骸行進

メカ

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筆者(メカ)の経験談。

修行の開始と合間で・・・。 終

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翌朝。

私はX氏の事務所へ行く道中、倒れたそうだ。
幸い、移動時などはX氏のお弟子さんと共に行動する事が約束事だった為
大事には至らなかった。

だが、私自身
なぜ倒れたのか、覚えていないのだ。
空腹に耐えかねての事か、それとも昨晩の出来事による寝不足か。

どちらにしても、健康面・精神衛生上共に宜しくない。

次に目覚めた時、私は薄暗い一室に居た。
最初に目に映ったのは、小さな祭壇とX氏を含む4人の袈裟装束の人物。

そして、部屋の四隅に建てられた蠟燭と盛り塩。
誰が見ても分かる・・・「結界」だ。
それも、内に入らせない為の物ではない。
・・・外に逃がさない為の物である・・・。

「道中で倒れたって聞いてね。もう悠長にしてられないって事で昔の同僚に集まってもらった。」

「・・・え?」

未だに状況が掴めない。
何時もであれば、察し良くスムーズに話が入って来るのだが・・・。
その時だけは何故か・・・X氏の一言一言を理解するのに手間取った。

簡単に言えば、お経をリレー方式で繋げ休むことなくお祓いを続ける。という物だ。
たったそれだけの説明を理解するのに5分以上も費やしたのだ。

「今日は一日掛かりになると思うから、覚悟しておいてね。」

その上、X氏の一言で理解はしても納得できていない心が、一抹の不安を覚える。

お祓いが始まってどれ位が過ぎただろうか・・・。

無意識のうちにポツリと一言

「・・・嫌だ。」と呟く自分が居る。

その一言を皮切りに、溢れる怒り。

「嫌だ嫌だ、辞めろぉぉ!」
両手を床に何度も何度も叩きつけ、祭壇前でお経をあげる一人に鋭い眼光を向ける。

今でもはっきり覚えている
「アイツさえ居なければ。」と内心から沸々と湧き上がって来る怒りを。

奇声を挙げながら飛び掛かろうとした所を、待機していた3名に取り押さえられる。

其処からは、罵詈雑言の嵐だ。

不思議な事に、自意識はハッキリしているのだ。
故に、自分の口から付いて出る悪態が酷く恐ろしかった。
意識だけは自分であっても、体自身は別の人物なのではないか?と錯覚するほどだ。

結論から言おう。
このお祓いにかかった時間は、凡そ7時間だったそうだ。

お祓いが終わった後は「スッキリする」と良く言われるが・・・
私の場合、ソレを実感するのはもっと後だった。

お祓い終了直後、私に残っていたのは
無力感・自責の念そして希死念慮だった。

一晩泣きはらし、翌朝を迎えた時
・・・私は初めて「憑き物が落ちた感覚」を知る。

この一連の事件をきっかけに
私は、「聴く」という事を「コントロール」出来る様になっている事を知った。
「聴かない」ではなく「聴き分ける」という力だ。

恐らく、どれだけ修行を積んだとしても
そもそも「聴かない」様になるのは不可能なのだ。

・・・自分の鼓膜でも壊さない限りは・・・。
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