東京が消えたなら。

メカ

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30話 起業手前。

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地図に記された赤いマーク。
その正体は、ホームレス達のねぐらだ。

この時、航の脳裏にはある策略が巡っていた。

それは、自身が生計を立てる為に始めたポスティングにも通ずるものである。

・・・そう。
航は複数の会社からポスティングのバイトを受け取り
それを「彼等」に任せようと考えたのだ。

そして、ゆくゆくはもっと大きな目標を掲げ邁進する為に。

手始めに、受け持つ仕事のエリアを道頓堀周辺に絞った。
交通機関などは使わず、可能な限り徒歩圏内の広いエリアだ。
そのエリアを、五人のホームレスに代行させようと考えたのだ。

勿論、情報を集める為
自分や紗代も加わるつもりだ。

手始めに、近くのホームレスを訪ねた。

可能な限り、姿勢は低く・・・だが、目標については大きく。

最初こそ、怪しい連中を見るような目で見られたが・・・
ホームレスは、航の目標を聞くなり
「少し考えても良いか?」と返答をしてきた。

好感触だった。

先の目標・・・。
それは「東京都心部への遠征」である。

今や、東京都心部は至る所が陥没・倒壊の影響で
ライフラインなど存在しない。
物資の搬入も、滞っている状態だという。

車や機械に頼った物資輸送は、ドローンを除き
ほぼ機能していない。
・・・頼みの綱であるドローンも、一度に運べる物資には限りがある。

現状、ドローン輸送も「ない」に等しい状態なのだ。

そこで、航は人力による物流の円滑化を考えた訳だ。

しかし、その為には人手が居る。
少ない資金で、納得してくれるメンバーが必要だ。
起業が波に乗れば、資金も多く渡せる。
そこで目を付けたのがホームレスだった。

彼等の中には「まだ働ける力」が埋もれている。
もう一度「華を咲かせるのだ」と意気込む者も居るだろう。

そうして、5名のホームレスが集まるまで交渉を続け
その間にも彼等と連携を図り、準備を整え始めたのだ。

そして、二ヶ月が経った。

この二ヶ月は激動なモノだった。

「ヤマさんら関東のホームレス」と合流出来たのだ。
・・・しかし、残念な事に「ジョージ」の姿はなかった・・・。
聞けば、道中感染症にかかり、病院へ搬送されてしまったとの事だった。
暫く見ない間に、彼等はやつれにやつれ生気の欠片も残っていない状態だった。

関西のホームレスらと合流。
関東ホームレスの旅路をたたえ、数日は休みを取る事になった。

そして、情報の共有。
すると、ヤマさんから新たなアドバイスを受ける。

「東京だけじゃダメだ。もっと広く。山梨・静岡辺りのサポートもやるんだ。
短期間にどれだけ成果を伸ばせるかが勝負だぞ!・・・とにかく、名を売れ!
それと、わざわざ関西の人らを関東に呼ぶ必要はないさ。二度手間になる。
彼等には引き続き、ポスティングなどの人力仕事をお願いするのが良いだろう。
関東の支援は関東のホームレスと連携を取るのが一番だ。」

「そうだよな・・・ありがとう、ヤマさん。それと、無事で良かったよ。」

「しみったれてるんじゃないよ!、ほれ、関西の人らともう一度話を煮詰めてこい!」

再会早々のダメ出しに、航は感動の涙すら覚えた・・・。
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