骸行進

メカ

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呪物

呪物 その4

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さて、呪物シリーズも4弾目になりました。
今回、登場するのは・・・この先、夏になれば見る機会も増えるでしょう。
「クロックス」です。

これは、凡そ6年前の事です。

当時、私が働いていたのは、ある介護施設。
その施設では、ある一人の高校生が「資格の勉強の為に」と
アルバイトで入っていました。

歳も近かった我々は、お互い励まし合いながらも、日々の仕事をこなし
邁進していました。

そんなある日・・・。
我々は、入浴介助の担当になった。
・・・着替えを済ませ、脱衣所に向かうと

「あっ!」

彼が声を発した。

どうやら、サンダルを忘れたそうだ。
上司に相談の後、脱衣所に用意されていた「予備のクロックス」を履く事となった。

入浴が終わり、ロッカーへ引き上げる際
彼は

「このクロックス、持ち帰って洗います。」

そう、上司に告げた。
この時、私は不自然に思った。
ただ洗うだけならば、風呂場で洗う事は可能である。
わざわざ持ち帰ってまで洗う必要があるのか?

しかし、私はそんな彼を「礼儀正しい子」程度の認識に留め、仕事に戻った。

それから数日後の事だ。
彼は、右足を骨折する大怪我をした。

彼の話によると
出勤の際、使っている駅の階段で、何者かに押され
階段を転げ落ちたそうだ。
異変を聞きつけた駅員によって、防犯カメラなどの確認が行われたそうだが・・・。
その時、写っていたのは「彼一人」だったそうだ。

休職届を貰いにやって来た彼とすれ違った時、私は
彼の傍から「女の声」を聴いた。
しかし、極端に小声だった為に、何を言っていたかまでは聞き取れていない。

この時、私は疑問に思った。
「何時、彼に憑いたんだ、この女は・・・。もしやクロックス?」

そこでクロックスについて、話を探った所
「備品のクロックス」は以前、働いていた社員が置き忘れていったものだったそうだ。
暫く預かっていた様だが、その社員が取りに来ず
一年が過ぎ、「備品」という扱いになったそうだ。

残念ながら、持ち主の性別は不明であった。

それ以降、彼は立て続けに不幸に見舞われ
完全復帰まで何と2年かかったそうだ。

私自身、その施設とは縁がなく長居せず転職したのだが・・・。
彼とのやり取りは続き、大体の流れは聞いて居た。

何度か、直接顔を合わせる機会も有ったのだが・・・
相も変わらず、ぼそぼそと会話に紛れて煩わしい女の声がしていた事を覚えている。

私は、彼にクロックスを処分するよう勧めたのだが・・・。

なんと、そのクロックスは職場に戻して以降、見つかっていないのだという。

私は彼にお祓いに行くよう勧め、この話は此処で終わりを迎えた・・・。
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