骸行進

霊視鑑定人X氏による鑑定など。

呪詛、録音。

これは、現在X氏が関わっているとされる「一件」である。

そして、これまで関わって来たどんな「呪物」よりも「危険」な物だという。

それが「とある録音データ」である。

その「録音データ」は「ある事件で発見された証拠品の一部」だそうだ。

何より、データ内の音声が極めて異質なモノである事から
証拠品として押収された後、警官らもそのデータに関わる事を嫌がったという。

・・・その内容・・・。

いじめを苦に亡くなった学生が、当事者たちに向かい延々と
自分に対して行ったいじめ行為の内容と彼等に対する呪詛を吐き出しているものだったという。

そして、なぜそのデータがX氏の元に渡る事になったのか・・・。

・・・起きてしまったのだ。
その呪詛の内容と近しい・・・恐るべき事故が。

最初の被害者は、亡くなった青年に対し直接的な暴行（殴るなど）を加えていた人物だという。
そして、その人物は「実質的」利き手を失った。

事故により、利き手に後遺症を残す事となったのだ。

録音データの中には、その利き腕に対して
殴られた恨みと共に、その腕を「使えなくしてやる」や「奪ってやる」などの言葉が
記録されていたという。

あくまでもこれは一例にすぎず、その怨念の篭った録音は総勢5人に対し3時間以上に及んだという。

そして、私があえて「最初の被害者」と記した事・・・皆さんなら察する事が出来るだろう。

そして、そのデータを恐れた加害生徒の親御さんたちにより
録音データがX氏の元に送られる事となったのだ。

警察の調べによって分かったのは
亡くなった青年は、二年に渡りいじめを耐えていたことが分かった。
そして、青年の部屋からは
その二年間に及ぶ、いじめ行為への恨み辛みを綴った手記なども見つかったそうだ。

青年は亡くなる直前まで、その怨念の炎を燃やしていた事だろう。

X氏によると、この録音データは

「最早、対象を選ぶような優しいモノではない。」という。

聞く者全てに恨みをぶつける呪物と化してしまった・・・。

そして、そのデータは今、まさに・・・
X氏の持つ「呪物の倉庫」に保管されているのだという。