東京が消えたなら。

メカ

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22話 再振動

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翌朝、荷物を纏め新天地を求め歩き出した一行。
だが、順風満帆だったのは最初の数時間だけだった。

再びの大地震。

今回の震源地となったのは、静岡県だ。

「・・・きたか。」

「ヤマさん?」

「おい、皆の衆。急ぐぞ!余計な荷物は置いていけ。時間がない。」

その発言はさらに数時間後に的中する。

「ヤマさん、荷物置いて来て良かったの?」

「構わん、それより空を見てみろ。」

「空?」

其処に広がっていたのは、まるで我々の後を追ってくるように
大きな黒い雲が広がっていた。

「・・・なんだ、あれ・・・。」

「・・・火山灰だ。」

「は?・・・火山灰?」

「小坊主、携帯でニュース調べてみろ。」

航は大慌てでスマホを取り出し、ネットニュースを漁った。
其処には、衝撃の記事が速報として大きく取り上げられていた。

『静岡で富士山噴火か!?周辺住民に緊急避難警報。』

「何だよこれ!」

「こうなったらもう、間に合わんかもしれん・・・。」

「え!?」

「とにかく急ぐぞ。」

ヤマさんは言葉少なく、歩みを速める。
航は後ろに控える紗代の元に寄る。

「姉ちゃん、あの原稿見せて。」

「え・・・でも・・・。」

紗代はヤマさんを警戒してか、渋った。

「良いから。」

「あ、ちょっと・・・。」

航は彼女の鞄から覗いている原稿用紙を抜き取り、目を通した。

『首都直下型地震が一定の規模を超えた場合、その影響は活火山である富士山にも
影響を与える事になるだろう。
その結果として、富士山は噴火のスイッチが入り、地震から数日ないし数週間後には
完全に噴火する。
富士山に隣接する県では、大小関わらず噴石が降り注ぐ事であろう。
その脅威たるや、もはや想像の範疇を越えている。
だが、本当に恐ろしいのは「噴石」ではない。
噴石がある程度収まった時、次に訪れるのは「溶岩流」であろう。
噴煙や火山灰によって視界がゼロとなった大地で
空からは何時噴石が落ちて来るか分からない。
そんな中、避難が円滑に進むだろうか?
否、進むわけがない。
そもそも、降り注ぐ火山灰によって
外を出歩く事は人体への影響を考えると困難になるだろう。
そして、パニックに陥り漸く「避難」という回答に辿り着いた時には
溶岩が迫ってきているのだ。

しかし、火山の脅威は富士山の近県だけにはとどまらない事であろう。
その影響は関東全域にも広がる事だろう。
主な被害としては、噴煙による視界不良。
そして、火山灰による健康被害。
富士山近県と同様に、最早、対策なしでは外など歩けない死の街並みと変わるだろう。』

「・・・じゃあ、あの雲みたいに見える黒いのは・・・
全部、噴煙や灰だってのか!」

原稿は他にも想定されるであろう多くの被害が書き綴られている。
航はその量の多さに目眩を覚えるのであった・・・。
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