東京が消えたなら。

メカ

文字の大きさ
上 下
29 / 34
再投稿開始

28話 スクラップになった街

しおりを挟む
時は流れ、一か月後の事だ。

ニュースで連日連夜報道される、被害の数々。
報道のヘリが、カメラを片手にその惨状を写す。

その荒れ果てた地は・・・「東京」だ。

夏から秋に変わろうというこの時期に季節外れの長雨が続いた。
その結果、予想通りと言うべきか
地下街の機能は完全に停止したのだ。

決して、激しい雨が降った訳ではない。
しとしとと・・・しかし確実に、その雨の総量は例年を越える規模の雨だった。

そして・・・とうとう起きたのだ。
恐るべき破壊の音と共に、より多くの命を奪いながら
東京のビル群は次々と倒れ始めた。
ある時は、ビル三つが共倒れに。
ある時は、陥没した箇所が広がっていき、近場の建物を飲み込んだ。

この一ヶ月で、虫食いだらけの街は「スクラップ街」と揶揄されるようになった。

当然、そんな街で治安など維持できる訳もなく
火事場泥棒やブランド店強盗など、様々な犯罪が
災害の波に飲まれ、報道すらされる事無く横行していった。

長野県長野市・・・とある家電量販店で
航と紗代は食い入るようにテレビの報道を見ていた。

「報道してる余裕があるなら、手助けでもすりゃいいのによぉ。」

「ちょ、ちょっと!コウちゃん。それって私への皮肉!?」

「さぁね。」

「あぁ!もう、待ってよ!」

彼等が此処に居る理由
それは、しなの10号に乗り「名古屋」を目指す為だ。
そして、名古屋から大阪へと逃げる算段を整えていた。

他人から見れば無駄の多い動きだろう。
だが、それこそ「航の動揺」が見て取れる。

住み慣れた街に戻り、惨状を目の当たりにしながら生きるか
群馬に渡った時、東北へ逃げるべきだったのか
そもそも、身一つで関西に行き、宛てもない中どう生きるのか。

だが、航の中にはある一つの光があった。
それは、ヤマさんが語ったた言葉

関西にツテがある。という情報だ。
そして、此処には「情報」に強い「紗代」が居る。
人探しなど、如何様にでもなる。

捻くれ者である「成瀬 航」という男はキレ者であった。
そう、目先の目標が白紙でも・・・脳内が真っ白になっても
思考を止めなかった。
「手がある」のだ。それが吉と出るか凶と出るかは差し置いても
「出来る事がある」のだ。

不幸中の幸いか、彼等にはまだ多少の金銭的余裕があった。
それも、ホームレスの一団と行動し「使わない術」を学んだからに他ならない。

だからこそ、航は関西へと足を延ばす事に決めたのだ。

そこで彼等を待てばいい。
ヤマさんの言うツテを探しながら、彼等の到着を・・・待てばいい。
その時、恩人たちを温かく迎えられるように。
自分たちの拠点を持てばいい。

そうして、彼等は駅を目指すのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

絶世のディプロマット

一陣茜
SF
惑星連合平和維持局調停課に所属するスペース・ディプロマット(宇宙外交官)レイ・アウダークス。彼女の業務は、惑星同士の衝突を防ぐべく、双方の間に介入し、円満に和解させる。 レイの初仕事は、軍事アンドロイド産業の発展を望む惑星ストリゴイと、墓石が土地を圧迫し、財政難に陥っている惑星レムレスの星間戦争を未然に防ぐーーという任務。 レイは自身の護衛官に任じた凄腕の青年剣士、円城九太郎とともに惑星間の調停に赴く。 ※本作はフィクションであり、実際の人物、団体、事件、地名などとは一切関係ありません。

未来への転送

廣瀬純一
SF
未来に転送された男女の体が入れ替わる話

kabuto

SF
モノづくりが得意な日本の独特な技術で世界の軍事常識を覆し、戦争のない世界を目指す。

入れ替われるイメクラ

廣瀬純一
SF
男女の体が入れ替わるイメクラの話

年下の地球人に脅されています

KUMANOMORI(くまのもり)
SF
 鵲盧杞(かささぎ ろき)は中学生の息子を育てるシングルマザーの宇宙人だ。  盧杞は、息子の玄有(けんゆう)を普通の地球人として育てなければいけないと思っている。  ある日、盧杞は後輩の社員・谷牧奨馬から、見覚えのないセクハラを訴えられる。  セクハラの件を不問にするかわりに、「自分と付き合って欲しい」という谷牧だったが、盧杞は元夫以外の地球人に興味がない。  さらに、盧杞は旅立ちの時期が近づいていて・・・    シュール系宇宙人ノベル。

サクラ・アンダーソンの不思議な体験

廣瀬純一
SF
女性のサクラ・アンダーソンが男性のコウイチ・アンダーソンに変わるまでの不思議な話

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

どうぶつたちのキャンプ

葵むらさき
SF
何らかの理由により宇宙各地に散らばってしまった動物たちを捜索するのがレイヴン=ガスファルトの仕事である。 今回彼はその任務を負い、不承々々ながらも地球へと旅立った。 捜索対象は三頭の予定で、レイヴンは手早く手際よく探し出していく。 だが彼はこの地球で、あまり遭遇したくない組織の所属員に出遭ってしまう。 さっさと帰ろう──そうして地球から脱出する寸前、不可解で不気味で嬉しくもなければ面白くもない、にも関わらず無視のできないメッセージが届いた。 なんとここにはもう一頭、予定外の『捜索対象動物』が存在しているというのだ。 レイヴンは困惑の極みに立たされた──

処理中です...