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呪物
マニアの遺品 2
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和希さんが「兄の遺品」を隠したのは
主に、母のアンティーク品を納めている飾り棚であったり
父の書斎の本棚。
他にも、脱衣所に隠した事もあったそうだ。
最初は、遺品の内一つを隠していたそうだが
行動はエスカレートし、二つ同時に隠したり、その日の内に置き場を弄ったりと
細工を施していた。
この時の事を彼は「はっきりと覚えている」そうだ。
だが、彼自身「なぜそんな事をしたのか分からない」と述べている。
それはまるで「子供のかくれんぼ」のようだった。
両親の居ない間に、遺品を隠す場所を考えるのが、堪らなく面白いのだという。
そんな「遊び」が三ヶ月続いたある日。
とうとう、遺品の一つである「くるみ割り人形」が見つかってしまった。
発見したのは母だったそうだが
家族でその話題が出た時、彼はシラを切ったという。
気味が悪いと捨てられるか。と思ったが
そのくるみ割り人形を母は気に入り、アンティークの棚に戻したという。
この一件で肝を冷やした彼は、残るノートを回収。
再び、自室で保管する日々が始まった。
そんなある日の事だ。
和希さんは、兄の遺したノートに再び目を通していた。
途中から白紙になったページ。
何を思ったか、彼は最後のページをめくった。
『田上 庸一(仮名と思われる)。 ○○県○○市~に在住。
○○月○○日 ○○のマーケットにて出会う。』(詳細は伏せました)
何気なく開かれた最後のページには、自宅近くで行われた
骨董市で出会ったとされる「田上」なる男の情報が書かれていた。
ふと気づいた時、彼は手に持った携帯で「田上」の連絡先の番号を打っていたという。
「・・・もしもし。」
電話に出たのは野太い声の男だった。
「あの・・・た、田上さん・・・ですか?」
「・・・えぇ、そうですが・・・。」
「○○(兄の名前)という男性をご存じでしょうか?」
「あぁ・・・○○君。知ってますが・・・貴方は?」
「お、弟の和希って言います!兄の遺したノートにそちらの情報が・・・。」
「あぁ、弟さんね。
先日のマーケットで意気投合しましてね。その時のメモでしょ。」
「失礼ですが・・・田上さんも『そういう物』がお好きなので?」
好奇心から突いて出た言葉だった。すぐに「しまった!」と後悔を覚えた。
「えぇ・・・彼が亡くなったのは存じてます。お悔やみ申し上げます。」
「兄がお世話になりました。・・・それで、一つお話があって・・・。」
「何です?」
「ある品について、ご意見を聞きたくて。」
「・・・分かりました。直接会ってお話した方が良さそうだ。
後日、都合の付く日を連絡します。それでも宜しいですか?」
「はい。是非お願いします。」
電話を切った後、彼は酷く後悔したそうだ。
別段、何かに困っていた訳でもないのに
兄の知り合いに連絡を取った。その上、用事もないのに呼び出したのだ。
「何を話すって言うんだよ・・・。」
彼は、その後しばらく頭を抱える事になった。
主に、母のアンティーク品を納めている飾り棚であったり
父の書斎の本棚。
他にも、脱衣所に隠した事もあったそうだ。
最初は、遺品の内一つを隠していたそうだが
行動はエスカレートし、二つ同時に隠したり、その日の内に置き場を弄ったりと
細工を施していた。
この時の事を彼は「はっきりと覚えている」そうだ。
だが、彼自身「なぜそんな事をしたのか分からない」と述べている。
それはまるで「子供のかくれんぼ」のようだった。
両親の居ない間に、遺品を隠す場所を考えるのが、堪らなく面白いのだという。
そんな「遊び」が三ヶ月続いたある日。
とうとう、遺品の一つである「くるみ割り人形」が見つかってしまった。
発見したのは母だったそうだが
家族でその話題が出た時、彼はシラを切ったという。
気味が悪いと捨てられるか。と思ったが
そのくるみ割り人形を母は気に入り、アンティークの棚に戻したという。
この一件で肝を冷やした彼は、残るノートを回収。
再び、自室で保管する日々が始まった。
そんなある日の事だ。
和希さんは、兄の遺したノートに再び目を通していた。
途中から白紙になったページ。
何を思ったか、彼は最後のページをめくった。
『田上 庸一(仮名と思われる)。 ○○県○○市~に在住。
○○月○○日 ○○のマーケットにて出会う。』(詳細は伏せました)
何気なく開かれた最後のページには、自宅近くで行われた
骨董市で出会ったとされる「田上」なる男の情報が書かれていた。
ふと気づいた時、彼は手に持った携帯で「田上」の連絡先の番号を打っていたという。
「・・・もしもし。」
電話に出たのは野太い声の男だった。
「あの・・・た、田上さん・・・ですか?」
「・・・えぇ、そうですが・・・。」
「○○(兄の名前)という男性をご存じでしょうか?」
「あぁ・・・○○君。知ってますが・・・貴方は?」
「お、弟の和希って言います!兄の遺したノートにそちらの情報が・・・。」
「あぁ、弟さんね。
先日のマーケットで意気投合しましてね。その時のメモでしょ。」
「失礼ですが・・・田上さんも『そういう物』がお好きなので?」
好奇心から突いて出た言葉だった。すぐに「しまった!」と後悔を覚えた。
「えぇ・・・彼が亡くなったのは存じてます。お悔やみ申し上げます。」
「兄がお世話になりました。・・・それで、一つお話があって・・・。」
「何です?」
「ある品について、ご意見を聞きたくて。」
「・・・分かりました。直接会ってお話した方が良さそうだ。
後日、都合の付く日を連絡します。それでも宜しいですか?」
「はい。是非お願いします。」
電話を切った後、彼は酷く後悔したそうだ。
別段、何かに困っていた訳でもないのに
兄の知り合いに連絡を取った。その上、用事もないのに呼び出したのだ。
「何を話すって言うんだよ・・・。」
彼は、その後しばらく頭を抱える事になった。
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