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長編特集
廃寺の住人 ~その3~ 「チラつく」
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彼等が初詣を終えて数日後。
その廃寺にて、一人の首吊り遺体が見つかった。
奇しくも、その遺体はスーツ姿の中年男性であり、靴を履いていなかったそうだ。
このニュースをきっかけに、3人は河野さんの強い要望で警察へと情報提供を試みたそうだ。
そして、警官立ち合いの元、彼らは革靴のあった場へと赴き
事情を説明し、革靴が発見された。
しかし、警官の顔はどこか浮かないものであったそうだ。
まるで疑っているかのような、見下しているかのような・・・。
3人は、苦い空気を感じ取った。
「では、またお話を伺う事も有るかと思いますので、その時にはご協力を。」
一通りの検証を終えた警官たちはそう言い残し去っていったそうだ。
・・・その日以降から、徐々に異変が起き始める。
最初に訪れた異変。
それは、河野さんに降りかかった。
3人が集まった飲みの席・・・。
「最近さ、変な人影が視界の隅でチラつくんだよなぁ・・・。」
「どんな?」
「それがさ、良く分かんねぇのよ。物陰からチラついたり黒い影みたいだったりでさ。」
「眼精疲労とかじゃね?医者に診て貰えよ。なんかの病気だったら大変だぜ?」
「・・・おう。」
彼はしばらくの間を置いて眼科を受診した。
だが、結論は出なかった。と言うよりも異常そのものが見られなかったという。
大抵の医者は、原因が分からなければ直ぐに
「ストレスが関わっているのでしょう・・・。」などという。
彼も例に漏れず、ストレスが原因だろうとあしらわれた。
それから2ヶ月。
石本さんと彼は、コンビニで偶然一緒になったそうだ。
その時、彼に声を掛けたそうだが彼は何事もなかったようにすれ違う。
ここで重要なのは、彼が放心したまま歩いている様な状態だった事だ。
異変を感じた石本さんは、急ぎ彼を追い肩を掴み呼び止めた。
「おい、河野?」
そこで新たな異常に気付く。
河野さんは、消え入るような小さな声でぶつぶつと何かを呟いていた。
そこで彼の声をよくよく聞くと・・・。
「リストラだよ、リストラ。アレだけ散々部長にも頭下げて必死に許してもらおうとしたのにさ。
これで明日から家計は火の車だよ。取引先であんな失敗さえしなけりゃこうはならなかったのによ。
もういっそ死ぬか。死んで保険金でも家族に残すか。今死んだら確実に部長が悪者だよな。ははは。
ざまぁみろってんだ。何時か俺と同じ目に合えばいいんだ。」
「河野ってば!」
無感情で抑揚もなくぶつぶつと言い続ける彼の肩を強めに揺すり状況を確認しようとした。
だが、暫くの沈黙の後、彼はくるりと踵を返しそのまま歩き去っていった。
そして、その数日後
彼の家族によって、彼の失踪届が出されていた事を石本さんは知る事となった。
その廃寺にて、一人の首吊り遺体が見つかった。
奇しくも、その遺体はスーツ姿の中年男性であり、靴を履いていなかったそうだ。
このニュースをきっかけに、3人は河野さんの強い要望で警察へと情報提供を試みたそうだ。
そして、警官立ち合いの元、彼らは革靴のあった場へと赴き
事情を説明し、革靴が発見された。
しかし、警官の顔はどこか浮かないものであったそうだ。
まるで疑っているかのような、見下しているかのような・・・。
3人は、苦い空気を感じ取った。
「では、またお話を伺う事も有るかと思いますので、その時にはご協力を。」
一通りの検証を終えた警官たちはそう言い残し去っていったそうだ。
・・・その日以降から、徐々に異変が起き始める。
最初に訪れた異変。
それは、河野さんに降りかかった。
3人が集まった飲みの席・・・。
「最近さ、変な人影が視界の隅でチラつくんだよなぁ・・・。」
「どんな?」
「それがさ、良く分かんねぇのよ。物陰からチラついたり黒い影みたいだったりでさ。」
「眼精疲労とかじゃね?医者に診て貰えよ。なんかの病気だったら大変だぜ?」
「・・・おう。」
彼はしばらくの間を置いて眼科を受診した。
だが、結論は出なかった。と言うよりも異常そのものが見られなかったという。
大抵の医者は、原因が分からなければ直ぐに
「ストレスが関わっているのでしょう・・・。」などという。
彼も例に漏れず、ストレスが原因だろうとあしらわれた。
それから2ヶ月。
石本さんと彼は、コンビニで偶然一緒になったそうだ。
その時、彼に声を掛けたそうだが彼は何事もなかったようにすれ違う。
ここで重要なのは、彼が放心したまま歩いている様な状態だった事だ。
異変を感じた石本さんは、急ぎ彼を追い肩を掴み呼び止めた。
「おい、河野?」
そこで新たな異常に気付く。
河野さんは、消え入るような小さな声でぶつぶつと何かを呟いていた。
そこで彼の声をよくよく聞くと・・・。
「リストラだよ、リストラ。アレだけ散々部長にも頭下げて必死に許してもらおうとしたのにさ。
これで明日から家計は火の車だよ。取引先であんな失敗さえしなけりゃこうはならなかったのによ。
もういっそ死ぬか。死んで保険金でも家族に残すか。今死んだら確実に部長が悪者だよな。ははは。
ざまぁみろってんだ。何時か俺と同じ目に合えばいいんだ。」
「河野ってば!」
無感情で抑揚もなくぶつぶつと言い続ける彼の肩を強めに揺すり状況を確認しようとした。
だが、暫くの沈黙の後、彼はくるりと踵を返しそのまま歩き去っていった。
そして、その数日後
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