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長編特集
はしご。 3 「じゆうちょう」
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「ソレ」を見た一同は、一瞬にして凍り付いた。
何せここは「ダム」である。
例えイタズラの類であったとしても、あまりにも「不釣り合い」。
しかも、年季の入ったそのボロボロのノートは
誰にも触られた事がない様で、表面は日に焼け色落ちが激しいにも関わらず
裏側の表紙にはしっかりと色が残っていたのだ。
雨風に濡れたせいもあり、文字の印刷自体は滲んでしまっているが
逆にそのコントラストの差が「誰も触っていない」事を物語る。
無造作に捨て置かれた「ソレ」を、一同は凝視しかできなかった。
それは何故か・・・。
「知っている」からだ。
「そういった物」に「無暗やたらと触る物ではない。」
他でもない、ソレを「彼(筆者)は許さない。」と。
多くの体験を共にしてきた仲間たちだ。
指示なく触れればどうなるか、よく理解しているのだ。
しかし、かくいう私自身が「ソレ」が「安全か分からなかった」のだ。
「・・・小学生・・・それも低学年用のノートだな・・・。」
その一言を絞り出すのがやっとだ。
この手のイタズラに使われるのは、基本的には3種類。
「こくご」「さんすう」「絵日記」だ。
なぜなら、この3種類のノートは
「楽に不安を煽る」事が可能なのだ。
例えば「こくご」のノート。
カタカナや、覚束ない漢字の練習に何度も同じ言葉が書かれている中
ページをめくると、ノート一杯に「殺す」と連続で書かれている。
とか。
「絵日記」に関して言えば
夏休みの楽しい絵が、日にちを経るに連れて怪しい内容になったり・・・。
その点、「じゆうちょう」は「不安の導入」が難しい。
イタズラで「ソレ」を選んだとしたら
完全にセンスを問われるものだ。
だからこそ、イタズラではないのだと思えてしょうがないのだ。
「先輩、コレどうします?」
「・・・どうって言われてもなぁ・・・。」
「でもこういうの、分かるのお前だけだぞ?」
「俺も良く分かんねぇんだもん・・・。とにかく触らない方が良いべ。」
「じゃあ、先行く?」
「そうするか。」
あのノートはイタズラだ。
そう言い聞かせ、先を急ぐことにした我々だが
そのノートは後に、我々を驚かせる事となるのだ。
・・・無理もない。
通り過ぎ去っていったはずのノートが、別の場所で再び見つかってしまうのだから。
発電施設近辺。
当時の従業員が使っていたであろう、仮設トイレの脇に「ソレ」はあった。
「おい。これってさっきの・・・?」
「・・・小島、伊藤。わりぃけどさっきの所見てきてくれるか?」
その後まもなく、携帯が鳴り・・・
「ノート無くなってるぞ、どういう事だ!?」
独りでに移動してきたノート・・・。
もはや、中を見ないという選択肢は残されていなかった・・・。
何せここは「ダム」である。
例えイタズラの類であったとしても、あまりにも「不釣り合い」。
しかも、年季の入ったそのボロボロのノートは
誰にも触られた事がない様で、表面は日に焼け色落ちが激しいにも関わらず
裏側の表紙にはしっかりと色が残っていたのだ。
雨風に濡れたせいもあり、文字の印刷自体は滲んでしまっているが
逆にそのコントラストの差が「誰も触っていない」事を物語る。
無造作に捨て置かれた「ソレ」を、一同は凝視しかできなかった。
それは何故か・・・。
「知っている」からだ。
「そういった物」に「無暗やたらと触る物ではない。」
他でもない、ソレを「彼(筆者)は許さない。」と。
多くの体験を共にしてきた仲間たちだ。
指示なく触れればどうなるか、よく理解しているのだ。
しかし、かくいう私自身が「ソレ」が「安全か分からなかった」のだ。
「・・・小学生・・・それも低学年用のノートだな・・・。」
その一言を絞り出すのがやっとだ。
この手のイタズラに使われるのは、基本的には3種類。
「こくご」「さんすう」「絵日記」だ。
なぜなら、この3種類のノートは
「楽に不安を煽る」事が可能なのだ。
例えば「こくご」のノート。
カタカナや、覚束ない漢字の練習に何度も同じ言葉が書かれている中
ページをめくると、ノート一杯に「殺す」と連続で書かれている。
とか。
「絵日記」に関して言えば
夏休みの楽しい絵が、日にちを経るに連れて怪しい内容になったり・・・。
その点、「じゆうちょう」は「不安の導入」が難しい。
イタズラで「ソレ」を選んだとしたら
完全にセンスを問われるものだ。
だからこそ、イタズラではないのだと思えてしょうがないのだ。
「先輩、コレどうします?」
「・・・どうって言われてもなぁ・・・。」
「でもこういうの、分かるのお前だけだぞ?」
「俺も良く分かんねぇんだもん・・・。とにかく触らない方が良いべ。」
「じゃあ、先行く?」
「そうするか。」
あのノートはイタズラだ。
そう言い聞かせ、先を急ぐことにした我々だが
そのノートは後に、我々を驚かせる事となるのだ。
・・・無理もない。
通り過ぎ去っていったはずのノートが、別の場所で再び見つかってしまうのだから。
発電施設近辺。
当時の従業員が使っていたであろう、仮設トイレの脇に「ソレ」はあった。
「おい。これってさっきの・・・?」
「・・・小島、伊藤。わりぃけどさっきの所見てきてくれるか?」
その後まもなく、携帯が鳴り・・・
「ノート無くなってるぞ、どういう事だ!?」
独りでに移動してきたノート・・・。
もはや、中を見ないという選択肢は残されていなかった・・・。
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