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4話目 激震
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某日、気温は32度を記録した。
蒸し暑さの中、航は目を覚ます。
エアコンをつけて寝ているのに、着ているTシャツは汗で濡れている。
このまとわりつく様なじっとりとした湿度、何とかならない物かと
着替えを済ませ、パソコンの前に座る昼下がり。
其処に、一本の電話が鳴り響く。
「・・・お袋?」
電話の主は、齢69になる母親だ。
「航、あんた元気にしとんの?」
開口一番、抽象的な質問だ。
「便りがないのが元気な証拠って言うだろ。一々、連絡して来んでも大丈夫や!お袋。」
「あんたって子はぁ!私の声聞くと途端に機嫌が悪くなるんやから。いい加減、直し。」
「お袋の子離れが直ったら考えてやるわい。」
「そうか、減らず口ばっかり言うてからに、ほんならもう知らんで。」
「それもひっくるめて、あんたの子じゃわい!」
何気ない会話
昔からずっと続けて来た小憎たらしい愛情表現。
心配する母の心を他所に、子供の考えは勝手に自律するらしい。
しかし俺も、もう30に近い。
親の気持ち位、察する事は容易い。
だから、何時も通りに振る舞うのだ。
これ以上の心配などさせぬように・・・。
本当は、もっと素直に話が出来れば
母も安心するのだろう。
だが、今更になって恥ずかしくて出来たものではない。
母が元気に振る舞う内は、憎まれっ子精神から解放されそうにはない。
そんな電話の後
一息つこうと、サンドイッチに手を伸ばした時。
それは起こった。
最初はゆっくりと、そして小さく・・・。
それはやがて大きく、そして強く・・・。
「地鳴り」だ。
大きな地震の直前、観測されるそれは
聞く者全てを、一瞬にして不安の色に染め上げるだろう。
「地震が来る!」
そう悟った時にはもう遅い。
波打つような揺れに襲われ、体は硬直し、立っているのがやっとだ。
この時の「1秒」ほど長く感じる時間もないだろう。
体感にして「30秒」。
実際の揺れは「10秒」だった。
そのたった「10秒」後
世界は大きく変わり果てた。
老朽化した水道管が破裂し、断水。
数本の電柱は倒れ、近隣一帯は停電に陥った。
パソコンに目を戻し、停電に気が付いた、俺は軽くパニックになった。
状況を確認しようと、テレビのリモコンを持つも
停電しているのだ、付く訳がない・・・。
エアコンも切れているし、冷蔵庫だって切れている。
このままいけば、部屋は蒸し風呂、冷蔵庫内は全滅だ。
そして、ふと過った物・・・それは
「お袋は⁉」
慌てて机に戻り、携帯を手に取るも、回線は既に込み合っていて連絡が取れない。
フリーランスという事も有り
社会的な付き合いは愚か、近所付き合いも悪い俺は
この時・・・「孤立」した。
蒸し暑さの中、航は目を覚ます。
エアコンをつけて寝ているのに、着ているTシャツは汗で濡れている。
このまとわりつく様なじっとりとした湿度、何とかならない物かと
着替えを済ませ、パソコンの前に座る昼下がり。
其処に、一本の電話が鳴り響く。
「・・・お袋?」
電話の主は、齢69になる母親だ。
「航、あんた元気にしとんの?」
開口一番、抽象的な質問だ。
「便りがないのが元気な証拠って言うだろ。一々、連絡して来んでも大丈夫や!お袋。」
「あんたって子はぁ!私の声聞くと途端に機嫌が悪くなるんやから。いい加減、直し。」
「お袋の子離れが直ったら考えてやるわい。」
「そうか、減らず口ばっかり言うてからに、ほんならもう知らんで。」
「それもひっくるめて、あんたの子じゃわい!」
何気ない会話
昔からずっと続けて来た小憎たらしい愛情表現。
心配する母の心を他所に、子供の考えは勝手に自律するらしい。
しかし俺も、もう30に近い。
親の気持ち位、察する事は容易い。
だから、何時も通りに振る舞うのだ。
これ以上の心配などさせぬように・・・。
本当は、もっと素直に話が出来れば
母も安心するのだろう。
だが、今更になって恥ずかしくて出来たものではない。
母が元気に振る舞う内は、憎まれっ子精神から解放されそうにはない。
そんな電話の後
一息つこうと、サンドイッチに手を伸ばした時。
それは起こった。
最初はゆっくりと、そして小さく・・・。
それはやがて大きく、そして強く・・・。
「地鳴り」だ。
大きな地震の直前、観測されるそれは
聞く者全てを、一瞬にして不安の色に染め上げるだろう。
「地震が来る!」
そう悟った時にはもう遅い。
波打つような揺れに襲われ、体は硬直し、立っているのがやっとだ。
この時の「1秒」ほど長く感じる時間もないだろう。
体感にして「30秒」。
実際の揺れは「10秒」だった。
そのたった「10秒」後
世界は大きく変わり果てた。
老朽化した水道管が破裂し、断水。
数本の電柱は倒れ、近隣一帯は停電に陥った。
パソコンに目を戻し、停電に気が付いた、俺は軽くパニックになった。
状況を確認しようと、テレビのリモコンを持つも
停電しているのだ、付く訳がない・・・。
エアコンも切れているし、冷蔵庫だって切れている。
このままいけば、部屋は蒸し風呂、冷蔵庫内は全滅だ。
そして、ふと過った物・・・それは
「お袋は⁉」
慌てて机に戻り、携帯を手に取るも、回線は既に込み合っていて連絡が取れない。
フリーランスという事も有り
社会的な付き合いは愚か、近所付き合いも悪い俺は
この時・・・「孤立」した。
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