骸行進

メカ

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視える友人「絢女」の話

雨のジェントルメン

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これは、数年前にあった事だ。
暑い夏の日、時期は今と同じ「梅雨」。

絢女は仕事帰りの道を傘を差して急いでいたという。
理由は唯一つ・・・。

「あの男」に会うからだ。

雨の日に必ず会う「男」
それもロケーションは最悪で、決まって近くに霊園がある通りだったそうだ。

「今日も居た・・・。」

その通りに差し掛かった時、対岸に見えるスーツ姿と傘で分かった。

雨脚は強く、少し先の地面は雨の飛沫で白んでいる。
その光景は、まるで雲の上に男が立っている様な物であったという。

最初にその「男」に気が付いたのは(当時から数えて)去年だったそうだ。
激しく雨の降る中、男はスーツ姿で深緑色の傘を差し
霊園の前で門にしがみ付く様に立っていたのだという。
一歩一歩と近付くに連れ、その男が異常だという事に気が付く。

足元は雨の水撥ねでびしょ濡れ。
霊園の方を向き、微動だにしない姿勢。
何より、項垂れる様に掛かる傘のせいで顔は見えず
その道を通り過ぎた後、振り返ってもずっとそのままだったそうだ。

初めて見たその時から「気味が悪い」そう感じたそうだ。

だが、その日を境に「雨」が降ると必ず「居る」らしい。

「この人は生きていない。」そう気付いたのは、すでに数回目撃した後だった。

梅雨も明け次第に晴れた日が続くようになると「男は居なくなった」。

そうして一年が過ぎ、再び「梅雨」が巡る。

その日、絢女は忘れていた光景を目の前に思った。
「今日も居た・・・。」

だが、去年と違う事が一つ。

「男」の横に、新たに女性が増えていたそうだ。

その「女性」を見た時、思わず叫ばずには居られなかった。

「美也子!?」

其処に居たのは、大学時代の友人だった。
だが、いくら呼び掛けても「女性」は見向きもしなかった。
少々強引ではあるが、彼女は友人の腕を引き、顔を突き合わせた。

「・・・え・・・。」

友人「美也子」はまるで、何かに憑かれている様に
ニタァ~っと口角を挙げたまま、白目を向いていたそうだ。
そして・・・その場に倒れ込む「美也子」。

入院先の病院で、絢女は事情を本人から聞いたそうだ。

「あの日は偶然、霊園の前を通って、霊園の門に傘が引っかかってたのを見つけたの。
でね、たまたま、反対側からびしょ濡れの男の人が来て
僕の忘れ物なんです。って言うから、返したのよ。でも、それ以降の事は覚えてないの。」

後日、調べた結果
その霊園の前の道路で、雨の降る梅雨の時期に
男が一人、車のスリップ事故に巻き込まれ、亡くなっていたそうだ。

目撃者の話によると、男は
そのスリップした車と霊園の門に挟まれる形で亡くなっていたそうだ。
そして、その後しばらくの間
男の所有物であったであろう傘だけが、門に取り残され
何時しか、その傘も撤去されたという。
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