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メカ

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2話目 望月 紗代という女

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千葉県某所。ある新聞社で働く女性
「望月 紗代」
年齢30歳。

学生時代からとても生真面目で
クラスに必ず一人は居たであろう「委員長」タイプだった彼女。
父親が新聞記者であった影響からか
当時から、時世の事についてはとても博識だった。

「望月さん、コレ後で課長に渡してくれる?」

「はい?あぁ、昨日のインタビュー記事ですね。分かりました。」

デスクの前に座る彼女の机は
何時も資料の山だ。

無理もない。彼女の主な業務。
それは、記事の校閲だ。
記事の誤字脱字、間違った引用や言い回しなど
数回にわたり確認し、記者との間で修正業務に当たるのが彼女の役目だ。

仕事の性質上
彼女が定時で上がる事は殆どない。
気付けば11時間・12時間勤務していた事の方がザラである。

「それじゃ、先輩。お先に失礼します。」

「はーい、気を付けてね~。」

そして、周囲を見渡せば、またお決まりの「ひとりぼっち」である。

しかし、彼女の本領発揮はここからである。
邪魔の入らなくなった広いスペースで、ポツンと一人
普段とは比較にならない速さで、仕事をこなしていく。

記事に間違いを見つけては、マーカーで線を引いていき
ちょっとしたアドバイスを書き込む。

溜まった記事も、残業3時間という短いスパンで終わらせることが出来た。

「ふぅ~。」
目頭を押さえつつ、背もたれに深く倒れ込む紗代。
途端にスイッチの切れた彼女は、もうクタクタだ。

そんな彼女の視界に、1枚の資料が目に映る。

「・・・火山性微動?」

昨今の日本では、珍しくもない言葉だ。
活火山の影響により、人間では捉える事が出来ない程の微弱な揺れ。
それが「火山性微動」だ。
そして、その揺れの状態によって、噴火なり地震なりの予兆を捉える事が出来る。

こと最近のテーマとしては、何も目新しいキーワードではない。
だが、彼女の目にその資料が止まった事は、偶然だろう。

「火山性微動によってもたらされる噴火と地震。その後の影響について・・・か。
たま~にこういう特集、テレビでも見るけど今一実感湧かないのよね。」

実感が湧かない。
・・・本当か?
日本において、尤も多くの死者数を出している天災を知っているか?
それは「津波」である。
その「津波」の初動として起こる天災・・・それが「地震」である。

「津波」という観点から「地震」を見ると
震源地が日本に近ければ近い程、「津波」の影響はそこまでではない。
では、どういった「津波」が恐ろしいのか。

それは、日本に近い「海外」で地震が起きた場合。である。

海外で巨大な地震が起きた際
そのエネルギーは、放射線状に波及していく。
結果、地震エネルギーが海へと移り、津波に変わる。
そして、扇状に広がった津波が、波のエネルギーを取り込み
勢いを増しながら日本に届くのだ。

そして、彼女が住んでいるのは
「日本の千葉県」だ。
・・・海に面している土地だ。

本当に・・・実感が湧かない。そんな態度で良い物か・・・?
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