骸行進

メカ

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筆者(メカ)の経験談。

見知った顔 終

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トンネル内部。予想以上に足音や声は反響していた。
だが、内部に入ってからは体調不良は無くなり、何とか歩く事が出来た。

暫く歩いていると、不可解な現象が起きた。

トンネルの対岸から、老婆が歩いてきたのだ。
しかも、灯りになる物一つも持たずにだ。
流石にこれは、我々8人共に「変だ」と思った事だろう。
その時だ・・・。
その老婆が、杉本に倒れ込む様にしがみ付いてきたのだ。

「うわ!・・・おばあちゃん。大丈夫か?こんな暗い中、灯りも持たないからだよぉ。」

杉本は、その老婆を心配するような言葉を掛けていたが
その実、彼の声は震えていた。

杉本が老婆を抱え起こすと、その途端に杉本は
大声を上げ、トンネルの奥へと走って逃げた。

我々が顔を見合わせ、我に返り彼を追うも
追いついた先のトンネルの出口で、杉本は地面に突っ伏していた。

彼は気を失っていたのだ。

彼を起こし、話を聞くと
抱き起した老婆には、眼球が無かったそうだ。
そして、それに気付いた彼は恐怖から走って逃げた。
だが、運悪く躓き転んでしまう。
痛みを堪え、仰向けになったその時・・・その視界に映ったのは
突き飛ばし、逃げた筈の老婆の顔だったという。

杉本を抱え起こした我々は、その話を聞いて直ぐに引き返す事に決めた。

そして、たどり着いた車で・・・。

「な、なぁ。俺達も乗せて行ってくれないか?」

見知った顔の男が言葉を発した。

だが、杉本は直ぐに断ったのだ。

「すまない。1人なら何とかなるだろうけど、流石に8人は多い。
それに、レッカーもまだ時間がかかる。」

「そ、そうだよな・・・。」

しかし、我々はレッカーが来るまでの間
固まって過ごす事にしたのだ。

この時、俺は自身の心の中で、点呼を取るつもりでメンバーを数えた。

・・・大丈夫だ。8人いる。

程なく、レッカー車が到着し、もう一組の3人は
自分たちの車に戻る。と言い雑木林の方へ進んで行った。

係員の指示に従い、車に乗り込み安堵する中・・・。

私は思い出したのだ。

「・・・谷口・・・?」

「ん?」

「思い出した、あいつ谷口だ!」

「・・・それが、どうしたんだよ?」

高校三年生の時にクラスメートとなった谷口。
彼は年上の彼女が居た。
高校を卒業したら仕事に付き、彼女と結婚するんだと
彼はいつも自慢していた。

が・・・。

彼は高校卒業後、直ぐに亡くなった。
理由は自殺だ。
年上の彼女に騙され、借金を抱えてしまったのだ。


そう・・・。
あの3人組に合った時に感じた違和感はコレだったのだ。
そもそも、谷口はもう亡くなっている。会えるわけがないのだ。

思えば、彼等も車が止まったと言っていたが
この心霊スポットはとある山道の一本道にある。

即ち、我々の前に「ソコ」に居たのであれば
・・・あるはずなのだ。
「止まったまま」のはずの車が・・・。

だが、我々はそれらしいものを一切見ていないのだ。

そして、最後に谷口が発した一言
「俺達も乗せて行ってくれないか?」

それは一体、何を意味するのだろうか・・・。
そしてもう一つ・・・。

私は点呼でメンバーの数を数えた・・・。
あの時は軽くパニックになっていたので気にもしなかったのだが・・・。
よくよく思い出してみると
私自身を除いた数が、8人であったのだ・・・。

・・・一人多かったのだ。

うっすらと覚えている・・・。
杉本の横で、腰の曲がった人間を数えた事を。

我々は、後日お祓いを受ける事となった・・・。
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