骸行進

長編特集

廃寺の住人 ～その４～ 「噂」

河野さんが失踪して半年。
石本さんらは、ある噂を耳にしたという。
それは
彼等が行った廃寺は、近年ホームレスが住み着くようになり
自治会なども対応に困っていた。という事だ。

なんでも、境内に踏み入った近隣住民を「俺の居場所だ！」と追い返していたそうだ。
自治会や警官などが幾度も話し合いで解決を模索していた様だが
そのホームレスは、一人では分が悪いと踏み、複数の仲間を集め、境内を陣取っていたそうだ。

そして、石本さんらは、この噂話の中で
自分たちの経験とは違った事を耳にする事となった。

「今となっちゃ、あの廃寺も相当なゴミ屋敷みたいになっちゃってるよ。」

複数のホームレスが住み込み、段ボールなどで簡易的な住処を作ったり
ゴミを集めてきたりとやりたい放題行った結果
手が付けられない状態になってしまったそうだ。

だが、これらの噂について彼らが知る事となるのは
まだ、先である。

「なぁ、山内。」

「ん？」

「河野が失踪した話、聞いたか？」

「あぁ、親御さんから俺んとこに直接連絡来たぞ・・・心当たりないか？って」

山内さんと河野さんは中学からの同期であったそうだ。
その後、高校に進学し二人に石本さんが合流する形で親しくなったのだという。

「それで・・・なんて？」

「いや、何って・・・俺が知る訳ないだろ？」

「・・・まぁ、そうだわな。」

「仕事とかで悩んでたのかもなぁ。」

「・・・かねぇ。」

「でもさ、初詣の時もそんな感じ、一切なかったよな？」

「友人に会えてテンション上がってたんだろうさ。実際、俺達もそうじゃん。」

「確かにな。」

「それにさ、夜の初詣ってだけでアレだけはしゃげる様な奴だぜ？失踪なんて想像もつかんよ。」

「それは俺も思うけど・・・。」

石本さんには、この時河野さんの事以外にも
腑に落ちない点があったそうだ。

それが「革靴」だ。

覚えているだろうか？
彼等は、廃寺参拝後に清掃活動を行い「革靴」を見つけている。
・・・その後、革靴はどうした？

「廃棄」したはずである。

警察同行の元、現地に赴き説明を行い・・・そして「革靴」が発見されている。

そして、帰り際に河野が見せた浮かない表情。

石本さんは、これらが全て何かに紐付いているのではないか？と
疑っていたそうだ。

しかし、現状
その真実を知るであろう河野は失踪してしまい
あの日、あの場所で何を感じたのか。何をしたのか。など
一切聞く事ができなかった。

そして、それから数日後
彼等は、警察署へと呼ばれる事となったそうだ。