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長編特集

廃寺の住人 ~その2~ 「見つけた物」

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廃寺周辺は、深夜という事も有り
ゴミ拾いには時間が掛かった。
無理もない、懐中電灯を片手に照らしながら各々バラバラに行っていたそうだ。

しかし、そんな中
廃寺に隣接する雑木林周辺から、河野さんの声がしたそうだ。

「二人とも!こっちに来てくれよ!」

声に導かれ、集まった3人の眼前には
河野さんの懐中電灯によって照らされた一対の革靴だ。

その革靴は、雑木林の草むらに「隠される様に」置き捨てられていたという。
だが、妙な点が一つ。
その革靴は、雑木林の方に向け、揃えられた状態で放置されていたそうだ。

「革靴かよ・・・困ったな。燃えるゴミとして処理するのも忍びないしなぁ。」
「いやぁ、でも見つけたからには放っておけないだろ?」
「なら、誰か一人の袋を燃やせないゴミとして扱うか?」

3人の総意によって、「燃やせないゴミ」の担当として
革靴を見つけた河野さんが一時預かる事になったそうだ。

そして・・・。

「よし、俺が持っていればいいんだな?・・・え、うわっ!」

彼はそう言うと革靴に手を伸ばしたそうだ。
そして、その直後
彼は手にした革靴を投げ捨てたのだ。

「どうした!?」

即座に山内さんが、彼の肩を支え状況を聞いた。

「・・・む、ムカデが中におった!」

「何だよ、ムカデかよ・・・。」

山内さんが、投げ捨てられた革靴を袋に仕舞い、河野さんの袋と交換する形で
彼へと引き渡したそうだ。

それ以降も10分ほど作業を続け、一通り見終わった事を確認し彼らは帰路へ着く。

だが、その帰路の途中
河野さんはずっと冴えない顔をしていたのだという。

近場のゴミ捨て場へと向かった彼らは、拾ったゴミの分別・廃棄を終える。

それからしばらくすると、交差点へ差し掛かり
山内さんと彼らは別れを告げた。

暫くの沈黙・・・。
耐え兼ねた石本さんが切り出したそうだ。

「なぁ、さっきのアレ。なんだったんだ?」

「・・・え?」

「ほら、革靴の。」

「あ・・・あぁ・・・。」

再び黙る河野さんを、問い詰める事無く歩く。
そして、彼の口から真相が語られた。

「・・・革靴、持った時にさ・・・まだ、温かかったんだよ。」

「は?」

「靴がさ・・・。」

「つまり・・・俺達が見つける直前まで誰かが履いてたって事か?」

「うん、そうだと思う。」

「なんで、ムカデとか言ったんだよ。」

「ほら、山内ってそういうの苦手じゃん・・・。」

「あぁ・・・。」

真冬の深夜、使われなくなった寺に
若い男3人が清掃活動をする中
誰一人にも見つからぬように、雑木林から消える事など出来るだろうか?

ましてや、履いていたのは革靴だ。
境内にある石畳や階段を、音もなく歩く事ができるだろうか?

参拝をしている青年たちの後ろで
革靴を履いた何者かが、音もなく雑木林に向かったのか?

真相は謎のままであるが
この革靴を見つけた事により、彼等3人に災いが降りかかったのだ・・・。
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