108 / 336
警官の友人「荻野(仮名)」の話
消えた詐欺師
しおりを挟む
数年前の話だ。
警官である私の友人「荻野」が担当したとある事件。
その事件の犯人と目される詐欺師が消えた。・・・いや正確には・・・。
始まりは、1件の相談だった。
40代後半のスーツ姿の男が、窓口にやってきたという。
これが「被害者Aさん」だ。
彼の話によると
結婚相談所にて、婚活をしていたそうだ。
そこで、紹介された女性と話を進める事になったそうだ。
最初こそ、流れはいい方向へ向いていた。
しかし、結果からいえば彼は300万もの大金をだまし取られた。という。
ここで察しの良い方はお気付きだろう。
なぜ、あえて「被害者Aさん」と呼称したのか・・・。
そうです、被害者は他にも居たのです。
後日、「被害者Aさん」以外に、3名の男性が被害の名乗りを上げた。
被害者たちの証言により
同じ結婚相談所を使っていた事や犯人の人相が浮き彫りとなった。
だが・・・。
犯人は、4人の男性に合わせ、性格や外見・名前などを少しずつ変えていた様で
最初こそ、聞き取りには手間がかかったそうだ。
警官たちは、その犯人を
結婚相談所にて登録されていた「実里(みのり)」という名前で呼んでいたという。
地道な捜査を続け、漸く調べ上げた「実里」の住まい。
それを暴くだけでも、2ヶ月はかかったそうだ。
その後、警官たちは24時間体制での張り込みに移ったという。
当然、目に見える逃走経路などは警官の張り込みによって潰れている。
裏口や窓といった物は、封鎖されているも同然だ。
そして・・・
張り込みから4日目の事だ。
「実里」が自宅へ姿を見せたというのだ。
張り込んでいた荻野達警官一行は、姿を確認した時が一番緊張するそうだ。
張り込みがバレていないか?犯人の視線や挙動は不自然ではないか?
一挙手一投足、気が抜けない。
だが「実里」にはそんな素振りは見えなかった。
自宅へ入った姿を確認し、5分後
突入の号令が入る。
インターホンを鳴らすが「実里」は出てこない。
ドアノブに手を伸ばすが、鍵が掛かっている。
・・・ここに来て陳腐な抵抗など無意味ではある。
警官の一人が、大家を連れて戻って来た。
「な、何なんですか!?一体!」
「此処に住んでいる女性。彼女には詐欺の容疑が掛かっています。鍵を開けて貰ってもいいですか?」
「か、鍵を開けるのは構いませんけど・・・この部屋、誰も使ってませんよ?」
その一言に、警官たちは驚いた。
無理もないだろう、自分たちの目で人間が部屋に入っていくのを確認しているのだ。
それが「使っていない」の一言で済んでは溜まらない。
・・・だが
大家の言う通り
その部屋には、誰も居なかったという。
人は愚か、家具の一つも・・・。
後の調査で分かった事だが
その部屋は、当時から数えて3年前まで女性が住んでいたそうだ。
だが、闇金との金銭トラブルの末、自殺した。
その金銭トラブルの最中、借りた金額を返す為に
その女性が結婚詐欺まがいの手法で金銭を手に入れていた事が発覚したのだ。
結婚詐欺師は消えた・・・。
そう思い、被害にあった男性たちは泣き寝入りするしかなかったそうだ。
警官である私の友人「荻野」が担当したとある事件。
その事件の犯人と目される詐欺師が消えた。・・・いや正確には・・・。
始まりは、1件の相談だった。
40代後半のスーツ姿の男が、窓口にやってきたという。
これが「被害者Aさん」だ。
彼の話によると
結婚相談所にて、婚活をしていたそうだ。
そこで、紹介された女性と話を進める事になったそうだ。
最初こそ、流れはいい方向へ向いていた。
しかし、結果からいえば彼は300万もの大金をだまし取られた。という。
ここで察しの良い方はお気付きだろう。
なぜ、あえて「被害者Aさん」と呼称したのか・・・。
そうです、被害者は他にも居たのです。
後日、「被害者Aさん」以外に、3名の男性が被害の名乗りを上げた。
被害者たちの証言により
同じ結婚相談所を使っていた事や犯人の人相が浮き彫りとなった。
だが・・・。
犯人は、4人の男性に合わせ、性格や外見・名前などを少しずつ変えていた様で
最初こそ、聞き取りには手間がかかったそうだ。
警官たちは、その犯人を
結婚相談所にて登録されていた「実里(みのり)」という名前で呼んでいたという。
地道な捜査を続け、漸く調べ上げた「実里」の住まい。
それを暴くだけでも、2ヶ月はかかったそうだ。
その後、警官たちは24時間体制での張り込みに移ったという。
当然、目に見える逃走経路などは警官の張り込みによって潰れている。
裏口や窓といった物は、封鎖されているも同然だ。
そして・・・
張り込みから4日目の事だ。
「実里」が自宅へ姿を見せたというのだ。
張り込んでいた荻野達警官一行は、姿を確認した時が一番緊張するそうだ。
張り込みがバレていないか?犯人の視線や挙動は不自然ではないか?
一挙手一投足、気が抜けない。
だが「実里」にはそんな素振りは見えなかった。
自宅へ入った姿を確認し、5分後
突入の号令が入る。
インターホンを鳴らすが「実里」は出てこない。
ドアノブに手を伸ばすが、鍵が掛かっている。
・・・ここに来て陳腐な抵抗など無意味ではある。
警官の一人が、大家を連れて戻って来た。
「な、何なんですか!?一体!」
「此処に住んでいる女性。彼女には詐欺の容疑が掛かっています。鍵を開けて貰ってもいいですか?」
「か、鍵を開けるのは構いませんけど・・・この部屋、誰も使ってませんよ?」
その一言に、警官たちは驚いた。
無理もないだろう、自分たちの目で人間が部屋に入っていくのを確認しているのだ。
それが「使っていない」の一言で済んでは溜まらない。
・・・だが
大家の言う通り
その部屋には、誰も居なかったという。
人は愚か、家具の一つも・・・。
後の調査で分かった事だが
その部屋は、当時から数えて3年前まで女性が住んでいたそうだ。
だが、闇金との金銭トラブルの末、自殺した。
その金銭トラブルの最中、借りた金額を返す為に
その女性が結婚詐欺まがいの手法で金銭を手に入れていた事が発覚したのだ。
結婚詐欺師は消えた・・・。
そう思い、被害にあった男性たちは泣き寝入りするしかなかったそうだ。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

赤い部屋
山根利広
ホラー
YouTubeの動画広告の中に、「決してスキップしてはいけない」広告があるという。
真っ赤な背景に「あなたは好きですか?」と書かれたその広告をスキップすると、死ぬと言われている。
東京都内のある高校でも、「赤い部屋」の噂がひとり歩きしていた。
そんな中、2年生の天根凛花は「赤い部屋」の内容が自分のみた夢の内容そっくりであることに気づく。
が、クラスメイトの黒河内莉子は、噂話を一蹴し、誰かの作り話だと言う。
だが、「呪い」は実在した。
「赤い部屋」の手によって残酷な死に方をする犠牲者が、続々現れる。
凛花と莉子は、死の連鎖に歯止めをかけるため、「解決策」を見出そうとする。
そんな中、凛花のスマートフォンにも「あなたは好きですか?」という広告が表示されてしまう。
「赤い部屋」から逃れる方法はあるのか?
誰がこの「呪い」を生み出したのか?
そして彼らはなぜ、呪われたのか?
徐々に明かされる「赤い部屋」の真相。
その先にふたりが見たものは——。

B型の、B型による、B型に困っている人の為の説明書
メカ
エッセイ・ノンフィクション
「あいつB型っしょ、まじ分からん。」
「やっぱ!?B型でしょ?だと思った。」
「あぁ~、B型ね。」
いやいや、ちょっと待ってくださいよ。
何でもB型で片付けるなよ!?
だが、あえて言おう!B型であると!!
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
【完結済】ダークサイドストーリー〜4つの物語〜
野花マリオ
ホラー
この4つの物語は4つの連なる視点があるホラーストーリーです。
内容は不条理モノですがオムニバス形式でありどの物語から読んでも大丈夫です。この物語が読むと読者が取り憑かれて繰り返し読んでいる恐怖を導かれるように……


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる