骸行進

メカ

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筆者(メカ)の経験談。

歪んだ家 その3

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広樹が仕事で3か月ほど家を空けている間
私は、彼に頼まれ「三階の扉の鍵」を探していた。

その扉を開かねば、三階へは登れない。
しかし、その思いとは裏腹に鍵が見つかる事は無かった。
広樹が帰って来るタイミングに合わせ、鍵師を家に招き
三階を解錠する事を決定した。

そして・・・
その階段を登った先は
細い廊下が一本伸びていただけだ。
向かって右側には部屋が二つ並び、奥の行き止まりにはトイレがあった。

右側手前の部屋は完全な物置になっていた。
だが・・・
右奥の部屋だけは異常ともいえる有り様であった。

その部屋は位置的に北側になり、窓は一切なかった。
それ処か、扉を開けた瞬間
吐きそうになるほどの異臭。
その異臭の正体は「カビ」だった。

しかも、良く聞くような「部屋の一部が~」などではなく
天井一面に「カビ」が生えていた。

あまりの異臭に、一度は扉を閉めた我々だが
その部屋も掃除をしよう。と話になり意を決して作業に取り掛かった。

カビの生えた部屋には、これと言った物は置かれていなかったのだが
使い古されたカーペットや布団など
およそゴミであろうものが遺されているだけだった。

暫く作業を続けていた我々だが、広樹がトイレに立った。
数十秒もしない内に、水の流れる音が聞こえる。

・・・だが・・・
数十秒しても、広樹は帰って来なかった。
不思議に思った私は扉から広樹に声を掛ける。
帰って来た返答は「おう、直ぐ行くから。」との事。

それから、3分以上経っても彼は喉って来なかった。
痺れを切らした私は、トイレの戸を開けたがそこに広樹の姿は無かった。

掃除は部屋の扉を開け放って行っていた為
彼が通れば直ぐに分かる。
だが、彼が通った感覚は無かった。
私は、1階から2階と探し回ったが、彼は居なかったのだ。
探索を終え、カビの部屋に戻ると、そこには胡坐をかいて座る彼の姿があった。

「・・・広樹・・・?」

「・・・ん?あぁ、何処行ってたんだよ。さっさと掃除しちまおう。」

「・・・お前、何してたんだよ。」

「何って・・・トイレ行った後すぐ掃除に戻って来たじゃないか。
お前こそ、急にふらふらと部屋出て行ったんじゃないか。」

おかしい・・・。
既に会話が噛み合っていないのだ。
この状況に焦燥感を感じた私は、直ぐに広樹の腕を掴み部屋から引きずり出した。
多少の抵抗を見せたものの、怯える私の顔を見てか
彼は直ぐに従ってくれた。

「やっぱり何か変だ。もう辞めよう。すぐ降りよう。」

そういって私は階段を下った。
・・・が、階段の先にある扉が開かないのだ・・・。

「・・・何で・・・開かないぞ!」

「退け、俺がやる。」

私よりも、遥かに体格の優れた彼の手にかかっても
その扉は開かなかった。

「どうなってんだよ・・・。」

「まて、広樹。冷静に行こう。」

パニックを起こしかけた彼を落ち着かせようと声を掛けたが
実の所、私もパニック寸前であった事は
この時の彼には告げられない真実であった・・・。
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