけ告げ、そそくさと去っていった。
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