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長編特集
はしご。 2 「ダム」
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件のダムに到着した我々だが、4人共に入り口で硬直していた。
別段「怖い」という訳ではない。
ダム方面から流れて来る風に「涼しさ」を覚え、足を止め休憩がてらに話をしていたのだ。
凡そ5分程度だったと思う。
互いに入り口から見たダムの感想を言い合いながら歩を進める。
ハッキリ言ってしまうと、私は感想と言う程の言葉が出てこなかった。
どこのダムも、ほぼ似たような造りだからだ。
一本道が続き、道中には中央管理棟の様な建物。
そして、奥には発電施設らしき大きな仕掛け。
道の奥をライトで照らすも
「暗いだけの雰囲気詐欺」としか言いようがない。
実に恐ろしきは、ダムの水が流れつく貯水槽方面である。
「このダム、どうして放置されてるんだろうな。」
遠藤のふいの発言。
実際、放置されているというよりも「管理する必要がないだけ」で
「必要な時には人は来る。」
完全に打ち捨てられたダムなど、殆ど存在していないだろう。
とはいえ、他の心霊スポットと明らかに違う事がある。
それは、落書きの多さだろう。
落書きと聞けば、真っ先に思い付くスポットは「トンネル」ではないか?
次点に挙げられるのは「廃ホテル」や「廃病院」といった「廃施設」だろう。
なぜか、全国的に知名度や数も多い「ダム」には
そういった落書きが殆ど存在していない。
まぁ無理もないだろう。
「ダム」というだけで、人は長居をしない。
簡単な話だ。
単に「五月蠅くて会話にならない」
流れ落ちる水の音に「そういった風情」もへったくれもありゃしない。
小声で話そうものなら、それだけで「今、何かきこえなかった?」の出来上がりだ。
それともう一つ。
これはあくまでも個人的な感想だが
ダムで吹く風は、それこそ流れ落ちる水によって巻き上げられる風だ。
その風は、常に「向かい風」を思わせる。
それが、感覚的に「心理的な進み辛さ」を生んでいる。
行きは良い良い、帰りは怖い。
散策を終えた者達が出入口に向き直った時、その「向かい風」は「追い風」に変わる。
まるで「さっさと出て行け。」と言わんばかりに。
ある種、それが「圧」に感じる者も居るだろう。
そして、振り返ったそこには・・・。なんて事がよくある。
そうして、我々は様々な推論を話しながら、管理棟近辺へと辿り着く。
その管理棟の建物の奥。
発電施設への道に掛かる橋の入り口付近。
管理棟の影になる様な角に、後輩の伊藤はある物を見つける。
「先輩!何かあった!」
其処にあったのは、且つて我々も見慣れていた一冊のノート。
「じゆうちょう」と掛かれたその表紙。
雨風に晒され、表紙の色は抜け、ノート自体もボロボロだ。
その発見が、次なるスポットへの入り口となってしまったのだ・・・。
別段「怖い」という訳ではない。
ダム方面から流れて来る風に「涼しさ」を覚え、足を止め休憩がてらに話をしていたのだ。
凡そ5分程度だったと思う。
互いに入り口から見たダムの感想を言い合いながら歩を進める。
ハッキリ言ってしまうと、私は感想と言う程の言葉が出てこなかった。
どこのダムも、ほぼ似たような造りだからだ。
一本道が続き、道中には中央管理棟の様な建物。
そして、奥には発電施設らしき大きな仕掛け。
道の奥をライトで照らすも
「暗いだけの雰囲気詐欺」としか言いようがない。
実に恐ろしきは、ダムの水が流れつく貯水槽方面である。
「このダム、どうして放置されてるんだろうな。」
遠藤のふいの発言。
実際、放置されているというよりも「管理する必要がないだけ」で
「必要な時には人は来る。」
完全に打ち捨てられたダムなど、殆ど存在していないだろう。
とはいえ、他の心霊スポットと明らかに違う事がある。
それは、落書きの多さだろう。
落書きと聞けば、真っ先に思い付くスポットは「トンネル」ではないか?
次点に挙げられるのは「廃ホテル」や「廃病院」といった「廃施設」だろう。
なぜか、全国的に知名度や数も多い「ダム」には
そういった落書きが殆ど存在していない。
まぁ無理もないだろう。
「ダム」というだけで、人は長居をしない。
簡単な話だ。
単に「五月蠅くて会話にならない」
流れ落ちる水の音に「そういった風情」もへったくれもありゃしない。
小声で話そうものなら、それだけで「今、何かきこえなかった?」の出来上がりだ。
それともう一つ。
これはあくまでも個人的な感想だが
ダムで吹く風は、それこそ流れ落ちる水によって巻き上げられる風だ。
その風は、常に「向かい風」を思わせる。
それが、感覚的に「心理的な進み辛さ」を生んでいる。
行きは良い良い、帰りは怖い。
散策を終えた者達が出入口に向き直った時、その「向かい風」は「追い風」に変わる。
まるで「さっさと出て行け。」と言わんばかりに。
ある種、それが「圧」に感じる者も居るだろう。
そして、振り返ったそこには・・・。なんて事がよくある。
そうして、我々は様々な推論を話しながら、管理棟近辺へと辿り着く。
その管理棟の建物の奥。
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管理棟の影になる様な角に、後輩の伊藤はある物を見つける。
「先輩!何かあった!」
其処にあったのは、且つて我々も見慣れていた一冊のノート。
「じゆうちょう」と掛かれたその表紙。
雨風に晒され、表紙の色は抜け、ノート自体もボロボロだ。
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