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15話目 津波 2

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千葉県 南房総。
津波被害に合う30分前の事だ。

この時、既に悪夢の幕は開けていた。

連日続いた余震・本震の影響から
南海沖トラフに位置するプレートが大きく沈み込んでいた。
プレートには、沈み込んだ分のエネルギーに対し、反発するように
引き戻そうとする力も発生する。
それらの力が大きければ大きい程、津波の規模も比例して強くなる。

ここで余談だが
津波の予兆を捉える自然的な現象がある。
それは
川の水位の増減だ。
プレートが押し込まれたり、引き戻されたりした場合
その規模によっては
川の水位に影響を及ぼす。
プレートのずれ込みで、一旦は水位が下がる。
その後、津波発生を受け、押し込まれてくる水量に合わせる様に増水するのだ。

川の水位は
引いている時間の方が長く、増水を確認した時にはもう手遅れだ。
川の水が増水するという事は、津波によって逃げ場を無くした水量が逆流するからである。
・・・つまり、川の水位が上昇した場合
津波はもう、すぐそこまで迫っているのだ。


そうだ。
千葉の南房総を襲った津波。
それは、南海トラフのプレートによって引き起こされた
膨大な威力の津波による被害である。

津波被害15分前
千葉県庁では、津波の発生を確認。
市民への避難警告を発令した。

・・・しかし、後に分かった事だが
死亡者・行方不明者の数は総勢170人にも及んだ。

連日の地震によって、津波を警戒していた矢先の事だ。
避難警報が出たとしても・・・直ぐに避難できる者は極わずかであろう。
例え、日ごろから備えていても
人間、欲が出る者である。
あれもこれもと準備の内に、波に飲まれた者は無数にも及んだ。

身動きの取れない者は、屋根に上り
足元スレスレを流れる濁流に、大きな絶望感を抱く事だろう。
体の不自由な者は、次の一瞬に訪れるかも知れない悪夢に
冷や汗を覚え最期を覚悟した事だろう。

足元から、じわじわと上り詰めて来る水位は、想像の数倍以上の恐怖であるだろう。
数分前まで、踝程度だった水位が
気付けば腰回りまで来ていたとしたら、そのまま水に浸かっているのはとても危険である。

というのも、洪水が起きた際
人間は、膝上まできた水位だけでも、前進する事が困難になる。
仮に、その状態で引き潮が起きた場合
電柱などにしがみ付かなければ、助かる見込みは無いと言ってもいい。

そんな中を
小舟に人を乗せ、屈強な男たちが船を押す姿を見た事があるが・・・
本来であればそれは自殺行為である。

また、一つの余談だが
これは筆者が聞いた話であるのだが・・・
ある洪水災害の際

ゴムボートに老人を乗せ、ボートの前後から男二人がそのボートを誘導している時
最悪な事に、引き潮が起きた。
その結果、彼らが助け出されたのは
流された地点から、3キロ以上も離れた場所であったという。
しかも、幸運な事に
頑丈な木にボートが引っかかり、難を逃れていたそうだ。
もし、この木が無かったら・・・

それを想像するだけでも恐怖である。と経験者は語ったそうだ。
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