骸行進

メカ

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葬儀業者「島さん(仮名)」の話。

屋根裏の物の怪 2

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数日後の事だ。
約束通り、島さんは老人の遺体が安置されているという自宅へ向かった。

玄関先には、依頼者の弟が既に待ち構えていた。(以下、弟さんを「清水(仮名)さん」と呼称する)

清水さんの顔を見た島さんには、一種の不安を覚えたそうだ。
無理もない。
何年も絶縁状態にあった父の亡骸を・・・しかも半ば放置されている姿を
その眼で確認しなくてはならないのだ。
その心中たるや、想像し難い物だろう。

「では・・・鍵、開けますから。」

清水さんが玄関の鍵を開ける僅かな間で、島さんはその実家の異常性を目の当たりにしていた。
窓のシャッターは閉められ、脇に見える小さな小窓にはビニールテープで隙間を埋めているのだ。
恐らく、窓も内側から同様の処置が施されている事だろう。

だが、その理由は直ぐに察する事が出来る。
「匂い」だ。
彼等の父が亡くなり、発見された理由も「悪臭」だった。
即ち、この目張りのような処置は「外に匂いを漏らさない為」

仮にこの処置を清水さんの兄が行ったのだとしたら、その行動の異常性に怖気を感じる。
考えても見ろ。
父の遺体が眠っている自宅で、窓一面にビニールテープを張っていく姿。
死臭・腐臭に耐えながら家のすべての窓にそんな処置を施している姿。
とてもではないが「マトモ」ではない。

「あれ・・・開かない・・・。」

清水さんが、鍵を回しながら扉に手を掛けるも
玄関の戸は開かなかった。

「どうしました?」

「ソレが・・・鍵は開いたのに、開かないんですよ。」

島さんは直ぐに察した。
それも、彼の兄が何かしらの細工をしたに違いない。と

その後、扉は2時間かけて開かれた、
戸の内側、ドアの手すり部分に板を噛ませる事で封鎖されていたのだ。

幸い、板は木材で薄く何度も戸を力強く引く事で折れた。
それと同時に、勢いよく開く扉・・・即座に鼻を刺す刺激臭。
二人はその場でむせ込んだという。

「くっそ!兄貴の野郎。これじゃ親父も中で腐ってるだけだろぉ!」

「し、清水さん。一度引き上げましょう。対策もなしに中に入ったら大変だよ。」

「こんな所までご足労かけて、この有り様じゃ・・・申し訳ない。」

一度葬儀会社へ引き返した二人は、応接室にて自宅の異常性について語る。

「・・・多分、兄貴は実家に入りたくないんですよ。」

「・・・どういう事です?」

「俺らが子供の頃の話なんですけどね。
親父は昔から厳格・・・というか関白で、すぐに怒っては手を挙げる人でした。
俺達が子供の頃、イタズラとかをしても言葉より先に手が出て来る人。
で、決まって最後に言うんですよ。
『次同じ事やったら、屋根裏の物の怪に食わせるぞ!』って。」

「屋根裏の?」

「えぇ、今となっては迷信とか言い訳が出来ますけど・・・
あの家には本当に何か居るんですよ。子供の頃から良く奇妙な経験していたのを
さっき、思い出しましたよ。兄貴も良く薄気味悪がってましたから・・・。」

島さんは、彼等の実家であった奇妙な体験を耳にする事になった。
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