骸行進

視える友人「絢女」の話

ハガキ

これは、前回記事「限界団地」の続きである。

件の団地を訪れてから、絢女は妙な胸騒ぎの続く数日だったそうだ。
とはいっても、その心当たりも「団地」以外に思い当たる節もなく
周囲で何か不吉な事が起きた訳でもない。

・・・ソレが、私や絢女の様な人種には「逆に」怖いのである。

人よりも「視る・聴く」の感覚が優れているからこそ
「何かが可笑しい・・・。」そう思った時、その異変に気付きやすい。
だが、普段であれば直ぐに見つかる「異変」が見当たらないのだ。
・・・もどかしい事、この上ない。（はっきり言って「気味が悪い」まである。）

だが・・・そんな数日が過ぎた後
共に「限界団地」へ行ったメンバーの元に
一通のハガキが届く。

不思議な事に、送り主は一切不明。
ハガキの内容も、裏面にでかでかと「く」と一文字書かれていただけで
それ以外、目立った情報と言えば「消印」だろう。

その「消印」というのが、件の限界団地にあった郵便局のものであったそうだ。

ハガキの存在は、直ぐにメンバー全員へ情報の共有が為されたが
結局、そのハガキの意図は分からず仕舞いだった。

事が動いたのは、その二日後だった。
最初にハガキを受け取ったメンバーとは別の人物の元に
今度は「ど」の文字が書かれたハガキが届く。

それだけではない。
その日を境に、次々とメンバーの元へハガキが届き
とうとう絢女の元にもハガキは届いた。
そのハガキは、全部で6枚だったそうだ。

彼女が受け取ったハガキには「な」の文字が。

他のメンバーが受け取ったハガキの文字は「と」、「に」・「る」だったという。

その全てが揃った時・・・最初にこれが何を意味するのかを理解した絢女は
背筋が凍ったという。

何もかもがバラバラなハガキ。
・・・否、バラバラだからこそその意味に気付いたと言える。

そう。
このハガキは「アナグラム」を利用しているものだ。

このハガキを消印の日付順に並べると

「にどとくるな」となったそうだ。
「二度と来るな」そう念押しされているのだ・・・。

一体誰に？

消印の日付がバラバラな事を考えるに「イタズラ」の可能性は高い。
事実、ハガキが届いた日付もバラバラだったという。

しかし、彼等の住所を正確に知って居なければその「イタズラ」は成立しない。

となると、私が思うに
そのハガキが投函されたのは「あの時」以外に考えられない・・・。

もしかすると、あの時・・・あの場には「もう一人」居たのかもしれない・・・。

だが、真相は闇の中である・・・。