骸行進

メカ

文字の大きさ
上 下
256 / 336
長編特集

怪室 2 「出来事」

しおりを挟む
私が、不動産会社に通い、伊藤と話を進める中
彼の上司が割って入って来た。

「お客様、お話し中に大変申し訳ございません。
えー、実はですね。お客様が兼ねてからお話を進めていらっしゃるお部屋の件なのですが。」

この一瞬、私は件の一室に曰くでもあったのか?と思考したが
彼の上司から出た言葉は意外な物だった。

「先日、別のお客様からも、お部屋の内見をしたいと申し込みがありまして・・・。」

「そ、それで・・・?」

「えぇ、付きましてはご決断を急がれた方が宜しいかと思い、お声を掛けさせていただきました。」

「お気遣いありがとうございます。早急に結論を出させていただきますね。」

伊藤の仕事終わりを待って、私は彼を夕食へと誘った。
そこで伊藤はある事を語ったのだ。

「件の物件は、僕の管轄なんです。なので
他に内見などの予定があれば僕に一報来るはずなんですが・・・。」

彼の耳には他の客の存在など耳に入っていなかったそうだ。
それを不思議に思った彼は上司に話を聞いたそうだが
彼の見立てでは、ノルマを焦っている上司が勝手に動いている様に見て取れたそうだ。

程なくして、件の物件はその上司の客によって契約がなされ
その物件は、伊藤の手から離れたという。

が、しかし。
10日も経たない内に、その物件は伊藤の管轄に戻ったそうだ。
というのも、上司の客がその物件を契約した直後から連絡が取れなくなったそうだ。

本来であれば、ドタキャンなんてものは当たり前らしい。
が、その時は事前に「頭金」を即日入金させていた為に、音信不通になる方が変なのだ。

その日を境に、何件かの問い合わせがあった物の
結論から言うに、その物件に借り手が付く事は無かったそうだ。

私も、約一ヶ月もの間
仕事のスケジュールが合わず、彼と会う事が出来なかった。

だが、再び後輩の伊藤と会った時
彼は引きつった笑顔で私との再会を彩ったのだ。

「どうした?伊藤。」

「じ、実は・・・。」

彼が言うには、件の物件があまりにも気になった彼は
隣の部屋に住む老婆を訪ねたのだという。
そして、その老婆が言うには
確かに、約10日間。契約したはずの家族がその一室を使っていたそうだ。

しかし、ある日を境に、その家族を見なくなったそうだ。
部屋からは音がする為、生活はしているのだろうと老婆は思っていたそうだが
それにしては、出入りの為に扉を開け閉めするような音がしないのだとか・・・。

その話を聞いた伊藤は、マンションの大家と共に部屋に入ったそうだ。

しかし、彼が見つけたのは
見慣れないちゃぶ台一つと、置手紙だけだったというのだ。
その光景は、まるで夜逃げ同然だったというのだ。

「この手紙・・・怖くて、まだ内容を確認してないんです。どうしよう、先輩。」

「この手紙は俺が預かる。良く中身を見ずに耐えたね。」

「お、俺・・・どうしたら?」

「気にするなよ。何かあったらまた直ぐに連絡して来ればいい。良いね。」

「・・・はい。」

怯える後輩を宥めつつ、私はその手紙を
鑑定人X氏に託すことを決め、彼から手紙を受け取ったのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

あなたのサイコパス度が分かる話(短編まとめ)

ミィタソ
ホラー
簡単にサイコパス診断をしてみましょう

処理中です...