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視える友人「絢女」の話
行きずりの親子 終
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それは、件の駐車場がまだ果樹園だった時の事。
道を挟んで向かいに建つ家の農夫が、果樹園の所有者だったそうだ。
その農夫は近所では変わり者として有名だった。
そんなある日の事だ。
その農夫の隣の家に、若い夫婦が越してきたそうだ。
その夫婦は、農夫を「父親」の様に慕って
産まれたばかりの幼い子供を預けたりもしていたそうだ。
夫婦は、その農夫が近所でも有名な変人だと知っても態度一つ変えずに接していた。
農夫も、息や娘・孫が出来たと喜んでいた。
・・・だが、そんな幸せは長く続かなかった。
3年の月日が流れた頃、農夫の奇行が目立ち始めた。
最初は、町内会への苦情から始まったそうだ。
「果樹園にゴミをポイ捨てする者がいる、何とかしてくれ。」
事実、果樹園にはペットボトルや空き缶などのゴミが投げ捨てられていたそうだ。
しかし、駅の近くに存在している故に、犯人の特定は難しい。
町内会でも都度、ポイ捨て禁止の手紙を回覧板として回していたそうだが
そんなものでは収まる訳もなく・・・。
農夫は近隣住民の仕業に違いない。と疑い出した。
そして、暇があれば自宅から常に果樹園を監視するようになり
近付こうものなら、怒鳴り散らすという行為に及ぶようになった。
・・・それでも、若い夫婦の往来は生活の都合上
致し方ない。と目を瞑っていたそうだ。
それから更に数ヶ月・・・。
とうとう、最悪な出来事が起きた。
若い夫婦の妻は、歩くようになった我が子と「お散歩」をするようになっていた。
当然、果樹園の道を通る。
そして、暫く進んだ場所に小さな公園があった。
その公園で、我が子と遊び散歩を楽しんでいた。
そんなある日の事だ。
公演から帰って来た親子に対して、農夫は家の窓から大声で怒鳴り散らしたのだ。
「犯人はやっぱり貴様らか!今そっちに行く!覚悟して置けぇ!」
離れていても分かる。
農夫の顔は、鬼の形相だった。
恐ろしくなった母親は、我が子を抱きかかえ
逃げる様に自宅へと入った。
その日から、農夫の連日連夜時間を問わない罵詈雑言に耐える日々が始まったそうだ。
その後、とうとう母親はノイローゼになり
日中に外を出歩く事が出来なくなったそうだ。
出歩くのは、決まって農夫が寝静まった夜中。
日中遊んでやれなかった我が子と共に、公園へ・・・。
・・・そんな日が続く中
母親は帰らぬ人となった。
愛する我が子を抱きしめて・・・公園の裏側に位置していた線路に身を投じたのだ。
農夫が親子に客上した理由。
それは、親子が帰りがけに「持っていたモノ」が原因だったそうだ。
息子が公園で飲んだ「オレンジジュースの缶」
嫌子がそれを自宅に持ち帰り、ゴミとして処理するはずだった・・・。
奇しくもソレは
私か使った自動販売機にも売っていた代物であり
当時、果樹園に尤も多く捨てられていたゴミが、その空き缶だったそうだ。
それからというもの、その線路は
決まって何かに追いつめられた者が毎年の様に身を投じるのだという。
そして、老人はこう締め括った。
「・・・もうそっとしておいてやってくれよ。俺達(近所の人間)が
何もしてやれなかったんだ・・・せめて、静かに遊ばせてやってくれ・・・。」
道を挟んで向かいに建つ家の農夫が、果樹園の所有者だったそうだ。
その農夫は近所では変わり者として有名だった。
そんなある日の事だ。
その農夫の隣の家に、若い夫婦が越してきたそうだ。
その夫婦は、農夫を「父親」の様に慕って
産まれたばかりの幼い子供を預けたりもしていたそうだ。
夫婦は、その農夫が近所でも有名な変人だと知っても態度一つ変えずに接していた。
農夫も、息や娘・孫が出来たと喜んでいた。
・・・だが、そんな幸せは長く続かなかった。
3年の月日が流れた頃、農夫の奇行が目立ち始めた。
最初は、町内会への苦情から始まったそうだ。
「果樹園にゴミをポイ捨てする者がいる、何とかしてくれ。」
事実、果樹園にはペットボトルや空き缶などのゴミが投げ捨てられていたそうだ。
しかし、駅の近くに存在している故に、犯人の特定は難しい。
町内会でも都度、ポイ捨て禁止の手紙を回覧板として回していたそうだが
そんなものでは収まる訳もなく・・・。
農夫は近隣住民の仕業に違いない。と疑い出した。
そして、暇があれば自宅から常に果樹園を監視するようになり
近付こうものなら、怒鳴り散らすという行為に及ぶようになった。
・・・それでも、若い夫婦の往来は生活の都合上
致し方ない。と目を瞑っていたそうだ。
それから更に数ヶ月・・・。
とうとう、最悪な出来事が起きた。
若い夫婦の妻は、歩くようになった我が子と「お散歩」をするようになっていた。
当然、果樹園の道を通る。
そして、暫く進んだ場所に小さな公園があった。
その公園で、我が子と遊び散歩を楽しんでいた。
そんなある日の事だ。
公演から帰って来た親子に対して、農夫は家の窓から大声で怒鳴り散らしたのだ。
「犯人はやっぱり貴様らか!今そっちに行く!覚悟して置けぇ!」
離れていても分かる。
農夫の顔は、鬼の形相だった。
恐ろしくなった母親は、我が子を抱きかかえ
逃げる様に自宅へと入った。
その日から、農夫の連日連夜時間を問わない罵詈雑言に耐える日々が始まったそうだ。
その後、とうとう母親はノイローゼになり
日中に外を出歩く事が出来なくなったそうだ。
出歩くのは、決まって農夫が寝静まった夜中。
日中遊んでやれなかった我が子と共に、公園へ・・・。
・・・そんな日が続く中
母親は帰らぬ人となった。
愛する我が子を抱きしめて・・・公園の裏側に位置していた線路に身を投じたのだ。
農夫が親子に客上した理由。
それは、親子が帰りがけに「持っていたモノ」が原因だったそうだ。
息子が公園で飲んだ「オレンジジュースの缶」
嫌子がそれを自宅に持ち帰り、ゴミとして処理するはずだった・・・。
奇しくもソレは
私か使った自動販売機にも売っていた代物であり
当時、果樹園に尤も多く捨てられていたゴミが、その空き缶だったそうだ。
それからというもの、その線路は
決まって何かに追いつめられた者が毎年の様に身を投じるのだという。
そして、老人はこう締め括った。
「・・・もうそっとしておいてやってくれよ。俺達(近所の人間)が
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