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長編特集
はしご。 7 「神社」
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翌朝。午前10時。
私と遠藤は例の神社へとやって来ていた。
この時の我々は、何時もとは対照的な行動を採っていたと今では思う。
神社を前に、怯える遠藤。
それを後目に参道へとズカズカ入り込む私。
普段であれば「逆」だ。
柔道経験者で尚且つ体格も良い遠藤は、まるで「怖いもの無し」の性格だ。
その彼が、件の神社を前に二の足を踏んだ。
方や、私は
且つてテレビで聴いた恐怖は何処吹く風。
丁寧に掃除の行き届いた参道に、感動すら覚える程
神社内部の景色に胸踊らせていた。
遠藤は言う。
「怖い訳ではない」と。
しかし、なぜか入り口から一歩中には「入ってはいけないのではないか?」という疑問が
脳内に渦巻いていたそうだ。
そして・・・。
「今じゃない。」
彼はそう言うと、さらに後退る様に振り返り歩を進めた。
私は不思議に思いつつも彼を追い、その疑問を彼と議論した。
「今じゃない?・・・どういう事?」
「分からない、でも・・・呼ばれてるんだとしたら今じゃない。」
「・・・。」
私よりも正確に『何か』を捉える彼。
今回の主役は彼なのか?とふと思った事も有る。
故に、彼に主導を譲り近くの商店街で時間を潰す事になった。
そして、時刻は午後2時を回った。
「行くぞ。」
「何かピンときた?」
「かもね。」
改めて、神社を前にした我々は「元通り」だった。
「ほら、行くぞ。クポー。」
「・・・いや・・・ちょっと、遠藤!」
入り口の外からでも聞こえる。
女性の悲痛な叫び。
「あの時と同じ」だ。
参道を通り、境内へ続く階段。
「い゛や゛ぁぁぁぁぁ!」「もう、や゛だぁぁ!」
鼓膜を刺す悲鳴。
・・・思わず耳を塞いだ。
その手を掴み、遠藤は私を境内へと誘導する。
「ほら、手退かせ。お前が聴かないで誰がこの一件を解決すんの。」
テレビで見聞きした・・・あの場所だ。
改めてその場に立った私は、半分引付を起こしていたのだと思う。
遠藤に軽く肩を叩かれ、我に返ったのだ。
境内の中心から大きな悲鳴が聞こえる・・・。
だが、私は不思議と境内の端にある一本の木に意識が行った。
「遠藤・・・あそこだ。」
何の木なのかは分からない。
だが、背丈の3~4倍程度の大きさの木。
その隣には、稲荷を祀る為の小さな祠と、祠に見合った小さな鳥居があった。
「遠藤。お前・・・この稲荷に呼ばれたんだな?」
「・・・え?」
「一度ここで手を合わせておいた方が良いぞ。」
「分かった。」
すると、手を合わせた遠藤は5秒ほどの間を開けた後
急に涙を流したのだ。
「呼ばれてただろ?」
「・・・うん。」
その詳細を知るべく、遠藤に改めて話を聞く事となった。
私と遠藤は例の神社へとやって来ていた。
この時の我々は、何時もとは対照的な行動を採っていたと今では思う。
神社を前に、怯える遠藤。
それを後目に参道へとズカズカ入り込む私。
普段であれば「逆」だ。
柔道経験者で尚且つ体格も良い遠藤は、まるで「怖いもの無し」の性格だ。
その彼が、件の神社を前に二の足を踏んだ。
方や、私は
且つてテレビで聴いた恐怖は何処吹く風。
丁寧に掃除の行き届いた参道に、感動すら覚える程
神社内部の景色に胸踊らせていた。
遠藤は言う。
「怖い訳ではない」と。
しかし、なぜか入り口から一歩中には「入ってはいけないのではないか?」という疑問が
脳内に渦巻いていたそうだ。
そして・・・。
「今じゃない。」
彼はそう言うと、さらに後退る様に振り返り歩を進めた。
私は不思議に思いつつも彼を追い、その疑問を彼と議論した。
「今じゃない?・・・どういう事?」
「分からない、でも・・・呼ばれてるんだとしたら今じゃない。」
「・・・。」
私よりも正確に『何か』を捉える彼。
今回の主役は彼なのか?とふと思った事も有る。
故に、彼に主導を譲り近くの商店街で時間を潰す事になった。
そして、時刻は午後2時を回った。
「行くぞ。」
「何かピンときた?」
「かもね。」
改めて、神社を前にした我々は「元通り」だった。
「ほら、行くぞ。クポー。」
「・・・いや・・・ちょっと、遠藤!」
入り口の外からでも聞こえる。
女性の悲痛な叫び。
「あの時と同じ」だ。
参道を通り、境内へ続く階段。
「い゛や゛ぁぁぁぁぁ!」「もう、や゛だぁぁ!」
鼓膜を刺す悲鳴。
・・・思わず耳を塞いだ。
その手を掴み、遠藤は私を境内へと誘導する。
「ほら、手退かせ。お前が聴かないで誰がこの一件を解決すんの。」
テレビで見聞きした・・・あの場所だ。
改めてその場に立った私は、半分引付を起こしていたのだと思う。
遠藤に軽く肩を叩かれ、我に返ったのだ。
境内の中心から大きな悲鳴が聞こえる・・・。
だが、私は不思議と境内の端にある一本の木に意識が行った。
「遠藤・・・あそこだ。」
何の木なのかは分からない。
だが、背丈の3~4倍程度の大きさの木。
その隣には、稲荷を祀る為の小さな祠と、祠に見合った小さな鳥居があった。
「遠藤。お前・・・この稲荷に呼ばれたんだな?」
「・・・え?」
「一度ここで手を合わせておいた方が良いぞ。」
「分かった。」
すると、手を合わせた遠藤は5秒ほどの間を開けた後
急に涙を流したのだ。
「呼ばれてただろ?」
「・・・うん。」
その詳細を知るべく、遠藤に改めて話を聞く事となった。
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