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長編特集
廃寺の住人 ~終~ 「歪む」
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その日、彼らはある事実を警察署にて突き付けられた。
「ご足労頂いて申し訳ないですね。それでね、調書とね。我々の調べた結果とで
少々食い違いが見つかりまして。改めてお話をお聞かせ願えればと・・・。」
恰幅の良いスーツ姿の男。
恐らくは警察内部でも上の位置に属する人種だろう。
一通りの事実確認を終えた後、押し黙っていた警官の男が口を開いた。
「いや・・・まぁね。調書にも3人の青年から通報あり。ってことで記載されてるんで
事実何だと思うのですが・・・。その時、ご一緒だったお友達は本当に『河野さん』で
宜しいんですよね?」
「言っている意味が分からないのですが?俺達はちゃんと3人で居ました。河野もその時一緒に!」
度重なる警官の追及に苛立ちを覚えた山内さんが食い気味に答えたそうだ。
「・・・おかしいな・・・。」
「何が可笑しいって言うんですか!そもそも最初に来た警官も俺達の事、嫌そうな顔して!」
「・・・とっくに亡くなってるんですよ。」
「・・・は?」
「だからね、河野さんとっくに亡くなってる事が分かったんですよ。2年も前に。」
「・・・バカな・・・。」
「おかしいですよねぇ?貴方がたは亡くなったはずの人物と一緒に居たという。
しかも、通報時に駆けつけた警官も3人居た事を覚えていて調書にも記されてる。
・・・ひょっとして、彼に成りすました誰かと一緒に居たんでしょうかねぇ・・・。」
この時、石本さんは心臓をえぐられるような恐怖心を覚えたそうだ。
この警官が言うように、友人に成りすました誰かであれ、幽霊であれ
自分たちは愚か、第三者ですら3人居たという事実を認識していたからだ。
「それで・・・河野は・・・?」
「驚かず、聞いてくださいね?・・・通報後、発見されたご遺体が『河野さん』でした。」
『あり得ない』
脳内にはその一文字が堂々巡りだ。
「それとね・・・。」
警官は、まだ終わりではないと言わんばかりに語り始めた。
「あのお寺さんね、確かに自治体とかが管理している事は事実の様ですが・・・。
長年、ホームレスが住み着いた上に、数が増えて
いまじゃ、見る影もないゴミ溜めみたいな場所に変わってるんですよ。
挙句、敷地内に入ろうものなら、ホームレスに嫌がらせされるってんで
誰も近寄らなくなってるんですよね。」
「・・・そんな・・・嘘だ。」
石本さんは、この警官が何を言いたいのか直ぐに分かったそうだ。
だからこそ口から出たその一言は『二つの意味』が込められていた。
「でもね、調書にはそれらしい事は一切書かれてないんですよ。
この意味、分かりますよね?」
その後、これ以降の事には関わらないと警察と取り決めを交わし
2人は家へと帰った。
後日、二人が改めて訪れた廃寺は
段ボールやブルーシート、そして新聞などで強固に作られている簡素な住処と
放置されたゴミから発せられる異臭。
極めつけは、数人がかりでこちらを睨む浮浪者たちのたまり場だった。
「ご足労頂いて申し訳ないですね。それでね、調書とね。我々の調べた結果とで
少々食い違いが見つかりまして。改めてお話をお聞かせ願えればと・・・。」
恰幅の良いスーツ姿の男。
恐らくは警察内部でも上の位置に属する人種だろう。
一通りの事実確認を終えた後、押し黙っていた警官の男が口を開いた。
「いや・・・まぁね。調書にも3人の青年から通報あり。ってことで記載されてるんで
事実何だと思うのですが・・・。その時、ご一緒だったお友達は本当に『河野さん』で
宜しいんですよね?」
「言っている意味が分からないのですが?俺達はちゃんと3人で居ました。河野もその時一緒に!」
度重なる警官の追及に苛立ちを覚えた山内さんが食い気味に答えたそうだ。
「・・・おかしいな・・・。」
「何が可笑しいって言うんですか!そもそも最初に来た警官も俺達の事、嫌そうな顔して!」
「・・・とっくに亡くなってるんですよ。」
「・・・は?」
「だからね、河野さんとっくに亡くなってる事が分かったんですよ。2年も前に。」
「・・・バカな・・・。」
「おかしいですよねぇ?貴方がたは亡くなったはずの人物と一緒に居たという。
しかも、通報時に駆けつけた警官も3人居た事を覚えていて調書にも記されてる。
・・・ひょっとして、彼に成りすました誰かと一緒に居たんでしょうかねぇ・・・。」
この時、石本さんは心臓をえぐられるような恐怖心を覚えたそうだ。
この警官が言うように、友人に成りすました誰かであれ、幽霊であれ
自分たちは愚か、第三者ですら3人居たという事実を認識していたからだ。
「それで・・・河野は・・・?」
「驚かず、聞いてくださいね?・・・通報後、発見されたご遺体が『河野さん』でした。」
『あり得ない』
脳内にはその一文字が堂々巡りだ。
「それとね・・・。」
警官は、まだ終わりではないと言わんばかりに語り始めた。
「あのお寺さんね、確かに自治体とかが管理している事は事実の様ですが・・・。
長年、ホームレスが住み着いた上に、数が増えて
いまじゃ、見る影もないゴミ溜めみたいな場所に変わってるんですよ。
挙句、敷地内に入ろうものなら、ホームレスに嫌がらせされるってんで
誰も近寄らなくなってるんですよね。」
「・・・そんな・・・嘘だ。」
石本さんは、この警官が何を言いたいのか直ぐに分かったそうだ。
だからこそ口から出たその一言は『二つの意味』が込められていた。
「でもね、調書にはそれらしい事は一切書かれてないんですよ。
この意味、分かりますよね?」
その後、これ以降の事には関わらないと警察と取り決めを交わし
2人は家へと帰った。
後日、二人が改めて訪れた廃寺は
段ボールやブルーシート、そして新聞などで強固に作られている簡素な住処と
放置されたゴミから発せられる異臭。
極めつけは、数人がかりでこちらを睨む浮浪者たちのたまり場だった。
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