骸行進

メカ

文字の大きさ
上 下
298 / 336
長編特集

ツキマトウ 2 「不運」

しおりを挟む
私が「菊池」から聴き及んだ彼の「更なる不運」は

彼がその後、交通事故で骨折した事。
その中で、甲状腺系の病気が見つかった事。
そして、その病気が元で「拒食状態」に陥った事。
凡そ一ヶ月で20㎏も体重が落ちてしまった事。
立て続けに起きたトラブルによって、長期的に休んでいた仕事場からクビを言い渡された事。

など、さまざまだった。

そして・・・その話を聞いている最中
私は
「あぁ・・・そうだろうなぁ・・・。」と一人納得をしていた。

と、いうのも・・・。
彼の傍で「男が2人」会話をしているのだ。

『どこで拾って来たんだ、こいつ・・・。』
そう思い、彼に直接問い質したのだ。

「お前、変な所行った?」

「何だよ・・・俺が、そんな変な所行くわけねぇだろ。」

彼は学生時代、マジメな男だった。
ただ、心霊については関心が無かった様で
周囲が「私の体質」について騒ぐ中で唯一、彼だけはその蚊帳の外側にいる
数少ないクラスメートだった。

ここで、私は彼に憑く二人の男の会話の中で
ある単語を耳にした。

「ホイールが・・・。」

実際にはもっと長い事会話をしているのだが
私に聞き取れた単語はそれだけだった。

「なぁ菊池。お前ってさ、仕事何してたんだっけ?」

「俺?工場だけど?」

「・・・何の?・・・まさか車関係じゃないよな?」

「そう。自動車整備の工場。」

『やっぱりか・・・。』的中して欲しくなかった心の呟きが漏れた瞬間だ。

恐らく、菊池は職場で「男二人」を拾ってしまったのだろう。

実はこの自動車整備工場は、後の調べで分かった事がある。
それが、男性職員二人が不慮の事故で亡くなっていた事。
一度に二人ではなく、亡くなった時期、タイミングは別々だったそうだ。

「お前の体調が良い日にさ、その職場に連れて行ってくれよ。」

「はぁ?俺、もうクビになってるんだぞ?今更行っても迷惑だろう。」

「なぁ・・・頼むよ!」

「・・・分かった。けど、前を通りかかる程度だぞ。」

公園での話し合いから三日後、我々は件の工場の前に来ていた。

だが、その工場は私の想像の斜め上を行っていた。
・・・一人、二人なんてもんじゃない・・・。
何十人も、工場の中に居るのが分かる。
・・・まるで、鮨詰め状態の電車だ。

正直な所、耳栓が欲しかった位である。

これは完全な私見なのだが、その工場の立地条件に問題があったのだろうと
私は考えている。

平屋建ての建物、その横には作業用スペースであるガレージ。
そして、その周囲を囲む様に建てられたマンションや雑木林。

吹いた風すら吹き溜まりそうな建物・・・。

間違いなく、ここだ。
菊池は此処で「彼等」を「拾って」しまい、「不運」に見舞われ続けたのであろう。

事故死してしまった「彼等」の無念は推し量っても余りあるものだろう。

私は、本腰を入れて調べるべく
お世話になっているX氏へ連絡を取る事にしたのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

あなたのサイコパス度が分かる話(短編まとめ)

ミィタソ
ホラー
簡単にサイコパス診断をしてみましょう

処理中です...