東京が消えたなら。

メカ

文字の大きさ
上 下
11 / 34

11話目 リビングデッド

しおりを挟む
都内某所。河川敷。
午前7時。

「ジョージ君、小坊主!」

「ヤマさん、話はまとまったんですか?」

「あぁ、向こうの連中が荷車を3台用意してくれる。こっちは積み荷だ。」

「え・・・皆さん、歩いて移動されるつもりですか!?」

「・・・当然だろう?」

「そ、そんな・・・。これから日も高くなって暑くなるのに!危険ですよ!」

「何を莫迦な事を・・・。俺達ゃ、毎日炎天下だぞ?小坊主。」

「あ・・・。」

つい、彼らがホームレスである事を忘れ、一般人の常識のソレを枠にはめてしまう。
「普通に」考えれば、移動なら車とかバイクだろう。と・・・。

だが、良く考えてみれば
20人近くもの人員を運ぶなど、バスでもない限りは不可能だ。
ましてや必需品を携帯しての行動となると余計だ。

事実、航も
必要最低限の荷物を持ち、此処までは徒歩で来ることになった。
混乱していた事も大きいかもしれない。
だが、あの場で出来る最善は尽くしたつもりだ。

「良いか?小坊主。よく聞け。車やバイクは確かに便利だ。だがな
それを動かす為のエネルギーは何時まで持つ?
世の中同じように考えてる奴ぁ、山ほど居るんだぞ?
そうなりゃ、資源の買いだめが起きる。ガソリンだって日に日に値上がりしていくし
そんな状態で、何時までスタンドは持ち続けるよ?
それでなくても、タイヤがパンクでもすりゃただのお荷物だ。
まぁ、そんな事、滅多に起きるもんでもねぇけどな。
これから行く場所はその可能性が極めて高いんだぞ。」

「・・・。」

ヤマさんの最後の言葉は、移動を開始して間もなく実感する事となった。

「ほれ、分かったらさっさと積み込み手伝え!・・・お前も来るんだろう?」

「は、はい。」

そんな会話の後、間もなく
我々は、元居た河川敷から離れ、移動を開始した。

序盤こそ、周囲に見える人々も落ち着いて行動していたが・・・。
大通りに出た所で、景色は一変した。

鳴り響くサイレン。
随所に巡らされた規制線。
救急車に消防車の影すら見える。

ビル群に挟まれた一角からは火の手が上がり
遠くでは、家屋が倒壊している。
目に見える殆どの建物の窓は割れ、ソレが地表に降り注いだ後だった。

所々で人は倒れ、血を流し呻く。
無残にも無数のガラス片が、身に刺さり動く事すら激痛であろう状態の者も居る。

悲鳴・嗚咽・慟哭。

「嘘だろ・・・アレから何時間経ってると思ってんだ・・・。
なんでこんな事になってるんだよ・・・。」

東京の大部分で起きた停電や電波障害により
地震直後、助けを求める連絡が然るべき場に届かなかった。
散発するSOSに対応しきれず、既にパンク状態だったのだ。

日が明るくなるに連れ
漸く被害の全貌が見え始め、大きな被害を被った場から優先して行動を開始した。

・・・完全なる初動ミスである。
しかし、誰がこのミスを防げたであろうか?

その凄惨な現場は
まるで、リビングデッドさながらのホラー映画でも見ている様であった・・・。
しおりを挟む
1 / 2

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

single tear drop

BL / 連載中 24h.ポイント:198pt お気に入り:466

チェスがしたいだけなのに!

ライト文芸 / 連載中 24h.ポイント:340pt お気に入り:51

処理中です...