骸行進

メカ

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長編特集

旅館 3 緊張

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絢女の話を聞き終え、時間となり大広間に戻った。
皆が一様に、盛り上がりを見せる中、青い顔が二つ。

「皆さん、集まりましたか?ペアを決めますよ!」

主催者の呼びかけに応じ、一人ずつクジを引く。

その時の熱気たるや、青い顔が一つ二つあった所で
お構いなしに事は進む。

「では、最初の組。行ってらっしゃい!」

その一声で、先攻 第一ペアが大広間から出た。
最初こそ、何も問題はなく進行していた。
続く、後攻 第二ペアも同様だった。

事が動いたのは第三ペアの時だ。
彼等は探索開始から凡そ7分で青い顔をぶら下げて大広間に帰って来たのだ。

彼等が言うには

「三階を探索中、複数人の歩く足音が聞こえた!」という事だったが・・・。

それを聞いた一同は皆、同じ様な質問をぶつけた。

「音は何処から?大きかった?どんな感じだった!?」

皆、分かっていたのだ。廊下で足音が聞こえる異常性を。

この旅館の廊下は、全面が絨毯敷きであり宿泊客もスリッパを使っている。
・・・つまり「故意に音を出す意思」が無ければ、音など鳴る事は無い。
百歩譲って鳴ったとしても、スリッパで絨毯を擦る様に歩かねばならない。

廊下を歩いた際、若干
絨毯の繊維を擦っている感覚はあっても
喋って居れば、音など殆ど気にならないものだ。

「アレは、スリッパの音じゃなかった!素足だよ!!素足でトントン踏み歩いてる感じ。
客室の中からも聞こえてた!お前らの部屋かもよ!マジですげぇよ!」

第三ペアの片割れの男が興奮気味に言う。
だが、その手は小刻みに震えていた。

私は「その現象」を勝手ながら「スリラー・ハイ」と呼んでいる。
感情では恐怖が生まれているハズなのに、体験した事で興奮が勝ってしまう。

この「スリラー・ハイ」は「非常に危険」である。

なせならその現象が「伝染」していくからである。
しかも、己が危険な状態であるにも関わらずどんどんと先を目指すのが特徴だ。

いわゆる「憑いている・憑きやすい・呼ばれている」状態である。

本来ならば、企画をここで止めるべきだった・・・。

この「スリラー・ハイ」の先に待つ「結果」を
私は嫌と言う程、見聞きしていたというのに。

だが、こうなってしまってはもう遅い。
体験をした者がでた時点で、否応なしにその場は熱を帯びるのだから。

私は、次に日本人形を探す番である絢女とそのペアの方へと視線を向けるが
既に、他のメンバーに囃し立てられるように・・・。
あれよと言う間に大広間から出されてしまっていた。

この状況をロクに会話できなかった事はこの後の後悔であろう。
そうして、私たちは絢女達の帰りを待つことになった。
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