骸行進

メカ

文字の大きさ
上 下
316 / 336
長編特集

旅館 7 人形

しおりを挟む
一階を見終えた私は、二階に続く階段前へとやって来た。
とはいっても、脱衣所を抜ければすぐ目の前が階段だった。

不安を覚えながらも、携帯越しに待つ皆に二階へ進む旨を伝えた。

一同はいよいよかと声を掛けて来る。

「よし・・・行きます!」

一歩一歩、階段を踏み締め・・・踊り場を越え
二階入り口に辿り着く。
この間も、妙に気配だけが鬱陶しくてたまらない。

いっそ、音でも聞こえてくれればまだ良いのだが・・・。

ここで、私はある事を思いつくのだ。

「そうだ、皆。丁度いいから話すんだけどさ・・・。」

私は、絢女から聞いた話を彼等にもしようと思ったのだ。

「この旅館、特別変な事件とかが起きた訳じゃないのに
心スポとしては、そこそこの知名度だよね?
さっきさ、絢女から聞いたんだけどさ。
・・・この旅館、霊道が3本通ってるってさ。」

「・・・え、マジかよ!」
「どういう事!?」
「スゲェじゃん、詳しく教えてよ。」

受話器から聞こえる皆の声が、暗闇の中
唯一の安心材料だ。

「この旅館、元々はそんな事なかったらしいけど
絢女が昼間に、周辺の探索に出たらしいんだよ。
そしたら、見事に3か所・・・見つけたらしい。
お墓だったり、お寺だったり・・・で、ここからが本題なんだけど
それらの建物は、旅館の後から出来たらしいんだよ。
だから、ある時期からここではそういう事が起きてしまっているんだとさ。
・・・しかも、その霊道
この旅館を通る上、それぞれを直線で結ぶと三角形になるらしい。」

早い話、この旅館は霊道に囲まれているのだ。
その霊道の内部に位置する旅館故に、頻発するのだ。

その話をしながらも、廊下を歩き聞き耳を立てていたが
メンバー以外の声や音もせず、二階のトイレへと向かった。

本来であればそれぞれの居室も見て回りたかったのだが、プライバシーの面からも
客室への入室はしない事となっていた。

しかし、ここに来て私は一類の不安を持っていた。
考えないようにしていた事だ。

『隠されているハズの日本人形が見当たらない。』という事だ。

残すところ、二階のトイレと先送りにしてしまったアーケードコーナー。

またあの場に戻るのか?と
私は一人、焦燥感を抱いていたものだ。

『どうか、此処にありますように・・・。』

その願いも虚しく、トイレにはなかった。

「・・・あのさ、日本人形探すのは流石に無理があるよ・・・。
そっちは負けで良いからさ、隠した場所教えてよ。回収するからさ。」

「・・・え~・・・まぁ、でもライトも持って行ってないんだもんな。
分かった。7班ペア、何処に隠したの?」

「えっとね、脱衣所側の階段から見て、三つ目の消火器の横にひっそりと立ってるw
見ちゃったもんだからさ・・・怖くて。適当に置いてきちゃったんだよ。」

「わかった、ありがとう。」

人形を回収するべくトイレから出た私は
足元を注意深く観察しながら、来た道を戻っていた。

・・・だが、結論を言うと
日本人形は見つからなかった。

試しにその後も二往復したが・・・無かったのだ。

その事を報告後、一度大広間に戻る事となった・・・。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

あなたのサイコパス度が分かる話(短編まとめ)

ミィタソ
ホラー
簡単にサイコパス診断をしてみましょう

処理中です...